日本近代文学会東海支部:第77回研究会および総会(2024年6月30日(日)14:00~17:40、愛知学院大学 名城公園キャンパス アガルスタワー 2502-2503+オンライン)

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://nihonkindaibungakukai-tokai.blog.jp/archives/28224220.html
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

日本近代文学会東海支部 第77回研究会および総会

【日 時】 2024年6月30日(日)14時~17時40分
【会 場】 愛知学院大学 名城公園キャンパス アガルスタワー 2502-2503
      対面・オンラインによるハイブリッド開催
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◯14時05分~15時00分
・勝倉明以(名古屋市立東丘小学校教諭)、堺雄輝(慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部)
 「草稿研究と国語科実践の連携の可能性──新美南吉「手袋を買いに」に着目して」

コメンテーター:鈴木彩(愛知教育大学)

【発表の要約】
 新美南吉「手袋を買いに」の草稿は、新美南吉記念館に十二葉所蔵されており、全集収録の「最終稿」の内容と凡そ合致する。本テクストの草稿に関して論じた先行研究は少ない。しかし、「ほんとうに人間はいいものかしら。」と母狐が呟く場面を見ると、草稿では異なる結末が存在し、それによって物語全体の解釈が変化する点は見逃せない。本発表では、草稿から「最終稿」への改変によって現れた狐達の人間観の変容に焦点を当てつつ、一次資料を扱って解釈する教育実践とその報告を通して、生徒のポートフォリオやアンケートから草稿が教材として活用され得る可能性の一側面を示すことを目的とする。
 具体的には、学術的視点と教育実践的視点から授業設計し、高校一年生を対象とした「言語文化」で二時間の実践を行った。グループディスカッションを通じ、「手袋を買いに」草稿における改変に対する考えを対話的に深め、草稿の「書き換え」に着目すると、どういう作品と読めるかというパフォーマンス課題に取り組んだ。

◯15時10分~16時05分
・松藤梨紗(愛知淑徳大学文化創造研究科文化創造専攻博士前期課程国文学専修2年)
 「「文学」になった「女」――二階堂奥歯「八本脚の蝶」論」

コメンテーター:佐々木亜紀子(愛知淑徳大学非常勤講師)

【発表の要約】
 「八本脚の蝶」は、2001年から2003年にかけて連載されたブログである。書き手の女性編集者・佐々木絢子が、二階堂奥歯の筆名で日記を綴っていたものの、彼女の自殺を以て運営は停止した。2006年には生前に親交のあった人物らの手で単行本としてポプラ社より出版、「2016年本屋大賞 超発掘本」への選出を経て、現在は河出書房新社から復刊された文庫本として流通している。このように、本作は文学的位置づけとしては曖昧な領域にあるといえるが、一方で、書籍化によって、「文学作品」的な「装い」を獲得したことは間違いない。そして、日記に綴られた自らの女性性に関する種々の葛藤や、フェミニズムへの強い関心を踏まえれば、本作をインターネット以後の日記テクストや女性の自己語りといった文学テクストとして読むことが可能だと考える。
 本発表では、特に、メディア横断の分析のうえ、奥歯の語りに着目したテクスト分析を行う。それによって、本作の女性語りのテクストとしての問題性・批評性を考察することを目的とする。

◯16時15分~17時10分
・中村能盛(名古屋大学時間講師)
 「千葉治平と故郷・秋田」

コメンテーター:酒井敏(中京大学)

【発表の要約】
 田宮利雄の『あきた文学風土記』には、秋田出身の作家の略歴と作品が時系列に沿って掲載されている。執筆活動の初期から晩年まで、一度も県外へ移住しなかった作家はほぼ存在せず、大抵の場合は執筆活動の開始時期あるいは過渡期に、故郷の秋田を離れて首都圏に移住して大成する傾向にある。しかしながら同書の千葉治平の項目によれば、一九四六年に処女作「蕨根を掘る人々」を発表後、『虜愁記』で直木賞作家となった後も、故郷の秋田を離れることなく執筆活動を行った。千葉治平の代表作が『虜愁記』であることは疑いの余地がない。
 本発表では戦後間もない頃の千葉治平の最初期の作品と第二次『秋田文学』の創刊に関する考察、直木賞受賞後も故郷の秋田に居を構え続けながら、東北地方を紹介する旅行書籍に掲載した随筆などにも焦点を当てて、千葉治平の作品の一傾向を見出すことを狙いとする。

◎総会 17時20分~17時40分