日本図書館文化史研究会2019年度第2回研究例会(2019年12月14日(土)、明治大学駿河台キャンパス リバティタワー6階1064教室)※要申し込み
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●公式サイトはこちら
http://jalih.jp/events/events.html#reikai2
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※申し込みは上記公式サイトをご確認ください。
2019年度第2回研究例会
昨年4月,『公共図書館の冒険 ―未来につながるヒストリー ―』(柳与志夫,田村俊作編)[詳細]がみすず書房より上梓されました。会員の小林昌樹氏,鈴木宏宗氏(国立国会図書館)も執筆されています。本研究会ではこれまでに霜村光寿氏(実践女子大学非常勤講師)による本書の紹介をニューズレター第148号(2019年5月)へ掲載,『日本図書館文化史研究』第36号(2019年9月)へ根本彰氏(慶応義塾大学)の書評を掲載しました。
今回の研究例会では,小林,鈴木両氏から著書の論点をご紹介いただきます。資料の渉猟から執筆編集過程に至るまで出版後の反響や書評についてもご報告をいただきます。また,霜村氏にコメンテータをお引き受けいただき,本書の意義を評価していただく予定です。多くの方々のご参加を期待しております。
○ 日 時 2019年12月14日(土) 10時30分~12時15分
○ 場 所 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー6階 1064教室
○ 参 加 費 会員500円,非会員1,000円
○ 申込締切 2019年12月4日(水)(必着)でお願いします。
○ プログラム
10:15- 受付開始
10:30-11:15 発 表 『公共図書館の冒険』の成立経緯 ―「冒険」の主語は ―
小林昌樹,鈴木宏宗(国立国会図書館)
11:15-12:00 コメント 霜村光寿(実践女子大学非常勤講師)
12:00-12:15 質 疑
12:30-13:30 運営委員会
○ 発表要旨
『公共図書館の冒険』の成立経緯 ―「冒険」の主語は ― 小林昌樹,鈴木宏宗(国立国会図書館)
本書は「人文書」(一般読書人向け商業出版)として2016年1月に企画された。図書館史の単行本としてはめずらしい成立経緯があったため,合評会に話題を提供したい。大きく分けて,本書には書かれないメイキングの舞台裏と,刊行後の反響に焦点をあてて報告する。第一に,持谷寿夫みすず書房社長の企画書,柳与志夫氏の論点整理が,二ヶ月に一度の会議を1年以上続けることにより,どのように変化・発展したか。論点の転換だけでなく,担当替えや補充執筆者,また執筆者でない会議参加者の役割について。第二に「オルタナティブ図書館史」という仮題の由来と「冒険」というタイトル選定の経緯。さらに,一般メディア,専門メディアごとの書評の出方やその内容について。また全体とは別に,小林が個人担当した第2章,蔵書構成史について,先行研究皆無の中,どのように資料を発見していったか(古書展で発見された東京図書館蔵書目録が,どのような知見から日本最初の選書リストと解釈できたのか)。使用した写真絵葉書の資料としての可能性についても言及したい。
○ コメント要旨
霜村光寿(実践女子大学非常勤講師)
本書は,公共図書館をサービスやその他の視点で,歴史という手法を用いて別の可能性をも考えるという,特異な出発点から展開される。一般書では一般的かもしれないが,本書では歴史書で一般的な年代ごとの記述ではなく,トピックごとに章を構成していることは大きな特徴であるといえる。テーマごとのくくりは,著者たちがどのような問題意識を持っているのかが読み手に伝わり,大変記憶に残る記述となっている。
本書で特に印象的なのは,全編を通して「もしも」という視点がかなり前面に強調されている点である。第2章で「何が読めたのか」ではなく,読めなかったものにスポットライトを当てるという視角は,王道の歴史学で語られることは少ない。また,第3章の「本が書架に並ぶまで」も,図書館サービスのなかでも比較的日の当たらない部分である。第4章も図書館と出版界の「あいだ」,第5章では「図書館員のイメージ」,第6章も貸出カウンターの「内と外」と,いずれも良い意味でマイナーなテーマであり,それでいて図書館の「日常」と密着したものである。
本書における「もしも」の視点と,一見マイナーとされがちなテーマを取り上げることの意義などの考察を行い,コメントしたい。