野田研一・後藤隆基・山田悠介編『石牟礼道子と〈古典〉の水脈――他者の声が響く』(文学通信)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

5月下旬刊行予定です。

9784867660089.jpg

野田研一・後藤隆基・山田悠介編『石牟礼道子と〈古典〉の水脈――他者の声が響く』(文学通信)
ISBN978-4-86766-008-9 C0095
A5判型・並製・306頁
定価:本体2,800円(税別)


不知火海とともに生きた詩人・作家、石牟礼道子(1927~2018)。
『苦海浄土』をはじめとする彼女の作品に、浄瑠璃、説経節、近代以前の地誌や紀行文など、広く〈古典〉と呼びうるジャンルやテクストからの影響や引用が認められることはつとに知られている。
しかしながら、その実態はいまだ明らかにされていない。

石牟礼道子は、〈古典〉をいかに受容し、自らの文学をものしたのか。
石牟礼の思想と文学は、〈いま〉を生きる表現者たちにどのような影響を与えたのか。
日本文学・民俗学・歴史学・演劇学・環境文学を専門とする研究者と、詩・音楽・能楽・染織・演劇に携わる表現者が、その答を探る。

論文、エッセイ、インタビューに加え、新作能『不知火』初演時の「演出ノート」も再録!

《執筆者》
山田 悠介/赤坂 憲雄/小峯 和明/野田 研一/後藤 隆基/小池 昌代/寺尾 紗穂/荻久保 和明/安田 登/志村 昌司/笠井 賢一/北條 勝貴/樋口 大祐/粂 汐里(執筆順)


【石牟礼道子の声の向こうに、多種多様な別の〈声〉、他者の〈声〉が重層している。そのように累積している他者の〈声〉が、その作品のなかから聞こえてくる。物語のかたちをして。まさに、石牟礼文学とは他者を包摂・内包する文学であり、他者をめぐる想像力の世界なのである。(本書「おわりに」より)】





PayPalでお支払い(各種クレジットカード対応)
入金を確認次第、すぐに発送(送料無料)。
案内をメールでお送りいたします。




b1.jpg

b2.jpg 

b3.gif

b4.gif

【編者紹介】

野田 研一(のだ・けんいち)
立教大学名誉教授。1950年福岡県生まれ。専門はアメリカ文学/文化、環境文学。著書に『失われるのは、ぼくらのほうだ―自然・沈黙・他者』(水声社、2016)、論文に"The Logic of the Glance: Non-Perspectival Literary Landscape in Wildfires by Ooka Shohei," in Embodied Memories, Embedded Healing: New Ecological Perspectives from East Asia (Lexington Books, 2021)、「石牟礼道子の銀河系―「直線の覇権」(インゴルド)に抗して」(『たぐい』Vol.4、亜紀書房、2021)など。

後藤 隆基 (ごとう・りゅうき)
立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター助教。1981年静岡県生まれ。専門は近現代日本演劇・文学・文化。著書に『高安月郊研究―明治期京阪演劇の革新者』(晃洋書房、2018)、編著に『ロスト・イン・パンデミック―失われた演劇と新たな表現の地平』(春陽堂書店、2021)、『小劇場演劇とは何か』(ひつじ書房、2022)など。


山田 悠介 (やまだ・ゆうすけ)
大東文化大学文学部日本文学科講師。1984年大阪府生まれ。専門は環境文学。著書に『反復のレトリック―梨木香歩と石牟礼道子と』(水声社、2018)、論文に「「声音」を読む―石牟礼道子『水はみどろの宮』とその周辺」(『石牟礼道子を読む2―世界と文学を問う』東京大学東アジア藝文書院、2022)など。


【執筆者】

山田 悠介/赤坂 憲雄/小峯 和明/野田 研一/後藤 隆基/小池 昌代/寺尾 紗穂/荻久保 和明/安田 登/志村 昌司/笠井 賢一/北條 勝貴/樋口 大祐/粂 汐里(執筆順)

【目次】 

口絵

はじめに 石牟礼道子の水脈――受容・変奏・応答
山田 悠介 

第一部 文字と声のあいだ

1 石牟礼道子、または浄瑠璃のごときもの
赤坂 憲雄
一 往生できない魂魄が移り住んだ、という/二 心のなかの声がそのように聴こえた/三 それは怪談でも物語でも、私小説でもなかった/四 自分らのことを、口説きもどきに語られて/五 夕闇の花吹雪じゃ、魂ば舞わせ


