アルバイト日誌「古写本と向き合う静かな時間」(2022.7.1、れい)

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 今日から7月。例年であればもう7月!?という気分なのですが、この暑さで季節感も分からなくなり、今年はまだ8月ではなかったのか、という気持ちです。東十条駅から文学通信までは歩いて数分なのですが、その数分でくたくたに。来週からは少し気温が下がるようですが、夏はまだこれからなのかと思うと先が思いやられます。

 前期も終わりに差し掛かっていますが、毎日の講義や研究の中で特に面白く感じるのが古写本の書誌を取る作業です。既に大学でも本の扱い方、大まかな書誌の取り方は学びましたが、本格的に扱うのは今回が初めて。本の形や大きさ、題箋の位置、文字の雰囲気や連綿など、本物の資料を見て、触って確かめるのは、緊張と(心の中での静かな)興奮の時間です。今はデジタルでの閲覧が当たり前にできる時代ですし、画面上では文字なども細かく見られるのは利点ですが、やはり資料を目にして、自分で手を動かすことで本の全体像が明らかになるとともに、「モノ」として伝来してきた実感がふつふつと湧いてきます。本の形態や読まれた跡から知る作品の受容の歴史は、翻刻された資料や注釈書からだけでは学べないものだと感じました。

 そして私は、それぞれが本と向き合う、静かに流れゆく時間が大好きです。普段の講義、演習は発表や意見交換が主で、そちらも毎時間充実しているのですが、黙々と本を対峙して観察し、写し取る作業というのは他にはないシンプルさがあるように思います。そして、本から得られた情報が自分の知識、調べた事柄とつながると、私の思考の中に存在する遥か昔の歴史が確かに存在していたのだと感動します。毎週、古写本の魅力の虜になっている私です。