国立歴史民俗博物館「お化け暦と略縁起-くらしのなかの文字文化-」(第4展示室)(2018年4月24日(火)~ 10月28日(日))

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展示会情報です。

●公式サイトはこちら
http://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/special/index.html#room4

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開催期間 2018年4月24日(火)~ 10月28日(日)
会場 国立歴史民俗博物館 第4展示室 副室
料金 一般420(350)円/高校生・大学生250(200)円
中学生以下無料
(  )内は20名以上の団体
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※毎週土曜日は、高校生の入館が無料です。

・「お化け暦(ごよみ)」「略縁起(りゃくえんぎ)」から人々の生活と文字文化のつながりを紹介!
・明治6年の太陽暦採用前後の暦(こよみ)を並べて見ることができる貴重な機会です!
・略縁起と関連資料から、江戸時代の歴史や文化の表現をとらえ直します!

【太陽暦採用後も旧暦を伝える「お化け暦」や寺社の歴史を記した
パンフレット「略縁起」から人々の生活と文字文化とのつながりを考える!

お化け暦(ごよみ)と聞くと、幽霊や妖怪の出現する場所や日時が記されたカレンダーと期待する人もあるかもしれません。明治時代、それまで使われてきた太陰太陽暦(いわゆる旧暦)が廃止され、新たに太陽暦が採用されると、旧暦に従って営まれていた生業や生活にはかなりの混乱が生じました。旧暦は月の満ち欠け、潮の干満と連動しており、さらに日時方角などの吉凶を示すさまざまな暦注が記されていて人びとはそれを目安に仕事をしたり、冠婚葬祭を営んだりしていましたが、明治6年の太陽暦採用はそうした生活の基盤を根こそぎくつがえしてしまいました。それによって生じた不便さを乗り越えるために、政府から認められない秘密出版で、旧暦を記載した暦が数多く送り出されたのです。秘密出版であるために発行者名に偽名が用いられていることが多く、その責任のありかがぼかしてあったために「お化け」と呼ばれたのです。こうした生活に密着していながら、おおやけには認められなかった暦を取りあげ、そのバリエーションと生活の中での位置づけについて考えてみます。民俗研究は一般に文字記録によらないさまざまな言い伝え、伝承を対象とするものですが、実は暦に代表されるような生活に密着した文字情報と深く結びついていました。そのありさまを、さまざな角度から考えます。

また、そうした生活のなかに伝えられてきた情報が文字に記される機会は江戸時代に既にかなり多くありました。それは、教育の浸透によって多くの人びとが文字を読み書きできたからと考えられます。そうした高い識字率に支えられて多くの出版物が流通したわけですが、分厚い書籍も数多く出版された一方で、一枚刷りの紙片や数ページに過ぎない印刷物もくらしのなかで一定の役割を果たしていました。そうした前近代の文字と生活との接点にあたるものとして次に、略縁起(りゃくえんぎ)という出版物を取りあげます。これは寺社などの由来沿革を文字に記したもので、寺社に詣でる人や開帳などに詰めかける人に配布された一種のパンフレットです。そこにはごく簡単に寺や神社、宝物に関する歴史や説話が紹介されています。絵を伴うものもあり、今日でも有名寺社で同じようなものを手にする機会は多くあります。そしてそこにはわれわれが求める歴史や文化に関する情報がコンパクトに盛りこまれています。江戸時代から盛んに刊行された略縁起を軸に人びとの歴史や文化の知識、さらには神仏などへの期待についての理解を深めます。

今回の展示では、近世期に広く版行された略縁起と、近代に旧暦を温存した「お化け暦(ごよみ)」を中心に、関連する写真パネルなどとともに展示し、生活のなかでの文字文化の位相について考えていきたいと思います。

【展示代表】

小池 淳一(こいけ じゅんいち)(国立歴史民俗博物館 民俗研究系 教授)

専門は民俗学(民俗信仰、口承文芸、民俗学史)、信仰史。

主な研究テーマは、民俗における文字文化の研究、陰陽道の展開過程の研究、地域史における民俗の研究など。1992年、弘前大学講師。同助教授、愛知県立大学助教授を経て2003年に国立歴史民俗博物館研究部民俗研究系助教授に就任、現在は国立歴史民俗博物館 研究部民俗研究系教授、および総合研究大学院大学文化科学研究科教授。】