笹生美貴子『源氏物語夢見論』(文学通信)

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3月上旬の刊行予定です。

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笹生美貴子『源氏物語夢見論』
ISBN978-4-909658-99-9 C0095
A5判・上製・504頁
定価:本体7,000円(税別)


『源氏物語』の夢から何がわかるのか。物語の夢世界の在り方を解明しようとする。
光源氏と明石一族を取りまく夢の謎を中心に、物語の夢の特性を探る。明石一族と『源氏物語』周辺人物の夢との比較、その他の平安後期物語に見られる夢が描かれた場面も加えて総合的に分析し、古注釈や現代注釈の見解に加え、翻訳書(中国語訳)の解釈や注に書かれる見解も積極的取り入れ、読みを深める。『源氏物語』に見られる不可思議な夢(全二十四例)の解釈を中心とした、十七本の論考より成る。

推薦・久冨木原玲[愛知県立大学名誉教授]
「人は何故夢を見るのか。夢の不思議を物語の中に見出し、翻訳論などの多様な視点から解き明かして魅力的な論を展開する。「夢」を追い続け、「夢」に取り組み歩んできた著者の集大成の書である。」

【物語は虚構(フィクション)を語ることで人々の心を魅了し、作品の奥深くへと誘ってゆく。虚構を語ることで構成される物語の内部には、当時の者達の欲望や深層心理が色濃く反映されている。それがどのように物語に表されているのか。古代人は、夢にどのような価値観を抱き、どのように物語化してゆくのか。本書では、そうした物語なりの夢の特性を明らかにしてゆきたい。それにあたり、物語の登場人物の中で夢を見る者(夢主)・夢を見られない者の性別や立場、夢に現れる者・動物・情景などに着目し、分析を試みた。】......「序─『源氏物語』の夢から何がわかるのか─」より


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【著者紹介】

笹生美貴子(さそう・みきこ)

1980年、千葉県生まれ。2001年、共立女子大学国際文化学部卒業。2009年、日本大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程修了博士(文学)。現在、大東文化大学東洋研究所兼任研究員・共立女子大学・恵泉女学園大学・大東文化大学・日本大学非常勤講師。

【目次】

凡例

序章─『源氏物語』の夢から何がわかるのか─

本論に入る前に

第Ⅰ部 明石一族における夢の役割(1)―子出生の夢・夢実現の共同体意識の織りなす力学―

第一章 『源氏物語』を中心とした仮名文学における夢主の設定―子出生に関する夢を見る者達―
はじめに/一 父・母・第三者が見る子出生に関する夢の特徴 /二 『源氏物語』での源氏と明石入道の見た夢―包括される夢―/三 源氏と柏木の見た夢―密通による因果応報譚と猫の夢― /四 父が子出生に関する夢を見る意義/五 『源氏物語』での女性が見る夢の特徴/おわりに

第二章 「明石」巻における夢―その構造を考える―
はじめに/一 朱雀帝の夢について/二 兄弟姉妹間での勝敗の物語について―夢・遊戯を中心に―/三 「明石」巻の夢における『うつほ物語』投影の可能性/四 語られない夢物語という方法―生成される夢の重み―/おわりに

第三章 源氏物語「明石一族」の意志―『古今和歌集』一〇〇三番歌引用を起点として―
はじめに/一 明石入道の夢語りについて/二 十八年が二度記される意味/三 「老の波の皺のぶばかりに」に見る『古今和歌集』引用と変奏/四 予言に見られる「御子三人」と明石姫君―明石一族の運命を切り拓く明石尼君―/おわりに

第四章 明石一族を取り巻く夢―〝夢実現の共同体〟の視座から―
はじめに/一 平安貴族社会における夢の共有意識/二 明石一族を取り巻く複数の夢/三 源氏と朱雀帝の夢―共通する故桐壺院出現の意味/おわりに

第五章 平安後期物語の夢に込められた『源氏物語』批評の意識
はじめに/一 『源氏物語』明石一族を取り巻く夢の場合―同種の夢を描く意味/二 『狭衣物語』の場合―夢の非共有そして軌道修正を描く意味―/三 『浜松中納言物語』の場合―二度描かれる秦の親王の夢の意味―/おわりに

第Ⅱ部 明石一族における夢の役割(2)―明石一族の夢を別角度から捉える―

第一章 書かれざる秘史―明石入道と〈琴〉と〈夢〉―
はじめに/一 琴と王権―古代中国と古代日本における琴―/二 『源氏物語』の琴―『うつほ物語』との関連性について―/三 明石物語に見られる〈琴〉と〈夢〉/おわりに

