賈海涛『流動と混在の上海文学 都市文化と方言における新たな「地域性」』(神奈川大学言語研究センター叢書3、ひつじ書房)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

賈海涛さまよりいただきました。

Image.jpg

公式サイトはこちら。
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1285-1.htm

賈海涛『流動と混在の上海文学 都市文化と方言における新たな「地域性」』(神奈川大学言語研究センター叢書3、ひつじ書房)

価格:定価6200円+税
発行日:2025年3月22日
A5判・上製カバー装・332頁
ISBN:978-4-8234-1285-1

【内容】
中国で最大の経済力を誇りつつも、反都市イデオロギーや標準語の普及によって地域文化と方言が危機に瀕する上海。この都市出身の作家や知識人は、どのようにこの現状と向き合っているのか?旧租界へのノスタルジア、移住者集団への注目、上海語での創作の試み、これらは文学にどのように映し出されるのか。本書では、方言、文化、移住者といった視点から、上海文学における流動的で混在する「地域性」を探求する。

【目次】
凡例 

序章 上海文学における新たな「地域性」の構想
第一節 上海における「近代」の両面性
 一・一 グローバルな「近代」に翻弄された上海
 一・二 特殊中国的な「近代」に翻弄された上海
 一・三 世紀末の「上海ノスタルジア」
第二節 新たな「地域性」を模索する
 二・一 地域文学研究における「本質としての地域性」
 二・二 新たな「地域性」の構想
 二・三 「文学言語」から見る新たな「地域性」
第三節 本書の構成 

コラム1 中国語の共通語と方言 

第一章 「地域性」を再考する「上海ノスタルジア」
はじめに
 〇・一 「新天地」をめぐる議論
第一節 文化記号をめぐる「辞書」の作成
 一・一 「解説」による「辞書」の作成
 一・二 文化記号を修復する「辞書」―陳丹燕の「文化エッセイ」
 一・三 文化記号を修復する「辞書」―程乃珊の「文化エッセイ」
第二節 「外部」と「内部」の対話
 二・一 都市を見る視点の再考
 二・二 「外部」に注目する前期作品
 二・三 「均質的な空間」をつくる後期作品
まとめ

コラム2 旧租界による上海の空間格差―「上只角」と「下只角」

第二章 上海文化論的言説としての「蘇北叙述」
はじめに
第一節 想起された集合的記憶
 一・一 代弁された「共同体の声」
 一・二 「集合的記憶」をめぐる競合
第二節 「移動」が意味すること
第三節 「蘇北叙述」における言語的な混種性
 三・一 物語における「解説される方言」
 三・二 物語における「再現される方言」
まとめ

コラム3 「蘇北」差別の源流 

第三章 方言修正による「叙言分離体」の浮上
はじめに
第一節 『東岸紀事』の版本の変遷
第二節 「解説される方言」における言語的ヒエラルキー
 二・一 地域知としての解説
 二・二 人物像としての方言
第三節 『東岸紀事』における方言修正
 三・一 文学言語に関する修正の施された箇所
 三・二 方言語彙が保持される箇所

第四節 「叙言分離体」の浮上
 四・一 版の修正と「叙言分離体」の確立
 四・二 「叙言分離体」を採用した『海上花列伝』
 四・三 近代的文体としての「叙言分離体」
まとめ

コラム4 『繁花』とその周辺

第四章『繁花』初稿の誕生と方言使用―「弄堂網」と投稿の前期段階を中心に―
はじめに
第一節 『繁花』誕生の場である「弄堂網」
第二節 「オールド上海」を振り返る「雑談部分」
第三節 前期段階の模索
第四節 「方言辞書」への疑問視
第五節 「通文性」から「方言の越境」へ
まとめ

終章 新たな「地域性」の可能性へ向けて


あとがき
付録 私の精神的な故郷である上海―『繁花』邦訳者・浦元里花との対話―
主要参考文献
索引