朝里 樹編著『玉藻前(たまものまえ)アンソロジー 生之巻』(文学通信)
10月下旬刊行予定です。
朝里 樹編著『玉藻前アンソロジー 生之巻』(文学通信)
ISBN978-4-909658-83-8 C0095
A5判・並製・336頁
定価:本体1,900円(税別)
世界が始まり、悪狐が目覚める――。
人間離れした美貌を持ち、人を超えた才知をほこり、数千数万の軍隊を相手に戦うことができる強さを持つ、伝説上、最「恐」のヒロイン、玉藻前(たまものまえ)。しかし本邦には玉藻前を扱った作品が膨大に存在するにもかかわらず、広く読める現代語訳がありません。
本書は大の玉藻前好きであった著者が、「誰でも玉藻前に触れることができ、彼女の魅力を広めることができるならば」と、膨大な作品群を現代語訳で編んだアンソロジー、『玉藻前(たまものまえ)アンソロジー 殺之巻』につづく第二弾!
本書には6作品を収録。
近世を代表する玉藻作品、読本『絵本玉藻譚(えほんたまもものがたり)』。中国の殷において妖妃・妲己として淫楽の限りを尽くし、天竺にて花陽夫人という美女となって残虐を極め、日本に渡り玉藻前となって暗躍するという物語。岡田玉山によって作られ、文化二年(一八〇五)に刊行されました。中国、天竺、日本の三国における九尾の狐の活躍が生き生きと描かれており、現代の玉藻前のイメージを形作った作品のひとつで、玉藻前好きであれば一読の価値ありです。『絵本増補 玉藻前旭袂(えほんぞうほ たまものまえあさひのたもと)』は元は『玉藻前旭袂』という作品。合作の浄瑠璃であり、寛延四年(一七五一)に初上演。大幅に脚色され、『絵本増補 玉藻前旭袂』として文化三年(一八〇六)に初演されました。三国を巡る九尾の狐の物語ですが、妖狐を倒すための「獅子王の剣」、自分の正体を明かし、人間と共謀して暗躍する玉藻前など、他の作品では見られない要素も盛り込まれています。また、現在でもよく上演される「道春館の段」など、濃厚な人間ドラマが描かれている点にも注目です。
『狐川今殺生石』は、玉藻前にかかわる作品でありながら、玉藻前が直接登場しない珍しい作品。舞台は江戸時代。かつて玉藻前を倒した伝説の残る上総介と三浦介の子孫に対し、玉藻前の子孫の狐たちが復讐を遂げようとします。
「関連資料」には大江匡房によって記された『狐媚記』。これにも玉藻前は登場しませんが、日本で初めて妲己が九尾の狐であることに言及した作品として知られています。『神明鏡』は南北朝時代に書かれた年代記ですが、玉藻前について記された最も古い書物として知られています。『狂歌百物語』は様々な妖怪に纏わる狂歌を集め、編纂したものです。今回はその中の玉藻前に纏わる狂歌を集め、現代語訳と解説を行いました。
これらを現代語訳でお届けします。
付録エッセイに、「中世の玉藻の性格」伊藤慎吾(國學院大學栃木短期大学准教授)を収録。
【玉藻前には様々な魅力があります。天地開闢とともに生まれたというスケールの大きさ、長い年月を生き、死してもなお殺生石となって毒を捲き散らかした生命力と執念深さ、次々と国を滅ぼすほどの人間離れした美貌、あらゆる事物にも精通する才知、神通力を自在に操り、その身一つで武士や兵士たちと戦った強さなど、挙げればきりがありません。中世から現在に至るまで、玉藻前が様々な物語に登場するのは、私のように彼女の魅力に惹かれた人々が数多にいたからなのでしょう。本書を通し、そんな玉藻前の魅力を少しでもお伝えすることができたならば、幸いに思います。】
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好評既刊!
