アルバイト日誌「卒論執筆記③ 0から1へのハードルを飛び越える」(2021.09.25、れい)

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 前に、博物館で『雪華図説』という書物を見た。

 資料については、国立国会図書館デジタルコレクションや、印刷博物館に詳細があるので気になる方はご覧いただければと思うが、初めて見た時、雪の結晶の精緻なスケッチに大変感動した。

 私自身、旅行先で、黒い手袋の上に降ったはだら雪を注意深く観察した時、小さな結晶を見たことがある。乱れぬことのない細かい模様に、自然の神秘を感じた。

 思えば、自然のものというのは、対称的であったり繰り返し回転をしていて、常にその均等が保たれているように感じる。花の形や水滴、下流の小さな石から、地球の丸い形、自転や公転まで。私は幼い頃、その目まぐるしく回転する世界が怖かった。地球は自転していて、昼と夜があって、そしてその地球は太陽の周りを回っていて、太陽系があって、その太陽系は天の川銀河を回っていて...、そういう銀河がいっぱいあって...。そんな大きな繰り返しを生んだ力は何?と。まだ科学というものがよく分かっていない私でも、0から1にする、何かを生みだすのはとても難しいことは知っていた。視線の先にある天井と窓と、そして世の中の構成する全てのものは、どこから生まれたの...?私は永遠に不思議に思っている。

 『雪華図説』から始まり、自然について話し、まだ卒論のことに一文字を触れていないけれども、私は今、卒論を一生懸命執筆している。いつもの年ならば、秋の夜風が気持ち良いのに、今年はその涼しさに不安になる。やけに綺麗すぎる爽やかな空の青と、そよそよと揺れる緑の光が眩しい。秋の乾いた空気に押しつぶされそうだ。私は、0から1にすることがいかに難しいことを身を持って知った。研究対象の作品について、本文を読み、分析して、先行研究を読み、調査をして...。そこまではなんとかなっても、文章にできない。全てが点でバラバラになりまとまらない感覚がずっとあった。先日やっと、今の自分にできるところまで論を組み立てることができたが、そこに至るまで随分寄り道をした。これかな、と自分で気が付くまで、すなわち0から1に行くまでに今までよりずっと長い時間がかかった。次は1から2にしていく作業が待っている。それも時間がかかりそうだけれど、じっくり取り組んでいきたい。

 今年のクリスマスを想像すると怖い。小さい頃、繰り返される世界を想像した時のようになってしまう。未来を考えるより、自分には書けるという強い自信を持って、今を突き進むだけだと思っている。卒論提出まであと2か月、私はいつもがむしゃらです。