法政大学江戸東京研究センター・小林ふみ子・中丸宣明編『好古趣味の歴史 江戸東京からたどる』(文学通信)

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5月下旬の刊行予定です。

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法政大学江戸東京研究センター・小林ふみ子・中丸宣明編
『好古趣味の歴史 江戸東京からたどる』(文学通信)
ISBN978-4-909658-29-6 C0095
A5判・並製・272頁
定価:本体2,800円(税別)


人はなぜ過去の記録を調べ、探し、記録するのか。
江戸の人たちは、地名や風俗、慣習、年中行事まで、往事の事物を探究し、ひと昔前の江戸の土地と暮らしのすがたを克明に調べあげ、
書き残した。それは何のためか。なぜ人はいにしえのものに惹かれてしまうのか。
アイデンティティの確認として、作品世界の羅針盤として、新たな創作の起源として、過去の記憶は人々の生活に息づくようになるのである。
江戸、そして東京から好古の営みの歴史を繙いていく書。

執筆は、小林ふみ子・中丸宣明・神田正行・出口智之・大塚美保・真島 望・佐藤 悟・金 美眞・有澤知世・阿美古理恵・稲葉有祐・多田蔵人・合山林太郎・関口雄士。

【災害の多い日本列島で、この都市は、大地震や洪水、高潮にたびたび見舞われただけでなく、海外の大都市に較べると、木造建築が圧倒的多数を占めたために火災に対しても脆弱であった。しかも、さきに記したように歴史が比較的浅く、残すべきモノゴトが数百年のうちに集中していた。そのなかで記録、記憶・口碑、また残された事物を最大限に活用し、風俗や慣習に至るまですべてを書きとめ、あるいは再現しようとし、またそれらを生かして新たな世界を築きあげようとした、それが江戸東京流の記憶のとどめ方であったのではないか─そんな見通しのもとに本書を読みすすめていただきたい】はじめにより





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【編者紹介】

法政大学江戸東京研究センター

https://edotokyo.hosei.ac.jp/

小林ふみ子(こばやし・ふみこ)

法政大学教授。専門は日本近世文学。
主著に『へんちくりん江戸挿絵本』(集英社インターナショナル、2019年)、『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』(岩波書店、2014年)、近年の論文に「文政期前後の風景画入狂歌本の出版とその改題・再印─浮世絵風景版画流行の前史として」(『浮世絵芸術』179号、2020年)、「狂歌に文芸性はあるのか」(『古典文学の常識を疑うⅡ』勉誠出版、2019年)がある。

中丸宣明(なかまる・のぶあき)

法政大学教授。専門は日本近代文学。
共著に『コレクション現代詩』(おうふう、1990年)、校注に『政治小説集 2(新日本古典文学大系 明治編 17)』(岩波書店、2006年)、同第3巻(岩波書店、2013年)、『円朝全集』第11巻(岩波書店、2014年)、編著に『コレクション・モダン都市文化』第67巻(ゆまに書房、2011年)がある。

【目次】

はじめに ●小林ふみ子

(Ⅰ 知識を集め地理をひもとく)

Chapter1
江戸の歴史のたどり方─考証の先達、瀬名貞雄・大久保忠寄と大田南畝
●小林ふみ子
1 考証随筆の成立まで
2 文事の旗本たち
3 瀬名貞雄・大久保忠寄の交渉と考証、そして南畝
4 『新編江戸志』増補改訂作業
5 山東京伝の考証へ
6 おわりに

Chapter2
「長禄江戸図」と馬琴の地理考証─「神宮」をめぐる混乱
●神田正行
1 はじめに
2 「長禄図」の素性と伝播
3 『八犬伝』の「かには」
4 おわりに

Column
江戸回顧の時代と文学者の地誌─幸田露伴「水の東京」の試み
●出口智之

Chapter3
鷗外歴史文学の〈江戸〉像─時間・空間の語りかたに注目して
●大塚美保
1 はじめに
2 時間・空間の特徴的な語りかた
3 存在証明としての時間・空間
4 時が積み重なる場所─結びにかえて

(Ⅱ 風俗や慣習の由来を探る)

Chapter4
新興都市江戸の事物起源辞典─菊岡沾凉『本朝世事談綺』考
●真島 望
1 はじめに
2 『本朝世事談綺』について
3 典拠と利用態度
4 「江戸」へのまなざしとその影響
5 おわりに