2 天草と水俣をつなぐ異界の語り部――『流民の都』『椿の海の記』を読み直す
小峯 和明
一 『苦海浄土』との出会い/二 天草から水俣へ/三 「弥陀の利剣」/四 「今昔物語めく月」/五 漂泊遊行と語り芸/六 「大廻りの塘」/七 「自分を焚く」/八 『梁塵秘抄』の世界から創作能「不知火」へ/九 天草・島原一揆と『春の城』


3 「祖型」としての景物――『苦海浄土』における風景の構造
野田 研一
一 故郷の心/二 「祖型」としての景物/三 心眼の原理/四 描写と語り︱〈視点〉論/五 おわりに 声の氾濫


4 記録と虚構のあわいをただよう非人御前――石牟礼道子「詩篇 苦海浄土」とテレビドキュメンタリー『苦海浄土』
後藤 隆基
一 水俣病の映像表象と『苦海浄土』/二 ドキュメンタリーを演じる非人御前/三 非人御前の位置/四 足尾銅山鉱毒事件の残影/五 結節点としての「詩篇 苦海浄土」

第二部 呼応する表現

5 三つの詩型をめぐって
小池 昌代

6 石牟礼道子を歌う
寺尾 紗穂

7 「しゅうりりえんえん」を作曲して
荻久保 和明

8 咲いと敗者の芸能
安田 登

9 魂の秘花――新作能「沖宮」における言葉と色
志村 昌司

10 声にされることを待っている――演出家がみた石牟礼文学のエッセンス
笠井 賢一

付録 『不知火』演出ノート
笠井 賢一

第三部 〈古典〉への遡行

11 「穴のあいた太鼓」考――石牟礼道子を手がかりに未発の歴史を紡ぐ
北條 勝貴
一 はじめに --太鼓の亀裂、自己/世界の亀裂--/二 太鼓の原義 --東アジアのなかの水俣において--/三 〈トントン〉という音像の複層性 --発する者/聴く者と音のイメージ--/四 鼓をもて汀に舞う女 --暴かれた湖底への怒り--/五 おわりに --破れ太鼓に満ちる世界--


12 『西南役伝説』における民衆史的歴史語りと非定住民の記憶

樋口 大祐
一 はじめに/二 『西南役伝説』の成立過程について/三 第一のタイプ(西南戦争の記憶と伝承)およびその先行ジャンルについて/四 非定住民の記憶、および先行ジャンルについて

13 石牟礼道子と説経節
粂 汐里
一 はじめに/二 説経節とは何か/三 石牟礼作品と説経節の類似性/四 戦後の説経節研究--一九七〇年代におけるまなざし/五 石牟礼道子と郷土ゆかりの芸能、民話、紀行文--創作の原動力/六 おわりに

14 受容と創出の物語――石牟礼道子『椿の海の記』の〈変身〉譚をめぐって
山田 悠介
一 はじめに/二 『椿の海の記』と「葛の葉」のあいだ/三 「記録」としての『椿の海の記』/四 おわりに

おわりに
野田 研一

索引
執筆者プロフィール

【執筆者紹介】(執筆順)

赤坂 憲雄(あかさか・のりお)
学習院大学文学部教授。1953年東京都生まれ。専門は民俗学・日本文化論。著書に『異人論序説』(ちくま学芸文庫)、『境界の発生』(講談社学術文庫)、『排除の現象学』『東北学/忘れられた東北』『岡本太郎の見た日本』『象徴天皇という物語』(岩波現代文庫)、『武蔵野をよむ』(岩波新書)、『性食考』『ナウシカ考』(岩波書店)など。

小峯 和明(こみね・かずあき)
中国人民大学高端外国専家、立教大学名誉教授。専門は日本古典文学、東アジア比較説話。著書に『説話の森』(岩波現代文庫、1991)、『遣唐使と外交神話―『吉備大臣入唐絵巻』を読む』(集英社新書、2018)、『予言文学の語る中世―聖徳太子未来記と野馬台詩』(吉川弘文館、2019)、編著に『東アジアの仏伝文学』(勉誠出版、2017)、『東アジアに共有される文学世界―東アジアの文学圏』(文学通信、2021)他、多数。

小池 昌代(こいけ・まさよ)
詩人・作家。1959年東京都生まれ。主な著作に、詩集『もっとも官能的な部屋』(書肆山田、1999)、『コルカタ』(思潮社、2010)、『赤牛と質量』(思潮社、2018)、『野笑 Noemi』(澪標、2017)、短編集『黒蜜』(筑摩書房、2010)、『かきがら』(幻戯書房、2020)、『幼年 水の町』(白水社、2017)、『影を歩く』(方丈社、2018)、中・長編に『たまもの』(講談社、2014)、『くたかけ』(鳥影社、2023)。近年は和歌への接近から、『ときめき 百人一首』(河出文庫、2019)など。『通勤電車でよむ詩集』(NHK出版、2019)など、詩のアンソロジー集編纂も多数。

