古代文学会 10月例会(第718回例会)(2019年10月5日(土) 午後2時より5時まで、共立女子大学 神田一ツ橋キャンパス 2号館(図書館/博物館) 606教室)
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日時 2019年10月5日(土) 午後2時より5時まで
場所 共立女子大学 神田一ツ橋キャンパス *2号館(図書館/博物館) 606教室*
※通常と建物・教室が異なります。ご注意ください。
※吹抜のコミュニケーションギャラリー脇の階段を2階まで上り、2階から6階までは、エスカレーターをご利用ください。
東京都千代田区一ツ橋2-6-1
東京メトロ「神保町」駅下車A8出口から徒歩3分
https://www.kyoritsu-wu.ac.jp/access/
発表 塩沢一平 氏
題目 巻十七の大伴家持と大伴書持の贈報歌群
要旨
万葉集巻十七の霍公鳥をめぐる書持(17
・三九〇九~三九一○)と家持(三九一一~三九一三)との贈報について考察する。この歌群は、久邇京にいる家持を霍公鳥になぞらえ、坂上大嬢が平城旧都から思慕することを底流においたものなのであろうか。旧都に残されたものの孤独感が読み取れるものなのであろうか。あるいは詠物として霍公鳥を観念的に詠んだものなのであろうか。
これら諸問題を解決する端緒は、まずは久邇京が現出する理念にあったと考えられる。当該贈報歌群は天平十三年に作られ、前年に久邇京遷都が行われ、家持は久邇京にいた。久邇京はそれまでの都城讃歌(藤原宮御井歌五〇・寧楽故郷歌一○四七)が観念的に周囲の山を取り込んで讃美していたものとは異なる。まさに山と川に直に連なる都である。その山の都が、「あしひきの山辺に居ればほとときず」が「橘の玉貫く月(=五月という暦月)」にならないうちに「鳴かぬ日はなし」という景物と暦日とのずれによる感興を、家持もたらした。山川に直接する都の理念は、田辺福麻呂の久邇京讃歌(6・一〇五〇~一〇五八)にも明示されているのである。
もう一つの端緒は、当該歌群が、巻十七に収載されている点にある。二人の贈報は、実際天平十三年のものであろう。しかし後に巻十七に収められ、題詞・左注も贈報時のものではなかろう。贈報直前に山川直接の都への讃歌である三香の原新都讃歌(三九〇七~三九〇八)を配している。その反歌では「泉の川の水脈を絶えず仕へまつらむ大宮所」と直接する川を詠み込んである。これに続き当該歌群を組み入れている。家持の題詞に示された「欝結の緒を散らす」ものは、収載時に荒都となった久邇京で獲得した感興にあったのではないだうろか。
司会 清水明美 氏