古代文学会11月例会(第728回)(2020年11月7日(土)午後2時〜5時、zoom)※要申し込み

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研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://kodaibungakukai.sakura.ne.jp/wp/kenkyuuhappyoukai/reikai/

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※申し込みは上記サイトをご確認ください。


日 時:2020年11月 7日(土)午後2時〜5時
場 所:Zoom(登録後、参加用URLを含むメールがZoomより送信されます)

発表者:尤 海燕 氏
題 目:「文章経国」の「挽歌」―漢文テクストとして読まれる嵯峨天皇薄葬遺詔
要 旨:
 嵯峨天皇薄葬遺詔は従来、主に薄葬を主張する貴重な史料として歴史的に研究・利用されてきて、漢文テクストとして掘り下げた研究が未だになされていないようである。本発表は藤原克己の注釈「『続日本後紀』の嵯峨遺詔」に基づきながら、漢文引用と日中比較の角度から嵯峨遺詔を精読し、今まで目されていない問題点を指摘する。薄葬遺詔は、藤原家への対抗を目的としたにも関わらず、自国文脈を離脱し漢籍を組み合わせて作られたもので、内なる論理性に欠けている。こうした弱みを掴んだ藤原家は遺詔の「勿拘俗事」と「無信卜筮」を手かがりに遺詔全体を反古にしてしまい、山陵祭祀の管理権と災異の解釈権を再び奪回するに至った。嵯峨親政を象徴する漢文と、漢文世界によって形象される天皇の権力は、藤原家にとって否定し、覆すべきものであった。嵯峨天皇の最期を飾る長文が、文章経国時代の終結を告げる挽歌となってしまうのは、皮肉な結果だが、歴史的宿命と言わざるを得ない。本発表では、この不可避なる運命のカラクリを考察しようとする。

司 会 :津田 博幸 氏