国立国語研究所:令和6年度 第1回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」(2024年6月15日 (土) 10:00〜16:00、国立国語研究所 多目的室+オンライン)※要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
https://www.ninjal.ac.jp/events_jp/20240615b/
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※詳細は上記サイトをご確認ください。

令和6年度 第1回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会
開催期日
2024年6月15日 (土) 10:00〜16:00

開催場所
対面とオンラインのどちらでも参加できる、ハイブリッド形式で開催
国立国語研究所 多目的室 (東京都立川市緑町10-2) 交通案内
オンライン (Web会議サービスの「Zoom」を使用)

主催
国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「消滅危機言語の保存研究」
国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「実証的な理論・対照言語学の推進」
・サブプロジェクト 「日本語・琉球語諸方言におけるイントネーションの多様性解明のための実証的研究」

キーワード
研究発表会・シンポジウム、オンライン開催、方言、音声、音韻、語彙、意味、文法

趣旨
2022~2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と、日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。プロジェクト3年目の第1回目の今回は両プロジェクトの共同研究員による言語復興および、文法や音声、方言コーパスに関する様々な研究発表を行います。

プログラム
10:00~10:40
研究発表 「八重山語の再生 : イデオロギーと実践の学際的探究」
マシュー・トッピング (国立国語研究所)
本研究は、参加型アクション・リサーチ (PAR) の方法論を適用した質的実践研究である。パーソナルインタビューおよび消滅危機言語継承活動の観察を通して沖縄県石垣市の2つの地域において、八重山地方の継承言語である八重山語「ヤイマムニ」の四箇方言「シゥカムニ」に対して研究協力者が持つ言語イデオロギーと活動の実践方法を紹介する。継承活動として協力者は「マスター・アプレンティス語学学習」 (MA) という消滅危機言語再活性化の手法を応用している。また、PARは社会科学研究の協調性を強調するため、本研究の方法論として採用した。本発表では具体的に (1) 八重山語とその消滅危機の現状、(2) MAの特徴、(3) データ収集・分析方法と (4) 石垣市での活動の背景および主なインパクトを順番に焦点をあてて論ずる。

10:40~11:20
研究発表 「沖永良部語復興can-doリスト作成の試み ―「島むにサロン」参加者とのブレインストーミングに基づいて」《オンライン発表》
岩﨑 典子 (南山大学)、高 智子 (独立行政法人国際交流基金関西国際センター)
言語使用者がその言語で「何ができるか」のレベル別の例示記述文であるcan-do statements (以下「can-do」) を含むヨーロッパ言語共通参照枠 (CEFR) が言語教育などに広く援用されている。本発表では、沖永良部語 (以下、「島むに」) の学習カリキュラム構築や独学のセルフチェックの際に役立つよう、発表者らが作成を手がけ始めた沖永良部語復興can-doリストについて報告する。まず、島むにを身近に感じて復興を願うコミュニティメンバーが月1回集う「島むにサロン」で第1回のブレーンストーミングを行い、メンバーが (自分、若い世代、子どもたちが) 島むにを使って何ができることを望むのかを聞き出し、can-doを抽出してリストを作成し、CEFR等を参照して言語運用能力のレベル分けを行なっている。言語運用能力には、CEFRが扱う「理解」「産出」「やりとり」「 (文化・言語間の) 仲介」の能力の他に、言語復興に有用な能力として、相手の島むにの知識に合わせて島むにを部分的に使う「混成」の能力を加えることにした。

11:20~12:00
研究発表 「コミュニティの主体的な記録保存と継承保存の例」
山田 真寛 (国立国語研究所)、横山 晶子 (国立国語研究所)
消滅危機言語の記録保存も継承保存も、持続可能なものにするためには地域言語コミュニティメンバーが主体となる取り組みが不可欠である。本発表では沖永良部島の2つのプロジェクト (三世代参加プロジェクトと公民館講座) を例に、それぞれの概要、アウトプット、アウトカムを報告し、コミュニティの主体性を奨励する方法について議論する。

