和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境 日記資料から研究方法を拓く』(文学通信)

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6月下旬刊行予定です。

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和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境 日記資料から研究方法を拓く』
ISBN978-4-909658-82-1 C0095
A5判・並製・282頁
定価:本体2,700円(税別)


作家、とりわけ、忘れられた作家やマイナーな著述を研究するとはどういうことか。どういう表現を、どういう作家や資料を、文学研究はとりあげるべきなのか。研究方法そのものを問い直し、文学研究の意義や方法を新たに見出していこうとする書。
本書は、ある一人の職業作家の、生活と出版環境との関わりに踏み込み、作家や小説の価値をとらえなおそうとする。そこではどういう点に、作家を研究する意味、面白さは見いだせたのだろうか。

その作家の半世紀にわたる詳細な日記から、小説の解釈、あるいは作家の伝記的な事実確認といった従来の文学研究を超えて、生活者としての作家の情報をもとに、出版・読書環境を浮き彫りにし、その変化をとらえ、戦後の長い時間的なスパンの中で、作家が職業として読み、書く行為をとらえる。本書により、文学研究は、その対象や方法の可能性を広げ、他の研究領域と問題意識や関心を共有してゆくことも可能になるであろう。

本書は論考編と日記データ編の二部構成となる。論考編である第一部「作家とメディア環境」は、それぞれの論者の問題意識から日記データを活用しつつ展開した論文によって構成。そして第二部「日記資料から何がわかるか」は、日記データのうち、作家の生活に大きく作用していることが日記からうかがえるテーマを中心に、日記本文が読めるよう日記の記述を抽出し、集成する。最後に人名リストを付す。
執筆は、須山智裕/加藤優/田中祐介/中野綾子/河内聡子/大岡響子/宮路大朗/康潤伊。

【本書は最初に述べたように、榛葉英治を偉人化、神聖化することに関心を向けてはいない。また、その小説自体に不変の価値を見出そうとしているのでもない。そうした自立(孤立)した価値を対象に見出そうとしているのではなく、その時期の流行や出版環境、経済状況といった諸々の、いわば「不純な」要因と関係し合ったものとして作家や小説の価値をとらえることに関心を向けている。そしてこうしたとらえ方をする際に非常に有効なのが、日記という日々の多様な情報を含んだ資料であった。小説を書くという営みを、文学という「純粋な」思考の中でとらえるのではなく、職業としての作家を生きる雑多な生活情報や人間関係のネットワークの中でとらえられるからである。】......あとがきより

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【編者紹介】

和田敦彦(わだ・あつひこ)

早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。『読むということ』(ひつじ書房、1997)、『メディアの中の読者』(ひつじ書房、2002)、『書物の日米関係』(新曜社、2007)、『越境する書物』(新曜社、2011)、『読書の歴史を問う』(改訂増補版、文学通信、2020)、『「大東亜」の読書編成』(ひつじ書房、2022)ほか。

【執筆者紹介】
須山智裕/加藤優/田中祐介/中野綾子/河内聡子/大岡響子/宮路大朗/康潤伊

【目次】

はじめに―文学研究の方法とリソースの可能性(和田敦彦)

一、〈不純文学〉研究の可能性
二、日記資料の可能性
三、本書の構成

第1部 論考編―作家とメディア環境

【作家とカストリ雑誌のせめぎ合い】
第一章 カストリ雑誌に消費された純文芸作家
―榛葉初期作品における「性」と肉体―(須山智裕)

はじめに
一、「蔵王」における男女の「復活」
二、「蔵王」評―「肉体文学の新版である」
三、『りべらる』の稿料の代償
おわりに

【モデル小説の権利問題と影響力】
第二章 モデル小説の応酬とその批評性
―榛葉英治『誘惑者』と四条寒一「縄の帯」―(加藤 優)

はじめに
一、榛葉英治と四条寒一
二、四条寒一をモデルにして―榛葉英治『誘惑者』―
三、榛葉英治をモデルにして―四条寒一「縄の帯」―
四、若者をまなざす視線
おわりに

【戦後の文芸メディア変動の力学】
第三章 純文学を志向する中間小説作家・榛葉英治
―文芸メディア変動期における自己像の模索とその帰結―(田中祐介)

はじめに
一、「中間小説」登場期の文芸メディア変動
二、「通俗」「中間」「純文」の狭間の自己像
三、更なるメディア変動のなかで―直木賞志向への転換
おわりに

【文学と映画の関わり】
第四章 一九六〇年映画と文学のすれ違う共闘
―榛葉英治『乾いた湖』の映画化による改変をめぐって―(中野綾子)

はじめに
一、『乾いた湖』の映画化経緯
二、映画『乾いた湖』の改変
三、『太陽の季節』の影響
四、映画原作者としての榛葉英治
おわりに

【戦争の記憶とその継承】
第五章 作家が描いた引揚げ体験と南京大虐殺事件
―『城壁』との関わりから―(和田敦彦)

はじめに
一、『城壁』の成立
二、資料の扱い
三、描き方の特質と忘却
四、引揚げ体験という靱帯
おわりに

【「美しい日本」の懐古と追憶】
第六章 作家はなぜ「釣り」を書くのか
―榛葉英治『釣魚礼賛』を起点に―(河内聡子)

はじめに
一、趣味としての「釣り」、主題としての「釣り」
二、書く対象としての「釣り」の意識
三、文学における「釣り」の系譜
四、「釣り」を書くことをめぐる葛藤
五、『釣魚礼賛』の受容と評価―「日本の原風景」の記憶と記録
六、懐旧の回路としての『釣魚礼賛』
おわりに

