「英訳かるた」は可能なのか?国文学研究資料館主催「100人ぐりっ首 英語でとる百人一首」に行ってみた!(2018年7月25日(水)、立川市柴崎学習館講堂・体育館)

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2018年7月25日(水)、立川市柴崎学習館講堂・体育館で行われた、
国文学研究資料館主催「100人ぐりっ首 英語でとる百人一首」に行ってきました。

●当日のイベントチラシはこちら(PDF)
https://www.nijl.ac.jp/pages/nijl/img/introduction/hyakuninissyu_poster.pdf

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当日は立川市内を中心とした中学生・高校生約30名が参加。
国文学研究資料館長・ロバート キャンベル先生の挨拶、
同館教授・神作研一先生による百人一首の歴史の紹介などに耳を傾けていました。

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こちらが大会で使用した、翻訳家・ピーター マクミランさんの英訳かるたです。

●ピーター マクミランさんの公式サイトはこちら
http://peter-macmillan.com/

左側が「読み札」、右側が「取り札」です。
日本のかるたと違い、「取り札」にもイラストが入っています。
歌の内容がわからない外国の方も遊べるように、両方に入れたそうです。
両方にイラストがあるので、貝合わせのように絵合わせゲームにも用いることができます。

また和歌の5・7・5・7・7に合わせ、なるべく5行にしていること、
日本の「取り札」は下2句ですが、英訳かるたは取りやすさを重視して
上記の2番目の札のように、英文の途中から採用したものがあることも特徴的です。

英訳かるた全文は、こちらの書籍に収録されています。
●One Hundred Poets, One Poem Each (Penguin Classics)
https://goo.gl/WSX6Zq

今回の大会で用いたかるた札は手作りのものを使用していましたが、
現在商品化を進めているとのことでした。

この英訳かるたを用いたはじめての大会は2017年に開催されました。
そのときの動画が、Youtubeにアップされています。
【2017年1月13日、ケネディ大使は公邸に64人の高校生を招き、英語に翻訳された百人一首を使った世界で初めてのかるた大会を開催しました。】

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今回の大会はトーナメント戦で全5回。最後に残った2人が勝者となります。
大会ルールを以下に転載します。

100人ぐりっ首 大会ルール

総則
・トーナメント表に従い対戦を行うこと。
・競技は向かい合って座る二人の間で行う。
・札を伏せた状態で各自ランダムに30枚から15枚ずつを選び、縦3枚・横5枚で並べ、札を取り合い、持ち札が先に無くなった方を勝者とする。
・取りやお手付きなどの判定は原則として競技者間で行う。
・各組は試合が終わったら静かに座り、他の組の試合が終了するのを待つこと。

礼節
・競技者は、競技開始時と競技終了時に、対戦者、読手の順で礼をすること。
・競技開始時には「お願いします。」、終了時には「ありがとうございました。」と言いながら礼をすること。

札の配置と暗記
・それぞれの持ち札を、自分の前に縦3枚・横5枚で並べる。
・競技者が札を並べ終わった後、競技を開始する前に3分の暗記時間を取る。暗記時間でどの札がどの位置にあるのかをできるだけ暗記する。
・暗記時間中はなるべく静かに他の者の集中を妨げないように暗記する。

構え
・上の句が読み始められるまでは、手を床に置いておく。自分の札の下段よりも前に出してはならない。

読み
・読手は30枚の内からランダムに選んだ札を1枚ずつ読み上げるが、同じ札を読み上げることはない。
・札を読み上げる際には、上の句を読み、一拍空けてから下の句を間に一呼吸おき2回連続して読む。
・札の整理などで読みを待たせる場合は、二人いる競技者のどちらかが手を挙げ、読手に合図をしなければならない。
・全ての組の試合が終了したら、競技者全員で読手に拍手を送り、試合終了とする。

お手付き
・間違った札を取った場合、お手つきとする。

送り札
・対戦者の陣にある札を取った場合や相手がお手付きをした場合、自陣から1枚相手に送る(送る札を送り札という)。
・どの札を送るのかは、送る側が決める。ただし、送り札から手を放した時点で送り札の変更はできない。

ただし、今回の大会では
・持ち札は10枚、縦2枚・横5枚に並べる
・お手付き(間違った札をとった場合)の送り札はなし
と、変更していました。

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ピーター マクミランさんご自身が読み上げを担当。
上記の動画での読み上げとは違い、和歌を詠むように英訳を朗々と読み上げていました。

2回戦終了時に、「いつ次の札の朗読に移ったのかわかりづらい」
という参加者の声を受けて、合間に「NEXT」と合いの手を入れることになりました。
英訳かるたは競技としては実験段階とのことで、この先ルールも改良されていくと思われます。

最初は緊張気味だった生徒たちも、対戦が進むにつれて打ち解けてきました。
初戦のみ慶應義塾大学かるた会の学生が参加し、デモンストレーションを披露してくれました。
勢いある払い手(札を飛ばす取り方)にどよめきが起きる場面も。
かるた会の皆さんは競技者の立場から、英訳かるたに協力されているそうです。

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大会を終えて、マクミランさんからお話がありました。
英訳かるたを通して望むこととして、
「日本の若い人たちに英語を勉強しながら、日本文化に新たな視点から出会って欲しい」
「百首には日本人の精神性が凝縮されている。外国の人にも楽しみながら日本文化を知って欲しい」
「HAIKUは英語になっているけれど、WAKAはまだ英語になっていない。WAKAを英語の単語にして、外国の人にももっと研究して欲しい」
とのことでした。

来年(2019年)、アイルランドで8つの大学と1つの美術館が参加する
全国大会を予定しているとのこと。他の国にも英訳かるたを広げていき、
いつかオリンピック競技を目指したい!とのお話でした。

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優勝した2人には、マクミランさん直筆の詩が入った扇子が贈呈されました。
2人は中学2年生と3年生。お話を聞いたところ、かるた経験者というわけではなく、
古典や英語が科目として好きということで、参加を希望したそうです。
学校でALTの先生に読み札を録音してもらい、特訓してきたとのことでした。

また日本のかるたの競技者である、慶應義塾大学かるた会の方にもお話を聞きました。
日本のかるたの早く取るコツとして「決まり字」を覚える方法がありますが、
英訳かるたも同様で、上の句と下の句の最初の単語を結びつけて覚えることができるそうです。
実際に参加していた中学生たちも、そのようにして覚えたと話していました。
一生懸命英語を聞き取ろうとするので、リスニングの練習にも使えるとのことでした。

これから英訳かるたの世界がどのように広がっていくのか、楽しみです!

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英訳かるたは、2017年10月より国文学研究資料館で行っている文化庁委託事業
「ないじぇる芸術共創ラボ―アートと翻訳による日本文学探索イニシアティブ―」の一環です。
「ないじぇる芸術共創ラボ」について、詳しくはこちら。
https://www.nijl.ac.jp/pages/nijl/

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・トランプ大統領の就任直前に「百人一首」 ケネディ前大使が込めた思いとは(2017年01月22日、HUFFPOST)
https://www.huffingtonpost.jp/2017/01/21/hundredpoems-in-english_n_14308124.html
・和の文化を"言祝ぐ"人でありたい(2017年03月19日、HUFFPOST)
https://www.huffingtonpost.jp/my-eyes-tokyo/one-hundred-poets-one-poem-each_b_15377912.html

(銀魚)