佐伯真一『軍記物語と合戦の心性』(文学通信)

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4月下旬の刊行予定です。

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ISBN978-4-909658-54-8 C0095
A5判・上製・カバー装・584頁
定価:本体10,000円(税別)

前近代の日本では、合戦即ち戦争をどのように考え、感じ、表現していたか。それを考えることが、本書の目的である――。

本書は、人々の合戦に関わる思考や感情を包括しつつ、歴史叙述、信仰、異国合戦、武士道など、多岐にわたるテーマを扱い論じていく。分析の対象は『平家物語』『曽我物語』『太平記』『予章記』などの諸作品のほか、「軍記」「軍神」「良将」「武士道」といったいっけん自明な言葉の概念にも及ぶ。
これからの軍記物語論のためになくてはならない書です。

【前近代の日本では、合戦即ち戦争をどのように考え、感じ、表現していたか。それを考えることが、本書の目的である。書名に用いた「合戦の心性」は落ち着かない言葉だが、たとえば武器を取って戦っていた者はもちろん、突撃を命ずる者、戦いの周辺で被害に遭った者、勝利や無事を祈っていた者、ただ傍観していた者、そして後にその物語を語る者・聴く者等々、さまざまな人々の合戦に関わる思考や感情を包括するつもりで選んだ表現である。】......「はじめに」より





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【著者紹介】

佐伯真一(さえき・しんいち)

1953年生まれ。
同志社大学文学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。帝塚山学院大学助教授、国文学研究資料館助教授を経て、青山学院大学文学部教授。
主要著書:『平家物語遡源』(若草書房・1996年)、『戦場の精神史─武士道という幻影─』(日本放送出版協会・2004年)、『建礼門院という悲劇』(角川学芸出版・2009年)、『「武国」日本─自国意識とその罠─』(平凡社・2018年)、『四部合戦状本平家物語全釈・巻六〜巻十一』(共著、和泉書院・2000〜2017年)、『平家物語大事典』(共編、東京書籍・2010年)など。


【目次】

はじめに─本書の内容と構成─

第一部 軍記物語とは何か

第一章 「軍記」概念の再検討
はじめに─「軍記」という概念─
一、中世軍記物語の書名と「軍記」
二、「軍記」という書名と語彙
三、近世における「軍記」と「軍書」
四、近代における文学史記述と「軍記物語」「軍記」

第二章 『平家物語』は「軍記」か
はじめに
一、「軍記」「軍書」概念と『平家物語』
二、近代の「軍記物語」理解と武士・英雄
三、『平家物語』の合戦と被害者
四、「木曽最期」をめぐって
おわりに

第三章 『義貞軍記』と武士の価値観
はじめに
一、武士の価値観と軍記物語
二、『義貞軍記』という「軍記」
三、『義貞軍記』の将への教訓
四、『義貞軍記』の兵への教訓
おわりに

第四章 一五世紀の「軍記」─『倭国軍記』の紹介と翻刻─


第二部 『平家物語』の合戦

第一章 異能の悪僧達─延慶本『平家物語』橋合戦の読み方─
はじめに
一、橋合戦の構成と浄妙房・一来
二、矢切の但馬と「水車」
三、円満院大輔の水練と雷房の大声
おわりに

第二章 屋島合戦と「八島語り」
はじめに─「八島語り」の問題─
一、折口信夫の「八島語り」の想定
二、「八島語り」肯定説
三、『屋島壇浦合戦縁起』の周辺
四、「八島語り」懐疑説
五、私説と展望

第三章 小坪坂合戦と三浦一族
はじめに
一、小坪坂合戦の概略
二、小坪と鎌倉
三、盛衰記の矛盾
四、三浦一族の合戦譚
五、勲功と鎮魂─佐奈田与一のことなど─
六、「坂落」記事と三浦一族

第四章 「馳組戦」をめぐって
はじめに
一、「馳組戦」の概念と根拠
二、『今昔物語集』の「馳組」と「射組」
三、延慶本『平家物語』の「ハセ組」と「カケ組」
四、「馳組戦」と真光故実
おわりに

第五章 「越中前司最期」と合戦の功名
はじめに
一、刑罰としての耳切
二、古代の戦場における耳切
三、中世後期の戦場における耳切・鼻削
四、「奪首」と「跡付」
おわりに


