小松和彦「日本妖怪文化再考」○講書始におけるご進講の内容(平成31年)を宮内庁が公開

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【日本妖怪文化再考
人間文化研究機構国際日本文化研究センター所長
小松 和彦

物理学者であり優れた随筆家でもあった寺田寅彦は,妖怪について,「人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろな作品の中でも『化け物』などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい」(「化け物の進化」)と述べており,また,日本民俗学の創始者・柳田國男も,「我々の文化閲歴のうちで,これが近年最も閑却せられた部面であり,従ってある民族が新たに自己反省を企つる場合に,特に意外なる多くの暗示を供与する資源でもある」(「妖怪談義」)と述べています。

ところが,この「人間文化の傑作」,「民族の自己反省の資源」と評された「化け物」すなわち「妖怪」の研究は,日本では長らく低調を極めておりました。その理由の一つは,妖怪は人々を惑わし,健全な生活を妨げる迷信であって,科学的・合理的に説明することによって撲滅すべき対象として,長らく印象づけられてきたことにあるようです。実際,近代における妖怪研究の先駆者とも言える哲学者の井上円了は,妖怪の撲滅に精力を注ぎました。したがって,そのような,撲滅された過去の遺物を研究したところで,現代人に益するところは少ないというわけです。しかし,そうなのでしょうか。】
続きはこちらから。宮内庁。
http://www.kunaicho.go.jp/culture/kosyo/kosho-h31.html