国文学で活かせる!国立国会図書館デジタルコレクション―送信サービスを賢く利用する方法―(国立国会図書館関西館文献提供課 本田 麻衣子)
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写真○国立国会図書館ウェブサイトより
国文学で活かせる!
国立国会図書館デジタルコレクション
―送信サービスを賢く利用する方法―
国立国会図書館関西館文献提供課 本田 麻衣子
国立国会図書館の「図書館向けデジタル化資料送信サービス」(「送信サービス」)をご存知だろうか。簡単に言えば、国立国会図書館でデジタル化した資料、約270万点の4分の3以上を、近隣の公共図書館や大学図書館の端末で閲覧することができるサービスである。
■インターネットで公開している資料と、近隣の公共図書館や大学図書館等で閲覧できる資料の違い
国文学に焦点をあてて、実際に例をあげて紹介したい。
1. 国立国会図書館蔵『連歌写』
2. 『日本文学大辞典. 第2巻』(新潮社、1933年)
3. イリア・トルストイ 著『子の見たる父トルストイ』(新潮社, 1914年)
4. 藤岡作太郎 著『東圃遺稿. 巻4 近代小説史』(大倉書店, 1917年)
5. 日本放送協会 編『日本放送協会史』(日本放送協会, 1939年)
6. 東京市 編『東京市史稿. 遊園篇 第1』(東京市, 1929年)
7. 真田増誉 著『明良洪範』(国書刊行会, 1912年)
8. 石坂善次郎 編『池田光政公伝. 上巻』(石坂善次郎, 1932年)
9. エッチ・ピー・ブラヴツキー 著『霊智学解説』(博文館, 1910年)
10. 徳富猪一郎 著『文学断片』(民友社, 1894年)
11. 西下経一 著『古今集の伝本の研究』(明治書院, 1954年)
12. 富倉徳次郎 著『平家物語全注釈. 下巻 第1』(角川書店, 1967年)
13. 服部嘉香 著『口語詩小史:日本自由詩前史』(昭森社, 1963年)
14. 織田得能 著『織田仏教大辞典』(大蔵出版, 1954年)
15. 有吉保 著『千五百番歌合の校本とその研究』(風間書房, 1968年)
16. 沢瀉久孝 著『万葉集注釈. 巻第1』(中央公論社, 1957年)
17. 土橋寛 著『古代歌謡と儀礼の研究』(岩波書店, 1965年)
18. 池田亀鑑 著『新講源氏物語. 上巻』(至文堂, 1951年)
19. 『現代短歌全集. 第19巻』(改造社, 1931年)
20. 『南方熊楠全集. 第7巻(文集 第3)』(乾元社, 1952年)
いずれも最近1年間に発行された国文学関係の雑誌論文中で、実際に引用されている文献である。そのうち、国立国会図書館デジタルコレクション(「デジタルコレクション」)に収録されている資料20点を取り上げた。
1から10の資料タイトルをクリックしていただきたい。デジタルコレクションの画面が開き、実際に資料の中身まで見ることができる。これらは著作権保護期間が満了していることが確認できたため、インターネットで公開している資料であり、世界中どこからでもインターネットを通じて閲覧することができる。
一方、11から20の資料タイトルをクリックしていただきたい。同様にデジタルコレクションの画面が開くが、先ほどとは異なり、資料の中身を見ることはできない。画面左側にある「書誌情報」の「公開範囲」をみると、「国立国会図書館/図書館送信参加館内公開」となっている。これらが冒頭で述べた送信サービスの対象資料、すなわち近隣の公共図書館や大学図書館等で閲覧できる資料である。
数でみてみると、インターネットで公開している資料が約50万点のみであるのに対し、送信サービスに参加している図書館等で閲覧することができる資料は約150万点にも及ぶ。例では図書を中心に取り上げたが、もちろん雑誌も含まれており、タイトルに「国文」あるいは「日本文学」を含む雑誌を検索すると、大学の紀要類を中心に100タイトル以上がヒットする。いずれも目次情報を検索することができるので、専門的な単語でもヒットする可能性が高いと言える。
刊行年でみると、図書は1968年までに当館で受け入れたもの、雑誌は2000年までに発行されたものが中心となっている。例えば論文を執筆するにあたって、比較的古い図書や少し前の雑誌掲載論文を幅広く確認したい場合、あちこちに行かずとも端末からスムーズに本文を閲覧できることになる。また、複写サービスに対応している図書館であれば、必要に応じて、著作権法の範囲内でプリントアウトすることもできる。
■「送信サービス」に参加している図書館は、現在1,109館
身近なサービスではないと思われたかもしれないが、送信サービスに参加している図書館は、令和元年11月1日現在で1,109館ある。デジタルコレクションに参加館一覧のページがあるので、最寄りの公共図書館や所属の大学図書館等が参加していないか、ぜひ確認してみていただきたい。
ちなみに、デジタルコレクションに収録されている資料の中には、当館まで来館しないと閲覧できないものも約70万点ある。しかし、そのような資料でも目次情報を確認できるので、当館の遠隔複写サービスを使って、必要な部分のコピーを入手することも可能である。こちらもあわせてご利用いただきたい。
送信サービスを利用すれば、わざわざ遠くの図書館に出向いたり、文献を取り寄せたりしなくても、休日に普段使っている近くの公共図書館の端末で、目当ての研究書や論文を確認することができるかもしれない。各機関で所蔵している古典籍資料は、デジタル化されインターネット上で公開されているケースも多い。しかし、研究書の類は、ほとんどデジタル化されていないのではないだろうか。そのため、文献の確認には、どうしても手間やお金がかかる。送信サービスが、全国各地の国文学研究の一助になれば幸いである。
デジタル化資料送信サービスお問い合わせ窓口
国立国会図書館関西館 文献提供課 複写貸出係
メールアドレス:digi-soshin@ndl.go.jp
電話:0774-98-1330(直通)