寺尾 紗穂(てらお・さほ)
文筆家・音楽家。1981年東京都生まれ。わらべうたや労働歌などの古謡を探して発信するかたわら、オリジナル曲の創作と演奏、聞き書きやエッセイの文筆活動を続ける。CM(KDDI、JA共済ほか)制作のほか楽曲「魔法みたいに」はNHKドキュメンタリー「Dearにっぽん」主題歌、および高校音楽の教科書(教育芸術社)に掲載。著書に『原発労働者』(講談社現代新書、2015)、『南洋と私』(中公文庫、2019)、『あのころのパラオを探して』(集英社、2017)など。

荻久保 和明(おぎくぼ・かずあき)
東邦音楽大学・東邦音楽短期大学および東邦音楽大学大学院特任教授。1953年埼玉県生まれ。東京芸術大学大学院修了。第45回毎日・NHK音楽コンクール作曲部門第一位。文化庁芸術祭参加作品として委嘱された混声合唱曲「季節へのまなざし」によって、合唱界での知名度が高まり、「縄文」シリーズをはじめとする数多くの作品を作曲。合唱指揮の分野でも、的確な指揮で各方面から高い評価を得ており、数多くの合唱団の客演指揮者を務めている。教育活動でも多くの功績を残し、優秀な門人を多数輩出している。日本の合唱界を代表する合唱作曲家。

安田 登(やすだ・のぼる)
能楽師(ワキ方下掛宝生流)。東京を中心に能の公演に出演。また、神話『イナンナの冥界下り』での欧州公演や、金沢21世紀美術館での『天守物語(泉鏡花)』など能・音楽・朗読を融合させた舞台を数多く創作、出演する。100分de名著『平家物語』、『太平記』講師・朗読。著書多数。関西大学特任教授。

志村 昌司(しむら・しょうじ)
アトリエシムラ代表。アルスシムラ特別講師。1972年京都市生まれ。石牟礼道子原作・新作能「沖宮」プロデュース。著書に『夢もまた青し 志村の色と言葉』(河出書房新社、2019)、『文藝別冊 志村ふくみ』(河出書房新社、2020)、『草木の聲』(京都新聞出版センター、2022)など。

笠井 賢一(かさい・けんいち)
アトリエ花習代表。今尾哲也氏(歌舞伎研究)に師事。歌舞伎俳優八世坂東三津五郎秘書として著作の助手を務める。劇作、演出家として古典と現代をつなぐ演劇活動を、能狂言役者や歌舞伎役者、現代劇の役者たちと続ける。『古事記』から『源氏物語』『平家物語』、近松門左衛門、宮澤賢治、新作能まで幅広く演出。石牟礼道子作品は新作能『不知火』『六道御前』『緑亜紀の蝶』『言魂』『苦海浄土』など。

北條 勝貴(ほうじょう・かつたか)
上智大学教授。専門は東アジア環境文化史、パブリック・ヒストリー。編著に『環境と心性の文化史』上・下(共編著、勉誠出版、2003)、『パブリック・ヒストリー入門─開かれた歴史学への挑戦』(共編著、勉誠出版、2019)、『療法としての歴史〈知〉─いまを診る─』(責任編集、森話社、2020)など。

樋口 大祐(ひぐち・だいすけ)
神戸大学大学院人文学研究科教授。1968年兵庫県生まれ。専門は日本古典文学、海港都市文化研究。著書に『乱世のエクリチュール-転形期の人と文化-』(森話社、2009)、『変貌する清盛-『平家物語』を書きかえる-』(吉川弘文館、2011)、編著に『百花繚乱-ひょうごの多文化共生150年の歩み-』(神戸新聞総合出版センター、2021)、論文に「落城の物語と女性の語り・序論-『おあん物語』『おきく物語』を中心に-」(『国語と国文学』99巻7号、2022.7)など。

粂 汐里(くめ・しおり)
人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員/国文学研究資料館 特任助教。神奈川県藤沢市生まれ。室町時代から江戸時代前期にかけての説話、物語草子、語り物芸能を主な研究テーマとする。著書に『中近世語り物文芸の研究―信仰・絵画・地域伝承―』(三弥井書店、2023)など。