古代文学会12月例会(第720回)(2019年12月7日(土)午後2時〜5時、共立女子大学 神田一ツ橋キャンパス 3号館306教室)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://kodaibungakukai.sakura.ne.jp/wp/kenkyuuhappyoukai/reikai/

--------------------

日 時 : 2019年12月7日(土)午後2時〜5時
場 所 : 共立女子大学 神田一ツ橋キャンパス 3号館306教室

※通常と建物が異なります。ご注意ください。
東京メトロ「神保町」駅下車 A8出口から徒歩3分
https://www.kyoritsu-wu.ac.jp/access/

発表者 : 長谷川豊輝 氏
題 目 : 風土記の浦島子伝と漢籍 −中国型始祖神話としての浦島子伝ー

【要 旨 :

『釈日本紀』に丹後国風土記として載る「浦島子」の記事を扱う。小島憲之氏は本記事について、口頭で伝承されてきた伝説が、漢籍の知識を持つ官人により「潤色」されたものと論じた。小島氏の方法は、漢籍による表現を「飾り(=余計なもの)」として排除することにより、源伝承に迫ろうとするものであったと整理をすることができよう。しかし、その過程で見逃された文脈があったのではなかろうか。それは、日下部首等の「先祖」をどのように語るのかという問題である。

 本発表では、「浦島子」を漢籍による始祖神話と比較することにより、先の問題に応えてみたい。はじめに、亀姫を指す呼称が「婦人」「女娘」「婦人」と変わっていること、「芳蘭之体」などの記述が『文選』「高唐賦」「神女賦」を踏まえたものであることを確認する。次に当該賦に付された李善注を確認することにより、当該賦を始祖神話として位置付ける。以上の作業により、文選との表現の一致は、先行論において論じられてきたような「潤色」や「娯楽」的な漢籍利用なのではなく、李善注により指定された読み(始祖神話としての「高唐賦」「神女賦」)を本記事の文脈に引き込む参照注としての役割を持っていることを確認する。本記事と『文選』の賦に言葉の一致を超えた密接な関わりを認めることにより、漢籍の世界に自らの始祖神話を位置付けようとした風土記の記事のつくりかたの一端を明らかにしてみたい。】

司 会 :谷口雅博 氏