古代文学会:シンポジウム「固有名―コンテキストの結節点―」(2020年7月4日(土)13:00~18:00、Zoom)※非会員要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://kodaibungakukai.sakura.ne.jp/wp/kenkyuuhappyoukai/sympo-semi/

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※非会員の申し込みは、上記公式サイトをご確認ください。

日時:2020年7月4日(土) 13:00~18:00
場所:Zoomによる遠隔開催(参加リンクを30分前に送信)

パネリスト・題目:
津田博幸「固有名と物語」
金沢英之「『日本書紀』の引書注をめぐって──巻九神功皇后紀を中心に」
佐野宏「雄略天皇御製歌──文脈付帯語の形成について──」

 古代文学会では、現在の東京都内での新型コロナウィルス感染の状況に鑑み、シンポジウムをオンラインで開催いたします。
 メール会員の方にはメールにて前日までにPDF資料を、当日開始30分前にZoomのミーティングアドレス・ID・パスワードをお送いたします。アドレス・ID・パスワードは、悪意ある乱入者防止のため当日配布になることをご容赦ください。PC(Windows・Mac)でアクセスする場合は、インターネット環境のみで参加できます。
 非会員の参加希望者に対してはHPからゲスト参加用のwebフォームを用意しておりますので、非会員の方をお誘いする際にはこちらをご利用ください。


発表要旨

津田博幸「固有名と物語」 
 ソールA・クリプキ『名指しと必然性』は名前・固有名は「固定指示子」であって、「短縮されたまたは擬装された確定記述」や「記述の集団」に結びついたものではないと主張した。ここでクリプキの言う「確定記述」や「記述の集団」を「名前・固有名を説明するコンテキスト(または物語)」と読み替えると、本シンポジウムのテーマに適用できよう。クリプキは名前・固有名はそれを説明するコンテキストとは関係なく「固定指示」機能をもつとする。とすると、固有名はそれが記されたテキストとテキスト外のコンテキストを結びつける結節点であるという考えは固有名の本質的機能とは関係のない現象を扱うことになる。
 典拠論・引用論・間テキスト論その他、本シンポジウムの考え方は文学研究にとっては常識であり、全てが否定されるべきものではない。だが、クリプキの「固定指示子」という観点を導入することによって、テキスト上で起こっていることをより深く理解できるのではないか。神名の顕現、名告りの機能、意味や典拠のわからない名前・固有名、折口信夫の「生命指標」説などをめぐって考えたい。

金沢英之「『日本書紀』の引書注をめぐって──巻九神功皇后紀を中心に」
 『日本書紀』には、『百済記』『百済新撰』『百済本紀』のいわゆる百済三書をはじめ、『日本旧記』『帝王本紀』『伊吉連博徳書』『難波吉士男人書』『日本世紀』等、多数の書名が注にあらわれる。これらの書名もまた、『日本書紀』と〈外部〉とを結びつける固有名詞の一端をなしている。それらは概して、『日本書紀』本文の内容を補完するとともに、その歴史記事の事実性を、外側から保証し根拠づける機能を持つ。そのなかで、他とは異なる特異な位置にあるのが、巻九神功皇后紀に引かれる『魏志』『晋起居注』の例である。これらの引用箇所においては、『日本書紀』の本文そのものがほとんどなく、内容的にも、『日本書紀』に直接対応するものをもたない。従来この点は、『魏志』等に記された倭女王(卑弥呼)と神功皇后とを重ね、その時代を定位するためのものとして、『日本書紀』紀年論との関わりでとりあげられてきた。端的に言えば、『日本書紀』はこれらの引用を通じて、『日本書紀』の歴史的時間を世界史の時間に結びつけるのである。では、なぜそれは神功皇后紀において果たされたのだろうか。中国史書に記された倭王としては、『宋書』の倭の五王の例もあるにもかかわらず、『日本書紀』はそちらには一切触れることなく、知られるように干支二運を繰り上げる年代操作を行ってまで、『魏志』『晋起居注』と神功皇后紀との対応を選択する。そのことの意味を考えるために、神功紀がその全体として語るもの、そして『日本書紀』三十巻の中で神功紀が持つ意義を、文学の立場から読み解いてゆきたい。

佐野宏「雄略天皇御製歌──文脈付帯語の形成について──」
 固有名詞は語義の発動を停止し、固有指示機能によって符号化しているが、それ故に、説話などの文脈付帯語としての位相を形成しやすい。これを地名起源説話の構造などから示した上で、萬葉集巻一巻頭歌において、雄略天皇の記紀での文脈を付帯文脈として加味することで、作者情報が文脈指標として機能することを例示する。和歌の作品中の語ではなく、作品外の作者情報が作品解釈上の補助線になることから、固有名詞に文脈付帯語の形成契機を捉える。