柿本真代『児童雑誌の誕生』(文学通信)
2月下旬の刊行予定です。
柿本真代『児童雑誌の誕生』
ISBN978-4-86766-001-0 C0095
A5判・上製・296頁
定価:本体2,800円(税別)
こうして書物は国境を越え、日本の児童雑誌が生まれた。
近代日本において児童雑誌がどのように生み出されたか、どのような読書文化を形づくってきたのか、歴史的な視座から問いなおす書。
従来の「創造性」や「芸術性」を中心に論じられてきた児童文学史に対して、西洋からのノウハウの習得や、流通構造に着目することで、当時の児童雑誌とその読者のありようを立体的に描く。
キリスト教と教育関係、ふたつのルートから、子どもの読み物が日本に入り、そして翻訳・編集を経て児童雑誌が誕生し、日本に住む子どもたちに届けられ、そして読まれるまでの流れについて解明する。国境を越えて書物がもたらされ、新たな読者集団を形成していく、創造性に富んだ、日本の児童雑誌が生まれるまでのダイナミズムを、あますところなく明らかにする。
『少年園』以前の、いわゆる〈胎動期〉の児童雑誌から本格的に分析する初の書。
児童文学に関心がある人のみならず、書物学・図書館学等、書物に関心がある人、必読です。
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【著者】
柿本真代 (かきもと・まよ)
1986年大阪生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。
日本学術振興会特別研究員、仁愛大学人間生活学部講師を経て、現在京都華頂大学現代家政学部准教授。
論文に、「教育手段としての日記が定着するまで─明治期少年の『日誌』にみる指導と規範」(田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』笠間書院、2017年)、「少年少女雑誌と日記帳─博文館・金港堂・実業之日本社を中心に」(『大阪国際児童文学振興財団研究紀要』34号、2021年3月)、「夏休みの日記の成立と展開―「夏季休暇日誌」から「なつやすみの友」へ」(田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』文学通信、2022年)などがある。
【目次】
序 論
第1節 目的と研究史
第2節 問題の所在
第3節 分析方法
第4節 史料
第5節 構成
第1章 キリスト教伝道と子どもの読み物
第1節 伝道の開始とトラクト
第2節 『ピープ・オブ・デイ』シリーズと日本での受容
第3節 『ピープ・オブ・デイ』の翻訳
第4節 『眞神教暁』の評価
第5節 『ライン・アポン・ライン』の翻訳
第6節 宣教師と日本社会のリテラシー
第2章 児童雑誌の源流----『よろこばしきおとづれ』と日曜学校運動
第1節 『よろこばしきおとづれ』の編集
第2節 『小孩月報』と『よろこばしきおとづれ』
第3節 外国日曜学校協会と雑誌の運営
第4節 比較と特色
第5節 読者と流通
第3章 児童雑誌の誕生----『ちゑのあけぼの』とキリスト教
第1節 『ちゑのあけぼの』の関係者たち
第2節 『ちゑのあけぼの』の創刊の目的
第3節 キリスト教との距離
第4章 児童雑誌の展開----『少年園』と西洋文化
第1節 『少年園』と『セント・ニコラス』
第2節 日本における『セント・ニコラス』の受容
第3節 山縣悌三郎の来歴と洋書の受容
第4節 Fumio Yamagataの投稿と皇太子
第5節 『少年園』における『セント・ニコラス』の記事
第6節 『少年園』における加筆修正
第7節 『少年園』の西洋観
第8節 児童雑誌と西洋
第5章 児童雑誌の読書実態----『少年園』の書き入れをめぐって
第1節 書き入れの史料的価値
第2節 『少年園』はどう読まれたか
第3節 批判的に読むということ
第4節 すすめられた読書法
第6章 読書する子どものイメージ----二宮金次郎の読書図を手掛かりに
第1節 読書する偉人、二宮金次郎
第2節 二宮金次郎と「負薪読書」図の定着
第3節 江戸時代の「負薪」図、「負薪読書」図
第4節 二宮金次郎=「負薪読書」図に至るまで
第5節 江戸と明治の「負薪」「読書」図
終 章
付 録
『よろこばしきおとづれ』目録
『ちゑのあけぼの』目録
図版目次
索引