第三部 軍記物語と歴史叙述の諸相

第一章 『曽我物語』と敵討
はじめに
一、「敵討」と「仇討」
二、中世の敵討 
三、敵討の心情と論理
四、『曽我物語』と敵討
おわりに

第二章 『太平記』と「良将」の概念
はじめに
一、軍記物語の合戦と「将」
二、『太平記』の「良将」と「名将」
三、『太平記』の「智謀」
四、『太平記秘伝理尽鈔』における「良将」
おわりに

第三章 『保暦間記』の歴史叙述
はじめに
一、叙述の範囲と構成
二、『平家物語』史観
三、怨霊史観
四、因果応報史観
おわりに

第四章 『予章記』の歴史叙述
はじめに
一、『予章記』の時代認識と叙述方法
二、系譜の貴種化
三、益躬の鉄人退治
四、河野と越智・新居
五、軍記物語との交錯
おわりに


第四部 合戦と信仰

第一章 天狗・怨霊と合戦
はじめに
一、崇徳院と〈天狗=怨霊〉
二、憑依する天狗
三、憑依する怨霊
おわりに

第二章 後白河院と「日本第一大天狗」
一、問題の所在
二、「天魔之所為」とは何か
三、天魔と天狗
四、頼朝の意図
五、補足

第三章 『平家物語』と鎮魂
はじめに
一、『平家物語』における「鎮魂」の研究史
二、鎮魂の物語とは何か
三、言葉による鎮魂・怨霊との戦い
四、清盛批判と鎮魂
おわりに

第四章 軍記物語と鎮魂
はじめに
一、『曽我物語』と鎮魂の叙述
二、『将門記』における鎮魂の有無
三、『保元物語』と鎮魂の主題
四、『太平記』と鎮魂
五、『明徳記』の成立と鎮魂
六、戦国軍記と「鎮魂」の行方
おわりに

第五章 「軍神」(いくさがみ)考
はじめに
一、軍記物語と首をまつる対象としての「軍神」
二、『梁塵秘抄』と「軍神」の神格
三、兵法書などに見える「軍神」と儀礼
四、中世後期における「軍神」の神名
五、「軍神」と「血祭り」
おわりに


第五部 〈異国合戦〉と日本文学

第一章 〈異国合戦〉論の展望
はじめに
一、神話世界の征夷と神功皇后説話
二、蒙古襲来と〈異国襲来〉伝承 
三、一六〜一七世紀の〈異国合戦〉と文学
四、敗将渡航伝承
おわりに

第二章 〈異国襲来〉の原像
はじめに
一、『螢蠅抄』の概略─成立・書名・内容─
二、上代の〈異国襲来〉記事の概略
三、上代の〈異国襲来〉と「新羅合戦紀」
四、〈異国襲来〉伝承の生成
五、〈異国襲来〉伝承の展開
おわりに

第三章 神功皇后説話の屈折点
はじめに
一、神功皇后説話の変化について
二、新羅敵視とその背景
三、「神国」意識と神への期待
四、神々の武勲譚
おわりに

第四章 「耳塚」と「耳堂」の史実と伝承
はじめに
一、耳塚論争
二、耳塚か鼻塚か
三、耳塚と「耳堂」の伝承
四、その後の「耳塚」と耳切
おわりに


第六部 近代の武士観・「武士道」論と軍記物語

第一章 「兵の道」・「弓箭の道」考
はじめに
一、研究史と問題の所在
二、「兵の道」について
三、「弓箭の道」について
四、武士の「道」の展開

第二章 「武士道」研究の現在─歴史的語彙と概念をめぐって─
はじめに
一、「武士道」の起点をめぐって
二、戦国「武士道」から近世の「武士道」へ 
三、近世における「武士道」の用例をめぐって
四、近世「武士道」から近代「武士道」へ
おわりに─まとめと今後の課題─

第三章 近代「武士道」論と軍記物語の懸隔
はじめに
一、新渡戸稲造の場合
二、井上哲次郎の場合
三、足立栗園の場合
おわりに

第四章 近代の武士観と軍記物語研究
はじめに
一、原勝郎『日本中世史』と「武士道」論
二、「武士道」論の二つの系譜
三、もう一つの武士観と原勝郎
四、武士観の問題と軍記物語研究
おわりに

付論 『滝口入道』の武士観

初出一覧
あとがき
索引
・人名・神仏名索引
・書名・作品名索引