紅野謙介、木村小夜、五味渕典嗣、島村輝、竹内栄美子氏が「国語」における記述問題の導入中止を求める署名活動を開始。12月6日に文科省に提出とのこと。署名受け付け中。

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共通テスト「国語」における記述問題の導入中止を求める緊急声明|kensuke|note
https://note.com/konokensuke/n/nc148155b8ec5

紅野謙介氏らがとりまとめた文案は以下。

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共通テスト「国語」における記述問題の導入中止を求める緊急声明
                             2019年12月6日
文部科学大臣 萩生田光一殿

国語教育に関わる教員・研究者等有志一同

2020年度より実施予定の大学入学共通テストの「国語」では、依然として記述問題が導入される計画になっています。国語教育に関わり、入学試験にも携わってきた私たちは、もとよりマークシート式の問題に限界があり、記述問題にはマークシート式にない柔軟性や、思考力・表現力を問う可能性があることは理解しています。しかし、現行案のまま導入することに対しては、断固として反対します。制度的な不備とともに、記述問題の長所を損なう悪しきモデルを掲げることで、若い世代の自由な発想力や思考力、表現力をむしろ規制してしまうと考えるからです。以下に現行案の致命的な欠陥を指摘します。

1 採点における公正さを担保できません。
記述問題の作成や採点に携わった経験のあるものは、この試験方式には物理的な限界があることを知っています。50万人以上が受験する大学入学共通テストで、採点基準を公正に維持することは不可能です。
2 採点の体制に信頼が置けません。
受託業者は、適切な資格のある者を選抜すると主張していますが、検証ができません。また1月後半に約7千人もの採点要員を確保することも難しく、集めえたとしても、経験的に見て、採点基準の一致や精確な共有、見直し作業ができるとは思えません。
3 自己採点に混乱が生じます。
受験生は自己採点によって二次試験への出願を決定していました。採点基準の曖昧な記述問題では、その出願に不安を抱えます。また文科省が国公立大学に対して記述部分の点数をいわゆる二段階選抜に使用しないよう要請するという報道がありましたが、それが事実であれば、記述問題を導入する意義も必要もないと考えます。
4 今後、質の悪い試験問題を記述問題の手本とすることになります。
採点の揺らぎを減らそうとすれば、問題作成に制約を加えることになります。結果的にいくつもの条件をつけて解答を誘導することは、記述問題の長所を殺してしまいます。また、こうした試験問題をモデルとすることにより、思考や発想の定型化を推し進め、教育に悪影響を及ぼします。

 以上のように、共通テストへの記述問題の導入は、それによって得られるメリットがまったく存在しません。公平・公正な採点を期待できず、さらに問題漏洩、情報漏洩や受託業者による利益相反の危険性が高まります。これを強行すれば、多くの受験生から試験結果の開示請求を受け、混乱を避けることができないでしょう。記述問題の意義や可能性を認めるからこそ、私たちは共通テストへのこのような形での記述問題の導入に反対し、中止を強く要求します。

               発起人:木村小夜(福井県立大学教授)
                   紅野謙介(日本大学教授)
                   五味渕典嗣(早稲田大学教授)
                   島村輝(フェリス女学院大学教授)
                   竹内栄美子(明治大学教授)