横道 誠『村上春樹研究 サンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究の世界文学』(文学通信)

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2023年9月下旬刊行予定です。

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横道 誠『村上春樹研究: サンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究の世界文学』(文学通信)
ISBN978-4-86766-018-8 C0095
A5判・並製・400頁
定価:本体3,000円(税別)

新しい村上春樹をめぐる文学史のために。
旧来の作品研究を大きく乗りこえていくにはどうしたらよいか。
本書は村上文学をサンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究からなる、独特の世界文学的構造体として提示する。

先行する作家との関係性、村上自身の渡独体験や作品の外国語訳・映像化作品、さらには「当事者批評」「健跡学」などの視点を導入することで、どのような風景が見えてくるのか。村上作品を取りまく文学的諸現象のポリフォニーは、果たしてどのように聞きとれるのか。刺激的な書。

【村上と世界中の読者を結ぶ媒質は、どのようなものなのだろうか。そこには村上作品の翻訳だけでなく、映像化作品や、村上の影響を受けた創作物、さらには村上に影響を与えた創作物、さらには村上とその作品に関する批評や研究も含まれるというのが、筆者の考え方だ。そして、その全体が村上春樹の作品を世界文学にしているという見解を提示する。】......「序」より

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【著者紹介】

横道 誠(ヨコミチ マコト)

1979年大阪市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学。博士(文学)(京都大学、2023年)。専門は文学・当事者研究。現在、京都府立大学文学部准教授。著書に、『みんな水の中─「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』(医学書院)、『唯が行く!─当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』(金剛出版)、『イスタンブールで青に溺れる─発達障害者の世界周遊記』(文藝春秋)、『発達界隈通信─ぼくたちは障害と脳の多様性を生きてます』(教育評論社)、『ある大学教員の日常と非日常─障害者モード、コロナ禍、ウクライナ侵攻』(晶文社)、『ひとつにならない─発達障害者がセックスについて語ること』(イースト・プレス)、『グリム兄弟とその学問的後継者たち─神話に魂を奪われて』(ミネルヴァ書房)、編著に『みんなの宗教2世問題』(晶文社)、『信仰から解放されない子どもたち─#宗教2世に信教の自由を』(明石書店)がある。

【目次】

序 ポリフォニーを志向する研究書
一 井戸と地下二階
二 サンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究
三 目標としてのポリフォニー
四 本書の構成
おわりに

Ⅰ 「大江・筒井・村上」が結ぶ星座

第一章 大江健三郎の「ファン」としての村上春樹
一 大江派と村上派
二 「大江か村上」から「大江と村上」へ
三 大江と新人時代の村上
四 村上春樹が大江健三郎をサンプリングする―『万延元年のフットボール』
五 大江のその他の作品への視線
六 死者と獣―「世界の終り」と「街と、その不確かな壁」
七 死者と獣―大江の「死者の奢り」とピエール・ガスカール
八 「穴ぼこ」の継承
九 「ちょっと無防備すぎるところがある」
一〇 「あとは大江健三郎とかあのへんがはやりでしょ」
一一 亀裂
一二 分水嶺としての一九八七年?
一三 「十代のころ、大江健三郎さんがスターだった」
一四 「そんなことも気になった」
一五 真剣なパズルゲーム
付録
追記

第二章 村上が「好きな作家」としての筒井康隆
一 筒井康隆と大江健三郎
二 文学的トポス「時空を超える精液」
三 208と209
四  青山、世界の終り、あちら側とこちら側
五 火星とニーチェ
六 壁抜け、同時存在、マルセル・エイメ
七 思想としてのサンプリング
八 筒井のフットワーク
おわりに
補説

Ⅱ  海外体験と外国語訳

第三章 渡独体験を考える――「三つのドイツ幻想」と「日常的ドイツの冒険」
一 村上の精神形成とドイツ
二 最初期の海外体験、行き先はドイツ
三 ハンブルクの性風俗
四 ハンブルクの大麻の夜
五 ベルリンとナチスの傷跡
六  空中庭園と世界の終り
おわりに

第四章 『国境の南、太陽の西』とその英訳、新旧ドイツ語訳
一 はじめに
二 作品に関する基本事項
三 ドイツでの論争
四 性描写と死の世界
五 「損なう」と「損なわれる」
おわりに、あるいは装丁
追記

第五章 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の八つの翻訳
(英訳、フランス語訳、ふたつの中国語訳、ドイツ語訳、イタリア語訳、ロシア語訳、スペイン語訳)

一 日本語原典
二 諸外国語訳
三 主語と時制
四 バーンバウム印の英訳
五 オープンエンディングの縮減
六 冗長性、ユーモア、シュールレアリスム
七 ホットドッグとストロベリー・ケーキ―英訳とほかの外国語訳
八 アメリカ人に向けた特別な配慮
おわりに―誤訳的なムラカミエスク・ワールド
追記

Ⅲ  音楽・映画・ポップカルチャー

第六章 音楽を奏でる小説――『ノルウェイの森』を中心とした諸考察
一 リズム、ハーモニー、インプロヴィゼーション
二 藤本和子訳ブローティガン、文学的トポス「おいしそうなレシピ」、ジャズ的アドリブ
三 『ノルウェイの森』の結末部
四 ブライアン・ウィルソンと村上春樹
五 村上と日本のロックやポップスとの距離感
おわりに

補論 村上春樹と「脳の多様性」――当事者批評と健跡学へ
一 村上春樹と精神医学
二 発達障害とは何か
三 先行する議論について
四 発達障害をめぐる村上の発言
五 診断基準
六 当事者批評の実践(1)―コミュニケーション
六・一 ディスコミュニケーション
六・二 デタッチメント
六・三 シンプル志向
六・四 ゼロ百思考
六・五 独特すぎるユーモアへの感性
七 当事者批評の実践(2)―反復性
七・一 凝り性
七・二 自己流の徹底
七・三 物語の神話的類型
七・四 マラソン
七・五 収集癖
七・六 オウム返し
七・七 感覚の解像度の高さ
八 当事者批評の実践(3)―解離
八・一 フラッシュバック
八・二 あちらの世界とこちらの世界
八・三 イマジナリーフレンドと分身
九 自閉スペクトラム症グレーゾーンと健跡学
おわりに

第七章 自閉スペクトラム症的定型発達的
――映画『バーニング』と『ドライブ・マイ・カー』について

一 村上好みの映画
二 アダプテーションと病者の光学
三 自閉スペクトラム症的な『バーニング』
四 定型発達的な『ドライブ・マイ・カー』
おわりに

第八章 ポップカルチャーの文学的トポス
一 文学的トポスとミメーシス
二 村上のマンガ受容、「ガロ系」作家としての村上、わたせせいぞう
三 文学的トポス「妹」
四 「サブカルチャー」と「オタク文化」
五 「終わる世界」と「世界の果て」から「セカイ系」へ
六 ムラカミエスク
エヴァっぽさ―セカイ系とゼロ年代批評
七 文学的トポス「世界の終り」
八 自閉スペクトラム症的
思春期的な想像力
おわりに

結語 ポリフォニーを聴くこと

あとがき
文献表