第二章 『源氏物語』と〈琴〉―明石入道の場合―
はじめに/一 琴の特性―和漢比較の視点から―/二 明石一族の栄達と楽器の関係―琵琶・琴―/三 明石入道との別れ―「琴」と「琵琶」が両方描かれる意味について―/おわりに

第三章 平安期物語文学における〈琴〉と〈夢〉
はじめに/一 『琴操』と平安期物語の関係―『源氏物語』を中心に―/二 『源氏物語』須磨退居の場面と『琴操』「周金縢」/三 『うつほ物語』俊蔭一族と『源氏物語』明石一族―〈琴〉と〈夢〉の奇瑞の連携― /四 平安後期物語文学での琴と夢―奇瑞の希薄化―/おわりに

補 論 蛍兵部卿宮と明石入道 覚書―六条院世界を支える者たち―
はじめに/一 『源氏物語』における兵部卿宮/二 移りゆく役割/三 源氏の栄華を支える者達―蛍宮と明石入道/おわりに

第Ⅲ部 周辺人物に関わる夢―物語を紡ぎ出す仕組み―

第一章 『源氏物語』に見られる〈呉竹〉―夕顔・玉鬘母子物語の伏線機能―
はじめに/一 〈呉竹〉について/二 玉鬘母子を表象する〈呉竹〉の描写/三 〈竹〉の負性そして〈夢〉の介入―『大和物語』(一四七段「生田川」)・『蜻蛉日記』を媒介に―/おわりに

第二章 鬚黒北の方と紫上―葛藤する〈前妻〉たち―
はじめに/一 繰り返される〈前妻・後妻〉の問題―鬚黒北の方の母を起点として―/二 「真木柱」・「若菜上」巻における類似構造/三 玉鬘と女三の宮を取り巻く五人の求婚者について―『竹取物語』前妻大伴御行の大納言北の方と鬚黒北の方・紫上との連関―/四 鬚黒北の方と紫上の嫉妬―『大和物語』「沖つ白波」の世界が形成するもの―/五 鬚黒北の方の〈灰〉と紫上の〈夢〉について―物の怪化と葛藤する前妻たち―/六 「御法」巻の問題―救済されゆく紫上の視点から―/おわりに

第三章 隠蔽されゆく柏木の個的情念―二つの〈夢〉を手がかりとして―
 はじめに/一 死を志向する柏木―家意識/個的情念という二面性/二 柏木物語に見られる夢の解釈/三 隠蔽されゆく柏木の「個的情念」―残された者達の思惑―/おわりに

第四章 〈夢〉が見られない大君―宇治十帖の父・娘を導くもの―
はじめに/一 「竹河」巻での桜描写/二 八の宮の遺言―解釈の差異を生み出すもの―/三 亡八の宮の現れる夢について/おわりに

第五章 「浮舟物語」における母―菟原処女伝説より生成される母の救済―
はじめに/一 高橋連虫麻呂歌 菟原処女伝説/二 浮舟物語における父・母・娘/三 処女塚伝説と「浮舟物語」―母を問う―/おわりに

補 論 『源氏物語』における副詞「ゆめ(夢)」の一解釈―忍ぶ恋の世界観を形成するもの― 
はじめに/一 『源氏物語』本文に見られる「ゆめ(夢)」表記について―平仮名・漢字別記の意味―/二 副詞「ゆめ」関係の文法整理/三 和歌における副詞「ゆめ」と名詞「夢」―言葉の連関により生成される世界観―/四 副詞「ゆめ」の一解釈―忍ぶ恋の世界観を形成するもの―/五 秘密漏洩の空間としての「ゆめ」 /おわりに

第Ⅳ部 翻訳文学がもたらす新たな「夢」解釈―中国語訳を例として―

第一章 『源氏物語』の翻訳により拓かれる世界―中国語訳『源氏物語』「夢」の描写方法を中心に―
はじめに―翻訳作品により見出せる新たな読みの可能性―/一 中国語訳『源氏物語』の現状/二 豊子愷訳『源氏物語』について―参考とした各訳本・注釈等の整理―/三 豊子愷訳『源氏物語』の世界と原典『源氏物語』との比較/おわりに

第二章 豊子愷訳『源氏物語』における明石像―翻訳書の可能性を探る―
はじめに/一 豊子愷訳『源氏物語』について―参考テキストを中心に―/二 明石一族を取り巻く夢/おわりに

終章─物語の夢からわかること─

初出一覧
あとがき
要旨(英文・中文)
索引(人名・書名・事項)