国立歴史民俗博物館・川村清志・天野真志編『REKIHAKU 特集・アートがひらく地域文化』(国立歴史民俗博物館)

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2月下旬刊行予定です。

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国立歴史民俗博物館・川村清志・天野真志編
『REKIHAKU 特集・アートがひらく地域文化』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-909658-96-8 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信

国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

第8号の特集は「アートがひらく地域文化」。
慢性的な過疎化や高齢化と震災や水害などで、限界を迎えつつある地域共同体。いまこののただなかで、新たな社会を模索する芸術祭の試みが行われつつある。アートという新たな文化資源の生成は、そこでの文化の担い手に何を要請するのか。
アート作品を生み出す根源的なイマジネーションは、時に、ローカルな文化の秘められた側面を露わにしたりもする。
フィールドワークの営みと交差する、ローカルな文化を撹乱するかにみえるアートの諸実践は、地域文化の何をひらいていくのだろうか。これからの地域文化のための必携書。

特集執筆は、北川フラム/川村清志/南条嘉毅/川邊咲子/大川友希/長江健太/是恒さくら/八谷麻衣/マユンキキ/内田順子。

特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。

歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

特集趣意文

令和の時代、地域共同体は慢性的な過疎化や高齢化と震災や水害、今時のコロナ禍のような突発的な災害によって、疲弊し、消滅の危機にある。これまで育まれてきたローカルな文化の多くも静かに幕を下ろしつつある。このような時代、消えゆく文化をわたしたちは、自分とは関わりのないものとして遠くから眺めたり、いたずらに嘆息するだけでよいのだろうか。時には、コミュニティへの積極的な働きかけや、文化の継承を模索することも必要とされるのではないだろうか。
 この特集では、地域社会の危機的状況での現代的な試みとして、アートを中心とする文化的実践の可能性と課題について問いなおしたい。現在、各地の博物館・美術館展示やモニュメント、あるいは芸術祭などの場で、アートは地域文化の多様な表象を行っている。新たな文化資源の生成は、その担い手のカテゴリーの再構成を要請する。そこでの文化の担い手は、参加者の自発性や積極的な参与に依存し、流動的なネットワークによって構成される。むしろ、そのような流動性や開放系としての側面が、既存の地域の内部と外部を横断した文化の共創を可能にしうる側面も指摘できるだろう。
 ただしアートという外部からの価値観は、ローカルな文化を選択的に捉えなおし、新たなイメージを付与する。取り組みの多くは、地域振興や経済効果が意図され、表象されるコンテンツはあらかじめ正の価値づけを付与されることが多い。その意味でアートは、文化財や文化遺産といった文化の制度化と相似的な側面を有する。観光資源としての世界遺産や文化財と同様の役割がアートにも求められている。
 他方でアートは、時にローカルな文化に付帯していた差別や排除、社会格差の再生産といった負の側面を照射することもある。アート作品を生み出す根源的なイマジネーションが、ローカルな文化の秘められた側面を露わにするのであれば、それらを含み込み、矛盾や課題を乗り越えてこそ、はじめて文化の継承と再創造が可能になるのではないだろうか。文化財や文化遺産がしばしば、文化の負の側面を糊塗してしまう危険性とは逆の可能性を、一見、ローカルな文化を撹乱するかにみえるアートの諸実践から検証しなおしたい。





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【編者紹介】

国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

川村清志(かわむら・きよし)

国立歴史民俗博物館准教授(文化人類学・民俗学)。論文等に、「民俗誌映画が語る地域の文化力」(日髙真吾編『継承される地域文化 : 災害復興から社会創発へ』臨川書店、2021年)、「民俗文化資料のデジタルアーカイブ化の試み─文化資源化と研究分野の更新に向けて」(『国立歴史民俗博物館研究報告』214、2019年)、『明日に向かって曳け』(民俗研究映像、監督、2016年)など。

天野真志(あまの・まさし)

国立歴史民俗博物館准教授(日本近世・近代史、資料保存)。著書に、『地域歴史文化継承ガイドブック』(共編著、文学通信、2022年)、『幕末の学問・思想と政治運動』(吉川弘文館、2021年)など。

【目次】

特集・アートがひらく地域文化

特集鼎談 アートと地域の文化をつなぐということ
──芸術祭と地域の歴史・文化のこれから

(北川フラム・川村清志・南条嘉毅)

1 民具にまつわるストーリーと新たな価値
民具の「緩やかな保存」──奥能登国際芸術祭「珠洲の大蔵ざらえ」

(川邊咲子)

2 民具はどう作品になっていったのか●COLUMN
お祭りと《待ち合わせの森》
(大川友希)

3 険しく終わりのない珠洲の営み●COLUMN
珠洲への移住とアート×地域社会の関係性
(長江健太)

4 世界を眼差す視点の豊かさをもたらすアーティストの仕事
回遊する眼──海と陸、鯨と人の間の物語を紡ぐ

(是恒さくら)

5 作品を作らなくてもいい世界を望むということ
私が「わたし」として表現すること
(八谷麻衣/マユンキキ)

6 構造化されたフレームを意識する手がかり●COLUMN
「アイヌアート」の展示
(内田順子)

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たかが歴史 されど歴史
縄文を音楽で表現してみよう(中村耕作)

博物館マンガ 第7回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館

博物館の魅力を伝えよう!(鷹取ゆう)

石出奈々子のれきはく!探検 第7回
浮世絵の前で、わたしたちは限りなく自由だ(石出奈々子)

フィールド紀行
移住持込資料を守り、伝える

北海道開拓移住の記憶と記録  第1回
●なぜ北海道に〝伊達〟―移住持込資料の特質―
(工藤航平)

誌上博物館 歴博のイッピン
元禄時代の修理の際に作成された東大寺正倉院宝物図
(小倉慈司)

歴史研究フロントライン
巨大加速器で文化財へ潜る(齋藤 努)

EXHIBITION 歴博への招待状
企画展示「いにしえが、好きっ!―近世好古図録の文化誌―」
(三上喜孝)

SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
新しい資料と向き合い、炭鉱労働社会の歴史を探る(佐川享平)

歴史デジタルアーカイブ事始め 第6回
デジタルアーカイブ福井(橋本雄太)

くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の桜草」のご案内

博物館のある街
福島県富岡町とみおかアーカイブ・ミュージアム

東日本大震災と原子力災害を地域史に位置づける博物館
(門馬 健)

くらしの由来記
温泉文化史の魅力(河合佐知子)

研究のひとしずく
変わりゆく葬儀 

第4回(完)●故人と別れる(山田慎也)

海外の日本研究から
LEON DE ROSNY (1837-1914)
Un pionnier des études japonaises en France deuxième partie
(ギヨーム・カレ)

歴博友の会 会員募集
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