全訳『男色大鑑』予告的あらすじ公開!★「序」・巻1の1「色はふたつの物あらそひ」
Tweet井原西鶴が1687年に描き出した、詩情あふれる華麗・勇武な男色物語『男色大鑑』を現代に甦えらせるプロジェクトが始動します。
『男色大鑑』の、若衆と念者の「死をも辞さない強い絆」は、作品中、常に焦点となっている三角関係の緊張感とともに、長い間、誠の愛を渇望して止まぬ人々の心を密かに潤し続けてきました。
そんな作品群を、分かりやすい現代語と流麗なイラストによって新たに世に送り出します。
ここでは、そんな『男色大鑑』のあらすじを予告編的に紹介していきます。今回は序と巻一の一を紹介いたします。
------
■序
男女の恋は間に合わせ。男色こそ恋の本道!
西鶴先生は、本作冒頭にて、
「日本最古の歴史書『日本書紀』をごらんあれ。この世が出来上がった時、神様は男だけでしたな。これはこの国の根源に衆道(しゅどう)があったことをバッチリ示すのです。ところが、その後、イザナキとイザナミなんぞが現れてから、にわかにこの国の陰陽・風俗は乱れに乱れて、鬢付(びんつ)け油の投島田(なげしまだ)や紅の腰巻きなど、やたらと男の目を汚すものばかり跋扈(ばっこ)しております。これらは、美少年の居ない国での間に合わせにして、決して相手にしてはなりませんぞ。さあさあ早く男色の道へお入りあれ! 一六八七年正月吉日」
と、高らかに宣言されます。しかし『好色一代男』では、あれだけ女色を称揚した西鶴先生、どこが本音か建前か、読者は序から西鶴流の話術にて、大混乱間違いなし!
★染谷智幸(そめや・ともゆき)茨城キリスト教大学教授、執筆。
■巻一の一
色はふたつの物あらそひ
男が男に恋する二十三の理由。
類は友を呼ぶというが、私の仲間は『日本書記』の神様にまでさかのぼる。古代中国にも友が多い。あの女好きの業平も、もともとは若い男の子が好きだった。何より業平本人が、花も恥じらう美少年だったのだ。もし、私が赤ん坊の頃、今のような考えを身につけていたとしたら、絶対、女の乳なんぞ飲まなかったのに。ぐぬぬ......。というような具合で、和漢の古典を博捜(はくそう)しつつ、男色がいかに素晴らしいかを力説する本章は、荒唐無稽な法螺話(ほらばなし)かと思いきや、ところどころに本当らしさも光り、うっかり信じそうになる。
なぜ男が男に恋すべきだと言い切れるのか。
二十三もの論拠を示して徹底論破する姿は、省筆(せいひつ)を得意とする西鶴にしては、いささか珍しい執拗さだ。また、この二十三の対比において、当時の色道(しきどう)の諸相も、見事にスケッチされている。西鶴自身の創出した希代の好色漢『好色一代男』の世之介を引き合いに出して笑いのめし、果てはフィクションであることを軽やかに暗示して締めくくる、問題の書『男色大鑑』の幕開けにふさわしい一章である。
★畑中千晶(はたなか・ちあき)敬愛大学教授、執筆。
------
■編集部より
2018年11月に、『男色大鑑』八巻中、前半の武家社会の衆道に取材した作品四巻までを収録した〈武士編〉を刊行し、後半の四巻を〈歌舞伎若衆編〉として、2019年6月に刊行します。
イラストに、あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ、といった豪華な漫画家陣が参加。現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。
このプロジェクトが気になった方は、ぜひ以下の特設サイトをご覧下さい。
また本書の詳しい紹介はこちらです。ご予約受け付け中です!
●2018.11月刊行予定
染谷智幸・畑中千晶編『全訳 男色大鑑〈武士編〉』
ISBN978-4-909658-03-6 C0095
四六判・並製・192頁 定価:本体1,800円(税別)
※ご予約受付中!
amazonはこちら https://www.amazon.co.jp/dp/4909658033/