●2021.07月刊行
朝里 樹編著『玉藻前アンソロジー 殺之巻』(文学通信)
ISBN978-4-909658-59-3 C0095
A5判・並製・376頁
定価:本体1,900円(税別)
【著者プロフィール】
朝里 樹(あさざと・いつき)
怪異・妖怪研究家。1990年北海道生まれ。法政大学文学部卒業。
在野研究者として怪異談の収集・研究を行う。
著書に、『日本現代怪異事典』『日本現代怪異事典 副読本』(笠間書院)ほか、「好きなものに取り憑かれて」(荒木優太 編著『在野研究ビギナーズ 』明石書店)、『歴史人物怪異談事典』(幻冬舎)、『1日1話、つい読みたくなる世界のミステリーと怪異366』(監修、徳間書店)、『大迫力!禁断の都市伝説大百科』(監修、西東社)、『放課後ゆ〜れい部の事件ファイル たったふたりのヒミツのクラブ』(集英社みらい文庫)、『21世紀日本怪異ガイド100』(星海社新書)など。@asazato4
Cover illustration
とびはち
動物好きのイラストレーター。web、書籍の装丁を中心に活動中。@tonbippo08
【凡例】
○本書は、岡田玉山作・画『絵本玉藻譚』(文化二年〈一八〇五〉刊)、浪岡橘平、浅田一鳥、安田蛙桂作・近松梅枝軒、佐川藤太添削『絵本増補 玉藻前旭袂』(文化三年〈一八〇六〉初演)、『狐川今殺生石』(宝永元年〈一七〇四〉上演)、大江匡房『狐媚記』(成立時期不明)、『神明鏡』(南北朝時代末期成立)、天明老人編・竜閑斎画『狂歌百物語』(江戸後期刊)の現代語訳を収録している。各作品を現代語訳するにあたり参照した資料は巻末「参考資料」にまとめた。
○『絵本玉藻譚』『絵本増補 玉藻前旭袂』登場人物の関係性については巻末「主要人物相関図」(文学通信編)参照。
○固有名詞やそのほかの用語はなるべく通行の表記、あるいは原文中で多いほうの表記に統一した。
○『絵本玉藻譚』
原文の見出しに通し番号(第一章〜最終章)を振った。序文・跋文は割愛した。挿絵は国文学研究資料館蔵本(請求記号:ナ4─829─1〜5)より選び掲載した。
○『絵本増補 玉藻前旭袂』
原文の見出しに通し番号(第一の一〜第五の三)を振った。
○『狐川今殺生石』
狐が登場する第一部のみを訳し、第二部は割愛した。
○『神明鏡』
玉藻前に関する記事のみを抄出し訳した。
○『狂歌百物語』
原文は東京都立中央図書館東京誌料『狂歌百物語』を底本とし、玉藻前に関する歌のみを抄出し訳した。
【目次】
まえがき─スケールの大きな妖怪、玉藻前
玉藻前の物語
玉藻前ブーム
本書の構成
主要人物紹介
安部泰成(あべのやすなり)
上総介(かずさのすけ)
華陽夫人(かようふじん)
化生前(けしょうのまえ)
玄翁和尚(げんのうおしょう)
妲己(だっき)
紂王(ちゅうおう)
鳥羽上皇(とばじょうこう)
斑足太子(はんぞくたいし)
褒?(ほうじ)
三浦介(みうらのすけ)
幽王(ゆうおう)
凡例
『絵本玉藻譚(えほんたまもものがたり)』(読本)
第一章 蘇妲己、駅堂にて化け物となる
第二章 雲中子が木剣を献上する
第三章 紂王が姜皇后を殺める
第四章 西伯が燕山にて雷震を得る
第五章 西伯と南伯が表を奉り、紂王を諫める
第六章 紂王は?里城に西伯を捕らえる
第七章 紂王が酒池肉林を作る
第八章 西伯は捕らわれの身から解放され、岐州に帰る
第九章 呂尚、殷の京を避け、?渓に隠れる
第十章 西伯候が?渓の子牙を訪れる
第十一章 西伯候は再び子牙を招来する
第十二章 武王は兵を起こして殷辛を討つ
第十三章 太公望が高明高覚を破る
第十四章 三仁が去り、成湯を陥れる
第十五章 太公望が五将を捕虜とする
第十六章 妖狐が西に向かう
第十七章 斑足王が花陽夫人を得る
第十八章 斑足王が獅子に僧を食らわせる
第十九章 花陽夫人が采姫を射る
第二十章 斑足王は浄玻璃国で狩りをする
第二十一章 花陽夫人が真の姿を現し、天竺を飛び去る
第二十二章 鳥羽院のこと
第二十三章 坂部道春が子を清水観世音に祈る
第二十四章 鳥羽法皇の白河行幸
第二十五章 鳥羽法皇が玉藻前を寵愛する
第二十六章 兵庫頭頼政が怪鳥を射る
第二十七章 菖蒲前が怪を語る
第二十八章 美福門院が計画を立て、妖怪を取り除く
第二十九章 玉藻前が幣取に命じられる
第三十章 安倍康成が妖怪を調伏する
第三十一章 藤原保隆の妻子が分身する
第三十二章 三浦介、上総介が勅命を蒙り、東国に下る
第三十三章 両介は那須野で野干を狩る
第三十四章 百日に渡り射術を鍛錬する
第三十五章 老狐が命を落とす
第三十六章 殺生石が怪をなす
第三十七章 悪霊が善道に帰す
最終章 玄翁が石を砕いて狐怪を滅す
『絵本増補 玉藻前旭袂(えほんぞうほ たまものまえあさひのたもと)』(浄瑠璃)
第一の一 天竺の沙牟呂山の段
第一の二 同麓の段
第一の三 蘭亭宮の段
第二の一 妲己入内の段
第二の二 太公望の漁の段
第二の三 紂王御殿の段
第二の四 楼門の段
第三の一 清水の段
第三の二 道春館の段
第四の一 神泉苑の段
第四の二 廊下の段
第四の三 十作住家の段
第五の一 訴訟の段
第五の二 祈の段
第五の三 那須野の原の段
『狐川今殺生石(きつねがわいませっしょうせき)』(狂言)
関連資料
『狐媚記』
『神明鏡』
『狂歌百物語』より玉藻前
参考資料
[付録エッセイ]中世の玉藻の性格...伊藤慎吾(國學院大學栃木短期大学准教授)
[付録]主要人物相関図(『絵本玉藻譚』・『絵本増補 玉藻前旭袂』・『狐川今殺生石』)