東アジア恠異学会第124回定例研究会(2019年9月1日(日)、大阪大学中之島キャンパス 201講義室)
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東アジア恠異学会第124回定例研究会
日時:2019年9月1日(日)
場所:大阪大学中之島キャンパス 201講義室
○「怪異伝承と水難防止教育との関わりについて」
ー永原順子氏(大阪大学専任講師)
【要旨】
水難は人々の信仰心や世界観に大きな影響を与えてきた。 例えば日本では、カッパなどの怪異伝承に反映されている といえる。水難に関する研究に取り組んでいる水難学会では、 水難防止教育ならびにuitemate(ういてまて) の普及を 日本および島嶼部を多く持つアジアの国々で行ってきた。 「ういてまて」とは、着衣状態で水難事故に遭遇したとき 水面に大の字になって浮いた状態で救助を待つという自己 救助法である。その普及活動を続ける中で、国や地域に よって浸透度の違いが報告されていた。発表者は、その 違いの原因を探るべく、東南アジア諸国において水難事故 と怪異伝承との関わりについての調査・分析を試みている。 実際に現地で救助法をコーチする指導員および講習参加者を 中心に、日本の水にまつわる怪異伝承を紹介した後、その国 での伝承についてのアンケートと聞き取りを行った。 本発表では、上記の調査結果をふまえ、原始的信仰(民間信仰) と外来宗教との重層構造、災害の種類および頻度の差異が思想 に及ぼす影響、各地域における水場と人々との精神的距離、 などについての考察を試みる。
○「神話と怪談が接触し、昔話になった話〜三重県菰野町のお菊の池伝説〜」
ー榎村寛之氏(三重県立斎宮歴史博物館学芸普及課長)
【要旨】
三重県北端に近い菰野町には、「お菊の池」 伝説がある。 全国的レベルでは極めて知名度が低い。じつはこの怪談、皿は 割れず、お菊は責め殺されず、皿屋敷も井戸も出てこない、 まずお菊の幽霊が皿を数えない。そして関係資料を見ていくと、 伊勢と近江の境界の八風峠という街道筋の特殊性が見えてくる。 この地域の持つ歴史的特殊性と江戸時代の支配の関係が、幕末 頃にお菊伝説を呼び込んだというのが本報告の論点の一つだが、 さらに怪談から伝説への、おそらく近代的といえる展開について も考えてみたい。そこには近江の伝説や斎王的な伝説との習合も うかがえるのである。