国立歴史民俗博物館・箱﨑真隆・橋本雄太編『REKIHAKU 特集・推定不能 炭素14研究がとらえた未知の巨大太陽フレアの謎』(国立歴史民俗博物館)

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6月下旬刊行予定です。

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国立歴史民俗博物館・箱崎真隆・橋本雄太編
『REKIHAKU 特集・推定不能 炭素14研究がとらえた未知の巨大太陽フレアの謎』(国立歴史民俗博物館)
ISBN978-4-86766-014-0 C0021
A5判・並製・112頁・フルカラー
定価:本体1,091円(税別)
発行 国立歴史民俗博物館
発売・編集協力 文学通信

国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

西暦775年、「推定不能」の太陽の巨大フレアがおきていたかもしれない――。
775年、確実に起きたことは、地球に入ってきた宇宙線の量が急増したことである。その原因は何か。現在、最も有力視されている原因は、太陽の巨大フレアである。それは観測史上最大のフレアの数十倍から数百倍の可能性もある。
仮に同規模の巨大フレアが現代で起これば、天体衝突や破局噴火、巨大地震、巨大津波にも匹敵する激甚災害が世界規模で発生する恐れがある。
果たしてその予測はできるのか。
それを知るためには、樹木年輪に残された炭素14を、何百年、何千年とさかのぼって、精密に調べていくほか手段はない。
今回の特集では、日本で行われている最新の炭素14研究、特に極端宇宙気象と高精度年代測定について詳しく紹介。入門から研究の現在、その問題点まで含め丁寧に解説する。特集執筆は、箱﨑真隆/三宅芙沙/早川尚志/山田圭太郎/工藤雄一郎/坂本 稔/小林謙一。

特集以外の記事も、好評連載・鷹取ゆう「ようこそ! サクラ歴史民俗博物館」、石出奈々子のれきはく!探検ほか、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。
歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

特集趣意文
 西暦七七五年に、何が起きたのか。
 名古屋大学三宅芙沙氏は、樹齢一七〇〇年以上の屋久杉の炭素14を調べていた。そのなかで、西暦七七五年の年輪において平年の二〇倍もの濃度急増を発見した。地球に降りそそぐ「宇宙線」と大気中の「窒素」が反応して生まれる炭素14は、多少の変動はあるものの、ほぼ一定の割合で生み出されてきた。七七五年に確実に起きたことは、地球に入ってきた宇宙線の量が急増したことである。では、その原因は何か。現在、最も有力視されている原因は、太陽の巨大フレアである。
 そのフレアの規模は「推定不能」。観測史上最大のフレアの数十倍から数百倍の可能性もあるという。
 近年、太陽フレアは大規模停電や通信障害を引き起こす原因として注目され、その対策が各国で議論されている。仮に七七五年と同じ規模の巨大フレアが、電子機器に支えられている現代で起これば、天体衝突や破局噴火、巨大地震、巨大津波にも匹敵する激甚災害が世界規模で発生する恐れがある。
 では、そのようなフレアは、これまで何度起きてきたのか。太陽がどういう状態のときに起こるのか。周期性はあるのか。前触れはあるのか。予測はできるのか。それを知るには、樹木年輪に残された炭素14を、何百年、何千年とさかのぼって、精密に調べていくほかに手段がない。
 国立歴史民俗博物館は、東アジア有数の研究拠点として、炭素14研究を進めてきた。炭素14年代法によって、さまざまな考古遺物や古建築に精密な年代を与えてきたほか、東アジアで初めて北半球標準暦年較正曲線「IntCal」(イントカル)に樹木年輪の炭素14データを採用させ、世界の考古学、歴史学、地球惑星科学に影響力を持つに至った。現在、これまでの研究で集めてきた古い木材やそこから得られた炭素14データをさまざまな研究者と共有し、太陽活動を一万年にわたって復元しようと試みている。
 本特集では、日本で行われている最新の炭素14研究、特に極端宇宙気象と高精度年代測定について詳しく紹介し、これからの研究の方向性について展望する。(箱﨑真隆)