Chapter5
七兵衛という飴売り─柳亭種彦の考証随筆『還魂紙料』
●佐藤 悟
1 柳亭種彦
2 千年飴と千歳飴
3 浮世草子に見る千年飴
4 俳諧に見る千年飴
5 歌舞伎に見る千年飴
6 浄瑠璃に見る千年飴
7 若千年は七兵衛か

Chapter6
失われた端午の節句「印地打」─日本人と朝鮮人のまなざしから考証する
●金 美眞
1 はじめに
2 朝鮮通信使と日本の年中行事
3 日本人が見た端午の節句─「印地打」から「菖蒲打」への推移
4 朝鮮人が見た〈江戸〉の端午の節句─「印地打」をめぐって
5 おわりに

Column
風俗を記録する意図─雑芸能者たちの〈江戸〉
●小林ふみ子

(Ⅲ 盛時の歌舞伎と遊里の面影を求めて)

Chapter7
古画を模す─京伝の草双紙と元禄歌舞伎
●有澤知世
1 はじめに
2 元禄歌舞伎への関心
3 『松梅竹取談』における考証
4 『松梅竹取談』における古画とデザイン
5 鳥居派の古画を模す
6 おわりに

Chapter8
古画の収集と考証─京伝読本の発想源
●阿美古理恵
1 はじめに
2 京伝による師宣と一蝶の古画考証
3 竹垣柳塘と師宣、一蝶、元祖市川団十郎
4 英派の再興
5 京伝没後の不破名古屋考証
6 おわりに

Column
其角の記憶・追憶・江戸残照
●稲葉有祐

(Ⅳ 響き続ける江戸)

Chapter9
受け継がれた江戸─高畠藍泉の考証随筆
●中丸宣明
1 はじめに
2 藍泉・二世柳亭種彦の位置
3 考証随筆と藍泉
4 おわりに

Chapter10
「趣味」(Taste) とは何か─近代の「好古」
●多田蔵人
1 「趣味」の登場
2 趣味の変容

Column
趣味を持ちにくい町
●多田蔵人

Chapter11
江戸漢詩の名所詠と永井荷風
●合山林太郎
1 はじめに
2 江戸の名所詠(一)─服部南郭の隅田川の詩
3 江戸の名所詠(二)─大沼枕山の上野を詠った詩
4 荷風の随筆と江戸漢詩
5 『下谷叢話』における考証と江戸漢詩
6 おわりに

Chapter12
江戸をつくりあげた石川淳
●関口雄士
1 原体験としての〈江戸〉
2 独自の〈江戸〉の発見と〈江戸留学〉
3 戦後の〈随筆〉という方法─永井荷風への認識を通して
4 〈江戸〉をつくるということ

あとがき●中丸宣明

好古趣味人必見! 江戸を知る文献22点●小林ふみ子
【江戸市中を対象とする主要な地誌や地理考証にかかわる記述のある書物について略述】

執筆者一覧


【執筆者一覧】

[編著者]

小林ふみ子(こばやし・ふみこ)
中丸宣明(なかまる・のぶあき)

[執筆者](掲載順) ①所属 ②専門 ③著作

神田正行(かんだ・まさゆき) 
①明治大学准教授 ②日本近世文学(特に曲亭馬琴)
③「『そのゝゆき』後篇の構想」(『読本研究新集』9・10、二〇一七年六月・二〇一八年六月)、「文渓堂丁子屋平兵衛と『八犬伝』─板株の確立まで─」(『国語と国文学』91─5、二〇一四年五月)、『馬琴と書物─伝奇世界の底流─』(二〇一一年、八木書店)

出口智之(でぐち・ともゆき)
①東京大学大学院准教授 ②近代の日本文学・美術
③「紀行「易心後語」に見る幸田露伴の教養の根柢─古人に向きあうということ」(鈴木健一編『明治の教養─変容する〈和〉〈漢〉〈洋〉』、勉誠出版、二〇二〇年)、「第二期『新小説』における文学と絵画─口絵・挿絵の戦略と羈軛─」(『比較文学研究』105、東大比較文学会、二〇一九年十二月)、「挿絵無用論と明治中期の絵入り新聞小説─饗庭篁村「小町娘」・尾崎紅葉「笛吹川」「青葡萄」の挿絵─」(『日本文学研究ジャーナル』9、古典ライブラリー、二〇一九年三月)

