早稲田大学国際文学館:公開セミナー 村上春樹文学に出会う#10 講演&鼎談 安部公房から村上春樹へ(2024年8月2日(金)14:00〜16:00 、国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)2階ラボ)

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講演会情報です。

●公式サイトはこちら
https://www.waseda.jp/culture/wihl/other/7123
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※詳細は上記サイトをご確認ください。


公開セミナー「村上春樹文学に出会う」シリーズを開始して一年、多くの村上文学翻訳者や研究者、一般読者の方々に、村上作品との"出会い"や"絆"について語っていただきました。今年度も村上文学を読む「小確幸」や文学研究の魅力を来館者と交流し合い、風通しの良い「文学の家」を目指していきます。

今回は、戦後文学を代表する作家の一人、安部公房を見つめることで、村上文学はどう読み直すことができるのか、二つのパートで考えていきたいと思います。最初に日本近代文学研究者の鳥羽耕史先生にご講演いただき、続いて生前ジャーナリストとして交友のあった小山鉄郎先生、中国の日本文学研究者の鄒波先生から、安部公房と村上春樹についてお話していただきます。その後、三名の先生による鼎談を行います。

第一部 講演
鳥羽 耕史 「安部公房の人生と文学」

私小説を嫌った安部公房は、自らの生活を小説に書きませんでした。それだけでなく、かつて書いたものを消しゴムで消すようにして書き直し、別の作品のようにして出版することを繰り返しました。鳥羽先生は、コロンビア大学の安部公房コレクションなどを徹底的に調査し、安部公房の「消しゴム」の痕跡を確かめ、彼の人生をたどり、最新刊『安部公房 消しゴムで書く』(ミネルヴァ書房)を出版されました。ご講演では、その作業によって見えてきた作家像を中心に、創作者の深部をめぐって、お話しいただきます。

鄒 波 「キーワードで読む安部公房と村上春樹」

アメリカの小説家ジェイ・マキナニーとの対話で、村上春樹は前の世代の日本人作家に言及し、「日本では僕らに先行する世代の作家というと具体的には三島由紀夫、安部公房、大江健三郎ということになると思う。僕の地点から安部公房がいちばん近くて、三島がいちばん遠いと思う」(1993)と明言しています。年齢こそ違え、同時代の空気を吸っていた安部公房と村上春樹の間には共通点が少なくありません。文壇との距離のとり方、世界文学を吸収し世界的な作家へと成長した軌跡等々。二人の作家の作品も、共通のキーワードで読み解けば、思わぬ相同性と差異性が露わとなるでしょう。本講演では鄒波先生から、「壁」や「影」などといったキーワードを設定した上で、両者の作品に新たな光りを投げかけるお話をしていただきます。

小山 鉄郎 「感触的 安部公房・村上春樹論」

村上春樹作品については欧米文学の影響がしばしば言及されていますが、村上は日本を舞台にほぼすべての長編を書き続ける日本人作家です。作中に日本文学の古典が登場することもありますが、近代日本文学の作家との関係を考察することも大切であると小山先生は考えています。6月に本公開セミナーシリーズでは高橋龍夫先生が芥川龍之介作品と村上春樹作品との関係を詳細に指摘しましたが、今回小山先生は村上春樹、安部公房に繰り返し取材してきた記者として、村上作品と安部作品との関係についてお話しいただきます。

第二部 鼎談 小山鉄郎×鄒波×鳥羽耕史
安部文学と村上文学の関連を探った、それぞれの先生方の問題提起を深める鼎談を、第二部で行います。

鼎談後には、来場者の方とのQ&Aも予定しております。奮ってご参加ください。

ポスターのダウンロードはこちら

詳細
開催日時:2024年8月2日(金)14:00〜16:00
開催場所:国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)2階ラボ
使用言語:日本語
参  加:無料・予約不要
主  催:早稲田大学国際文学館

鳥羽 耕史(とば・こうじ)

早稲田大学文学学術院教授。専門は日本近代文学、戦後文化運動。主な著書に『運動体・安部公房』、『1950年代 「記録」の時代』、編著に『安部公房 メディアの越境者』、共編著に『「サークルの時代」を読む 戦後文化運動研究への招待』、『転形期のメディオロジー 一九五〇年代日本の芸術とメディアの再編成』、『新世紀の文学研究 一国主義を超えて』など。

鄒 波(すう・は)

復旦大学日本言語文学系主任・副教授。専門は日本近現代文学。主な著書に『安部公房小説研究』、訳書に中上健次『鳳仙花』、三島由紀夫『春の雪』、芥川龍之介『中国遊記』、川端康成『雪国』など、論文に「『トニー滝谷』におけるアウトサイダーの行方――時代との共鳴を巡って」、「中国の学生映画に移動した村上春樹文学―『100%の女の子』と『パン屋を襲う』の翻案を中心に」、「人間の運命を支配する化物たち―民俗学で読む村上春樹文学」など。

小山 鉄郎(こやま・てつろう)

共同通信社編集委員・論説委員。村上春樹は次代の日本文学を担う作家だと注目し、85年から取材を続ける。村上へのインタビューは計11回にも及ぶ。村上春樹文学の解読などで文芸ジャーナリズムを広げたとして、2013年度日本記者クラブ賞を受賞。2023年9月に『街とその不確かな壁』をめぐって、村上にインタビュー。晩年の安部公房に5度インタビュー。1996年4月、米国コロンビア大学での安部公房記念祭の国際シンポジウムで「安部公房、最後のメッセージ」を講演。主な著書に『村上春樹を読みつくす』(講談社現代新書)、『空想読解 なるほど、村上春樹』(共同通信社)、『村上春樹の動物誌』(早稲田新書)、『村上春樹クロニクルBOOK1』、『村上春樹クロニクルBOOK2』(春陽堂書店)など。

監修
権 慧(国際文学館)