国立国語研究所:日本語言語科学特別講義 / 第145回NINJALコロキウム 「言語習得を可能にするのは何か ―記号接地、アブダクション、ブートストラッピング」(2024年11月5日 (火) 15:10〜16:40、国立国語研究所+オンライン(Zoom))※要申し込み(2024年10月31日 (木) 正午まで)
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●公式サイトはこちら
https://www.ninjal.ac.jp/events_jp/20241105a/
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※詳細は上記サイトをご確認ください。
開催期日
2024年11月5日 (火) 15:10〜16:40
開催場所
対面とオンラインのどちらでも参加できる、ハイブリッド形式で開催
国立国語研究所 (東京都立川市緑町10-2)
オンライン (Web会議サービスの「Zoom」を使用)
定員
オンライン300名 (先着順)
対面50名 (先着順)
講師
今井 むつみ (慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
専門領域
認知科学 (特に認知発達) 、言語心理学
講演要旨
ことばの意味とは何かというのは、古くから哲学者、言語学者、心理学者が考察してきた問題である。記号形式と対象の対応がどのようなもので、それをどのように無駄なく数学的に定式化するかという試みや、人間の心の中で、意味が処理される情報処理の心的 (脳内) 過程を明らかにしようとする試みなど、多彩な理論が提案されてきた。ここでは、子どもが自分が学習する言語の成人母語話者と同じように単語を運用できるためには、何を学ばなければならないのかという視点から単語の意味表象について考えてみたい。
子どもはことばの「意味」を直接教えてもらうことはできない。ことばが発話された状況で、ことばが状況中の何を指し示しているのかを見つけるのは当たり前にできることではない。「ウサギ」や「リンゴ」のような事物名詞でもあたりまえにできるわけではないが、動詞は、観察する状況のどこに対応するのかは明らかでない。動詞によって行為そのものを表すものと結果のみを表すもの、行為と結果両方を含むものがあるからである。運よく状況中の指示対象を捉えられたとしても、さらにもっと困難な問題が待ち受けている。状況中のことばと指示対象の対応付けはひとつの点にすぎず、そのことばを運用するためには点から面に拡張、つまり一般化をしなければならない。一般化をするために子どもは何を知らなければならないか。ことばは名詞、動詞、形容詞など、品詞によって、切り取る「同じ」が異なる。したがって、子どもはまず言葉の品詞を知らなければならないし、どの品詞が対象のどの部分を切り取るのかをあらかじめ知っていなければならない。それがわかっても、まだことばは運用できない。単語の意味は当該の単語単独で決まるわけではなく、その単語を取り巻く隣接する単語との関係できまる。隣接する単語を知り、それとの境界がどこでどのように惹かれるのかがわからなければ単語の運用はできない。つまり単語が属する語彙の他のことばを知らないと一つの単語の使える範囲がわからないのである。さらに、単語は基本的に多義であるので、一つの単語について、複数の意味を知り、文脈によって適切な意味を選択できなければならない。
このように、ひとつの単語を運用するだけでも、単語と対象の結びつきだけではなく、背後に膨大な暗黙の知識 (=スキーマ) をもつことが必要となる。人間の子どもはどのようにして短期間にこのような知識を得ることができるのだろうか?本発表では、「記号接地」「アブダクション」「ブートストラッピング」の3つのキーワードを軸に、この偉業を可能にするメカニズムについて提案する。
キーワード
講演会、オンライン開催、NINJALコロキウム、認知科学、認知発達、言語心理学