大塚美保(おおつか・みほ) 
①聖心女子大学教授 ②近代日本文学
③文京区立森鷗外記念館編集・発行『日本からの手紙 文京区立森鷗外記念館所蔵 滞独時代森鷗外宛 1884-1886』(共著、二〇一八年)、「東京を駆けめぐる女子学習者─一八八〇年代の小金井喜美子─」(『文学』17─6、二〇一六年十一月)、『鷗外を読み拓く』(朝文社、二〇〇二年)

真島 望(ましま・のぞむ) 
①成城大学非常勤講師 ②近世文学(地誌・説話)
③「名所絵本『東国名勝志』と元禄地誌」(『国際日本学』16、法政大学国際日本学研究所、二〇一九年三月)、「再生される地誌─『東国名勝志』とその依拠資料をめぐって─」(『国語国文』87─4、二〇一八年四月)、「幕府御大工頭鈴木長頼の文事」(『近世文藝』105、二〇一七年一月)

佐藤 悟(さとう・さとる) 
①実践女子大学教授 ②日本近世文学
③「『鹿驚集』をめぐる諸問題」(『近世文藝』108、二〇一八年七月)、「近世文学と大津絵」(『美術フォーラム21』36、二〇一七年)、「十九世紀江戸文学における作者と絵師、版元の関係」(『古典文学の常識を疑う』勉誠出版、二〇一七年)

金 美眞(きむ・みじん)
①韓国国立芸術総合学校世界民族舞踊研究所常任研究員
②日本近世文学(柳亭種彦の合巻など)
③『柳亭種彦の合巻の世界─過去を蘇らせる力「考証」─』(若草書房、二〇一七年)、「『偐紫田舎源氏』と『柳亭雑集』」(『近世文芸』102、二〇一五年七月)、「種彦合巻『鯨帯博多合三国』の創作技法─「鯨帯」を手がかりに─」(『国語と国文学』92─7、二〇一五年七月)

有澤知世(ありさわ・ともよ)
①国文学研究資料館特任助教 ②日本近世文学(特に山東京伝)
③「山東京伝の考証と菅原洞斎─『画師姓名冠字類鈔』に見る考証趣味のネットワーク」(『国語国文』86─11、二〇一七年十一月)、「京伝作品における異国意匠の取材源─京伝の交遊に注目して─」(『近世文藝』104、二〇一六年七月)

阿美古理恵(あびこ・りえ) 
①国際浮世絵学会事務局 ②日本近世絵画史
③『菱川師宣─古風と当風を描く絵師─』(藝華書院、二〇二〇年)、「菱川師宣の源氏絵─浮世絵師の大和絵史観に注目して」(『岩佐又兵衛と源氏絵─〈古典〉への挑戦』展覧会図録、出光美術館、二〇一七年)、「菱川師宣の狩野派学習について─「雑画巻」を中心に」(『美術史』174、美術史学会、二〇一三年三月)

稲葉有祐(いなば・ゆうすけ)
①和光大学准教授 ②日本近世文学、俳文学
③『宝井其角と都会派俳諧』(笠間書院、二〇一八年)、「江戸座俳諧と角館─佐竹北家、明和安永期の活動から─」(『日本文学研究ジャーナル』8、二〇一八年十二月)

多田蔵人(ただ・くらひと)
①鹿児島大学准教授 ②日本近世文学・日本近代文学
③『永井荷風』(二〇一七年、東京大学出版会)、「蒐集家の表現─宮崎三昧『辛亥日誌』」(「日本近代文学館年誌資料探索」二〇一九年三月)、「永井荷風のノート─『二人艶歌師』と『渡鳥いつかへる』の推稿」(『新潮』115─11、二〇一八年十一月)

合山林太郎(ごうやま・りんたろう)
①慶應義塾大学准教授 ②近世・近代日本漢文学
③『幕末・明治期における日本漢詩文の研究』(和泉書院、二〇一四年二月)、「加藤王香編『文政十七家絶句』の成立過程とその後世への影響」(『藝文研究』117、二〇一九年十二月)、「西郷隆盛の漢詩と明治初期の詞華集」(『アジア遊学・文化装置としての日本漢文学』229・二〇一九年一月)

関口雄士(せきぐち・たかし) 
①法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻博士後期課程
②石川淳を中心に、戦後派文学およびそれらに関連した近現代文学
③「石川淳「履霜」ノート─戦時下における小説の第一歩」9(『日本文学論叢』44、法政大学大学院日本文学専攻委員会、二〇一五年三月)