【人生から引き剥がせない記憶】
column 引揚げ作家の満洲経験を紐とく(大岡響子)

第2部 データ編―日記資料から何がわかるか

日記への関わり方―日記のなかに書かれた「日記」の記録
[一九四八年(三六歳)~一九九二年(八〇歳)]
【表1】 日記を記した日数
【表2】 日記の執筆日数、量(字)の推移
【表3】 一日平均の執筆量(字)の推移

作家の経済活動―金銭収支の記録
[一九四六年(三四歳)~一九九八年(八六歳)]
【表】 榛葉英治の著作リスト一九五五―五六年(原稿料記載ありの抜粋)
【図】 日記紙面に設けられた「作品録」

文壇グループの動態―人脈の記録
[一九四九年(三七歳)~一九九二年(八〇歳)]
十五日会・十日会/下界の会・波の会/魚と遊ぶ会/宴の会/物の会

雑誌メディアへの言及の変遷―雑誌に関する記録
[一九四六年(三四歳)~~一九九八年(八六歳)]
【図】 日記中に貼られた雑誌広告

「癌」という病―癌に関する記録
[一九四九年(三七歳)~一九九七年(八五歳)]

飲酒・節酒と職業作家―飲酒の記録
[一九四七年(三五歳)~一九九八年(八六歳)]
【表】 酒類の語彙の頻度、及び共に現れる語彙
【図】 禁酒打開策『日記』(一九七一年一月二一日)

作家の日常に見えた戦後史の風景―時事に関する記録
[一九四六年(三四歳)~一九九七年(八五歳)]
【図】 『日記』一九九二年三月二〇日「北方四島問題」など時事の関心事について紙面を割く。

【日記に基づいて生成される自伝】
column 日記と自伝の間(河内聡子)

日記人名リスト―出版メディア関係者一覧(康 潤伊)

あとがき(和田敦彦)


【執筆者プロフィール】(執筆順)

須山智裕(すやま・ともひろ)
修士(文学)。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程。
〈主要業績〉『『海軍報道』―大本営・報道班員・徴用作家』(解題、金沢文圃閣、二〇二二年)、『『週刊朝日』総目次・執筆者索引1945~1952―新聞社系週刊誌の戦後占領期』(共編著、金沢文圃閣、二〇二二年刊行予定)ほか。

加藤優(かとう・ゆう)
早稲田大学大学院教育学研究科博士課程。東洋英和女学院中学部・高等部非常勤講師。
〈主要業績〉「「未来」への抵抗―安部公房「鉛の卵」論―」(『研究と資料』第13集、二〇一九年)、「ジャンル化への違和―安部公房と『SFマガジン』―」(『早稲田大学大学院教育学研究科紀要』別冊第27︲2号、二〇二〇年)。

田中祐介(たなか・ゆうすけ)
国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程修了。博士(学術)。明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館客員准教授(二〇二二年度)
〈主要業績〉田中祐介編『日記文化から近代日本を問う 人々はいかに書き、書かされ、書き遺してきたか』(笠間書院、二〇一七年)、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、二〇二二年)、「「社会小説」としての賀川豊彦『死線を越えて』 「社会の発見」後の読者たちの期待と熱狂を読み解く」(『明治学院大学キリスト教研究所紀要』第54号、二〇二二年)

中野綾子(なかの・あやこ)
早稲田大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。明治学院大学教養教育センター助教。
〈主要業績〉「日本語書物の越境 ︱漢口兵站図書館「つはもの文庫」を例として」『昭和文学研究』78号(二〇一九年三月)、「蔵書構築からみる日本近代文学研究の姿 ︱ベトナム社会科学院所蔵旧フランス極東学院日本語資料(洋装本)から」『跨境 日本語文学研究』7号(二〇一八年一二月)ほか。

河内聡子(かわち・さとこ)
東北大学大学院博士課程修了。博士(文学)。東北工業大学総合教育センター講師。
〈主要業績〉「雑誌『家の光』の普及過程に見るメディアの地域展開」(『日本文学』58巻4号、二〇〇九年)、「如来寺蔵『雑誌抜粋』に見る近代メディアの受容と利用―明治期における仏教知の再編をめぐって」(『リテラシー史研究』13号、二〇二〇年)、「家計簿と女性の近代―モノとしての成立と展開に見る」(田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』第二章、文学通信、二〇二二年)

大岡響子(おおおか・きょうこ) 
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。国際基督教大学アジア文化研究所研究員。
〈主要業績〉「植民地台湾における内地刊行雑誌の受容に関する一考察―『赤い鳥』読者会員名簿を手掛かりに」(『リテラシー史研究』14号、二〇二一年)、「芦田恵之助の回想録と日記の比較から見る台湾表象と「国語」教育観」(田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』第一一章、文学通信、二〇二二年)、「飲食文化 台湾美食の影に歴史あり」、(赤松美和子・若松大祐編著『台湾を知るための72章』明石書店、二〇二二年)、ほか。

宮路大朗(みやじ・たかあき)
早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程在学中。

康潤伊(かん・ゆに)
早稲田大学大学院教育学研究科修了。博士(学術)。創価大学学士課程教育機構助教。
〈主要業績〉共編著『わたしもじだいのいちぶです―川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史―』(日本評論社、二〇一九年)、「となりあう承認と排除―ヤン ヨンヒ『朝鮮大学校物語』論―」(『日本近代文学』一〇一集、二〇一九年十一月)ほか。