12:00~13:10 昼休み

13:10~13:50
研究発表 「宮古語諸方言における複数形式に関する継続調査 ―類型化に向けて―」
大島 一 (国立国語研究所)、セリック・ケナン (国立国語研究所)
本発表は、昨年度から実施している宮古語諸方言における名詞の複数形式の継続調査の結果を報告するものである。今回の発表では、宮古語各地点における複数形式関連の類型化に向けて、以下の2点を中心に論じる。
第一に、宮古語のどの地点も少なくとも2つの複数形式、すなわち、名詞階層性の高い名詞に付く形式と、名詞階層性の低い名詞に付く形式を有している。しかし、名詞階層性においてこれら2つの形式が付き得る範囲が方言によって大きく異なる。基本的に、複数形式の付与がヒト名詞に限定される方言と、複数形式の付与がどの名詞でも可能な方言がある。第二に、複数形式がどの非ヒト名詞でも付与できる場合は、方言間で意味的機能の違いが観察された (①累加、②集合的例示、③Distributive (多種の構成員) など)。

13:50~14:30
研究発表 「文焦点 (Thetic) 文における主題標示とその条件の再検討 : 宮崎県椎葉村尾前方言を中心に」
廣澤 尚之 (九州大学 大学院 人文科学府博士後期課程)
宮崎県椎葉村尾前方言は主題助詞「ワ」を持つが、その分布は標準語より広く、特にいわゆる文焦点 (Thetic) 文の一部で主語に主題助詞が現れうることは注目に値する。発表者はこれまで、①主語が文脈に既出のとき、②存在 (Presentational) ではなく出来事を表す (Event-reporting) 文のとき、という2つの条件を挙げ、①、②いずれかの条件を満たすとき、文焦点文でも主語に主題助詞が現れうると記述してきた。
本発表では、直近のフィールドワークに基づき、上記の記述を2点修正する。まず、条件①を満たしていないにも関わらず主題助詞が認められる特殊な文脈があることを報告する。次に、②によって主題助詞が出現するためには述語にアスペクトの制限があることを示す。
最後に、他方言でも同様のデータがあることを紹介し、これらの現象の情報構造上の位置付けについて考察する。

14:30~14:40 休憩

14:40~15:20
研究発表 「北琉球沖縄語伊平屋方言の疑問文の構造とイントネーション」《オンライン発表》
サルバトーレ・カルリノ (大東文化大学)
本発表では沖縄語伊平屋方言の疑問文の構造とイントネーションの実現について概観する。まず疑問詞疑問文で使用される疑問語と、共起する形式を概観する。次にY/N疑問文で現れる、疑問を現す形式を概観する。次にそれぞれの疑問文のタイプのイントネーションの実現を概観し、日琉諸語及び世界の言語の疑問文イントネーションの言語類型論的位置づけについて検討する。

15:20~16:00
研究発表 「九州方言における動詞ラ行音節の実現について ―日本語諸方言コーパスに基づいた調査報告―」
佐藤 久美子 (国立国語研究所)
日本語の自然談話では、子音/r/を含む音節 (以下、ラ行音節) が撥音化・促音化することがある (「ワカンナイ」分からない、「クッカラ」来るから、等)。このような現象は全国に広く観察されるが、頻度や環境は方言によって異なることが部分的に指摘されている。本発表では日本語諸方言コーパス (Corpus of Japanese Dialects: COJADS) を用いて、九州方言の自然談話データにおいて動詞ラ行音節がどのように実現するかを調査し、その実態を報告する。具体的には、以下の三つを指摘する (i) 撥音、促音、長音が観察される (ii) それぞれの有無と頻度は地域間で大きく異なっている (iii) 福岡方言と熊本方言では、音交替が生じる環境に他方言に見られない特徴がある。