樋口敦士『故事成語教材考』より、COLUMN「日本漢詩と漢詩創作指導」、を公開(PDF)

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樋口敦士『故事成語教材考』より、COLUMN「日本漢詩と漢詩創作指導」、を公開します。ぜひご一読ください。

●本書の詳細は以下より

文学通信
樋口敦士『故事成語教材考』(文学通信)
ISBN978-4-86766-015-7 C0095
A5判・並製・332頁
定価:本体2,800円(税別)

一 日本漢詩の伝統

 令和四年(二〇二二)七月、漢詩研究の大家石川忠久先生が御逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。もはや先生の御謦咳に接することがかなわないと思うと悔やまれてなりません。先生のお名前はNHKの「漢詩紀行」で拝見し、御著書に直接サインをいただいたこともありましたが、漢詩文学の世界はそれまで縁遠いものと思い込んでおりました。私が初めて全国漢文教育学会の夏の研修会に参加しましたのは平成二十年(二〇〇八)七月のことです。会長である石川先生は漢詩の講座をお持ちになり、石川丈山「富士山」、菅茶山「冬夜読書」、乃木希典「金州城下作」などの日本人の漢詩作品を朗々とした名調子で講義されていたことを思い出します。この研修会を通して、漢詩創作の伝統は現代まで受け継がれていることも学びました。

 漢文教材においては散文作品たる「小説」とは比較にならぬほど、文学における「漢詩」の存在意義は大きいものがあります。わが国では奈良時代の『懐風藻』に始まり、平安時代の嵯峨天皇のころに『凌雲集』など勅撰の漢詩集が盛んに編まれ、菅原道真の名詩も人口に膾炙しています。江戸時代には服部南郭により『唐詩選』が出版されて広く読まれました。その後、菊池五山が『五山堂詩話』を著して漢詩の世界を一般にまで広めましたが、大正時代には下火となって新聞からも漢詩創作欄がなくなり、戦後は授業時間数の削減に伴い、教科書から日本漢文教材が徐々に姿を消していきました。

つづきはこちらから。PDF。
https://bungaku-report.com/shoten/kojiseigo_P161_172.pdf