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【編者紹介】

国立歴史民俗博物館(こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

箱崎真隆(はこざき・まさたか)
HAKOZAKI Masataka 国立歴史民俗博物館准教授(年輪年代学、文化財科学) 【著書・論文】箱﨑真隆ほか「第九章 酸素同位体比年輪年代法の開発」「第十章 酸素同位体比クロノロジーの時空間的拡大と応用」(中塚武監修『気候変動から読みなおす日本史』2 古気候の復元と年代論の構築、臨川書店、2021年)、Hakozaki M, Miyake F, Nakamura T, Kimura K, Masuda K, Okuno M, Verification of the annual dating of the 10th century Baitoushan Volcano eruption based on an AD 774-775 carbon-14 spike, Radiocarbon, 60(1), pp261-268, (2018) 【趣味・特技】筋トレ、カメラ

橋本雄太(はしもと・ゆうた)
HASHIMOTO Yuta 国立歴史民俗博物館准教授(人文情報学、科学史) 【著書・論文】「『みんなで翻刻』の運用成果と参加動向の報告」(『人文科学とコンピュータシンポジウム2020論文集』2020年)、「AI文字認識とクラウドソーシングを組み合わせた歴史資料の大規模テキスト化」(『人工知能学会誌』36-6、2020年) 【趣味・特技】海釣り、ランニング 【twitter】@yuta1984

【目次】

特集・推定不能 炭素14研究がとらえた未知の巨大太陽フレアの謎

入門編
炭素14研究から何がわかるのか
原理と歴史と地球と太陽

(箱﨑真隆、聞き手:文学通信)

1 過去の太陽活動をどうとらえるか
極端宇宙天気と炭素14――過去1万年間の太陽活動

(三宅芙沙)

2 過去の極端災害をどうとらえるか●COLUMN
極端災害の年代決定に炭素14スパイクを応用する

(箱﨑真隆)

3 古文書から過去の宇宙気象をとらえる
歴史文献から探る過去の激甚太陽嵐

(早川尚志)

4 過去五万年にわたる炭素14データ
炭素14年代法の世界基準――水月湖の「年縞」とIntCal

(山田圭太郎)

5 遺跡報告書の炭素14年代をまとめる●COLUMN
遺跡発掘調査報告書放射性炭素年代測定データベース

(工藤雄一郎)

6 国際標準は「地域差」が指摘されるようになっている
日本の年輪があぶり出す「不都合な真実」

(坂本 稔)

7 新たなステージへ向けて●COLUMN
炭素14年代研究のこれまで、と、これから

(小林謙一)

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たかが歴史 されど歴史
都城の成立――その成立によって何が起こったのか
(林部 均)

博物館マンガ 第8回
ようこそ! サクラ歴史民俗博物館
資料ってどこから来るの?
(鷹取ゆう)

石出奈々子のれきはく!探検 第8回
神様の島はハードなくらいがちょうどいい
(石出奈々子)

フィールド紀行
移住持込資料を守り、伝える

北海道開拓移住の記憶と記録  
第2回●〝受け継がれる〟記憶とイメージ
――絵画・祭礼・モニュメント―
(工藤航平)

誌上博物館 歴博のイッピン
なぜここにあるのか
法隆寺建造物古材の謎
(坂本 稔)

歴史研究フロントライン
現地調査から探る
中世武士の地域支配
(田中大喜)

EXHIBITION 歴博への招待状
特集展示
「江戸の妖怪絵巻」
(大久保純一)

SPOTLIGHT 若手研究者たちの挑戦
中世地方寺院の経済活動を探る(小野塚航一)

歴史デジタルアーカイブ事始め 第7回
なんじょうデジタルアーカイブ
(橋本雄太)

くらしの植物苑歳時記
特別企画「伝統の朝顔」のご案内

博物館のある街
葛飾区郷土と天文の博物館
(永越信吾)

くらしの由来記
仏壇(山田慎也)

研究のひとしずく
科学の目でみる歴史資料 

第1回●馬形帯鉤の真贋
(小瀬戸恵美)

Kaleidoscope of History
Collection of Historical
Material on Shogakai
(大久保純一)

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