高橋晃一・根本裕史編『『阿毘達磨集論』の伝承 インドからチベットへ、そして過去から未来へ』(文学通信)
3月下旬の刊行予定です。
高橋晃一・根本裕史編『『阿毘達磨集論』の伝承 インドからチベットへ、そして過去から未来へ』(文学通信)
ISBN978-4-909658-51-7 C3015
A5判・並製・162頁
定価:本体2,400円(税別)
本書が取り上げるのは5世紀ごろにインドの学僧アサンガによって書かれた仏教の哲学文献、『阿毘達磨集論』である。
もともとサンスクリット語によって書かれたこの文献のほとんどは長いあいだ散逸し、断片が残っているに過ぎない状況であったが、近年の写本発見などにより、資料の全貌が明らかになりつつある。
新たに発見された資料、そしてそれにもとづいて復元された原典はなにを物語るのか。インドからチベットへ、そして過去から現在に至るまでそれはいかに伝承されてきたのか。
最新の研究成果にもとづき、『阿毘達磨集論』の原典・翻訳・註釈について多角的に論じる。執筆は、高橋晃一、根本裕史、Achim Bayer、彭毛才旦、李 学竹、崔 境眞。
【これまで、『阿毘達磨集論』の原典は、半分以上が散逸した断片的な写本が残っているに過ぎなかった。サンスクリット語で書かれた注釈は完本で残っていたが、『阿毘達磨集論』本文全体を再構成し得る資料ではなかった。しかし、近年になって、新たな写本が見つかり、『阿毘達磨集論』のほぼ全体の原典が復元可能になった。[...]また、やはり近年になって発見され、刊行された『カダム全書』の中に、『阿毘達磨集論』のチベット語訳に対してチベット人が書いた注釈が多く残っていることが分かった。[...]『阿毘達磨集論』の写本研究、原典読解、思想研究の最先端の成果を紹介しつつ、今後の研究の展望を示すのが本書の目的である。】「序にかえて」より
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【編者紹介】
高橋晃一(たかはし・こういち)
1971年生まれ。東京大学准教授。東京大学文学部インド哲学仏教学専修課程卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。東京大学助手、日本学術振興会海外特別研究員(ドイツ・ハンブルク大学)、東京大学特任研究員、筑波大学助教などを経て、現在に至る。主な著書は『『菩薩地』「真実義品」から「摂決択分中菩薩地」への思想展開―vastu概念を中心として―』(山喜房佛書林、2005年)。専門はインドの瑜伽行・唯識思想で、特に最初期の思想の形成過程を研究している。
根本裕史(ねもと・ひろし)
1978年生まれ。広島大学大学院人間社会科学研究科教授。広島大学文学部人文学科卒業。広島大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(筑波大学)、同海外特別研究員(中国・青海師範大学)、広島大学大学院文学研究科准教授を経て現在に至る。主な著書は『ゲルク派における時間論の研究』(平楽寺書店、2011年)、『ツォンカパの思想と文学―縁起讃を読む―』(平楽寺書店、2016年)、『迦梨陀娑《云使》译注与研究』(扎布・根本裕史共訳、中国蔵学出版社、2018年)。専門はインド・チベット仏教中観思想およびチベット古典文学。
【目次】
序にかえて●高橋晃一
1.『阿毘達磨集論』とは
2. 著者アサンガについて
3.『阿毘達磨集論』に関する新資料
4.『カダム全書』所収の『阿毘達磨集論』注釈
5. XML による電子テキストの作成
Chapter 1
『阿毘達磨集論』における「アビダルマ」とは何か?──『カダム全書』所収資料を手掛かりに──●高橋晃一
1.「アビダルマ」という概念
2. 注釈書における扱い
3.『倶舎論』におけるアビダルマの定義
4. チョムデン・リクレルのアビダルマ解釈
5. パンロツァーワとロドゥギェンツェンの解釈
6. プトゥンのアビダルマ解釈
7. チョムデン・リクレルのアビダルマ理解の意義― 結論にかえて―
Chapter 2
Hidden Intentions(abhisaṃdhi)in the Abhidharmasamuccaya and Other Yogācāra Treatises●Achim Bayer
1. Hidden Intentions: From Graded Discourses to the Saṃdhinirmocana
2. Precursors of Yogācāra abhisaṃdhi
3. Hidden Intentions in Yogācāra Treatises
4. The ālayavijñāna in the Yogācārabhūmi and the Abhidharmasamuccaya
5. The Structure of the Abhidharmasamuccaya
6. The abhisaṃdhi section in the Abhidharmasamuccaya
Chapter 3
ションヌ・チャンチュプ『阿毘達磨集論』註釈の思想史上の位置づけ●彭毛才旦
0. 問題の所在
1. ションヌ・チャンチュプによる中観派分類
2. チョムデン・リクレル等による中観派分類
3. チョムデン・リクレルとゲルク派の相違
4. シャーキャ・チョクデンによる中観派分類
5. 結論
Chapter 4
『阿毘達磨集論』の梵文写本について●李 学竹
1. Abhidharmasamuccaya の断片写本
2. Abhidharmasamuccayavyākhyā写本A
3. Abhidharmasamuccayavyākhyā写本B
4. おわりに
Chapter 5
チベット撰述注釈書の構造化記述について──チョムデン・リクレル著『阿毘達磨集論釈・荘厳華』に対して──●崔 境眞
1. チョムデン・リクレルと『阿毘達磨集論釈・荘厳華』について
2. XML による構造化記述
3.『阿毘達磨集論釈・荘厳華』に対する XML マークアップの具体例
4. 終わりに
Chapter 6
チベット仏教文献研究の覚書──源流・内在・幻出──●根本裕史
1. 何のためにチベット仏教文献を学ぶのか
2. チベット語訳の諸問題
3. チベット仏教文献の価値
4. おわりに