白石哲也・松本 剛・奥野貴士編『研究者、魚醤(ぎょしょう)と出会う。 山形の離島・飛島塩辛を追って』(文学通信)

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4月下旬刊行予定です。

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白石哲也・松本 剛・奥野貴士編
『研究者、魚醤と出会う。 山形の離島・飛島塩辛を追って』
ISBN978-4-86766-037-9 C0095
A5判・並製・224頁・カラー
定価:本体1,900円(税別)

僕たちは山形の離島、飛島に消えゆく魚醤(ぎょしょう)があると知り、調査へ向かった――。

「魚醤」という調味料をご存じだろうか。
秋田のハタハタで作る「しょっつる」や石川の「いしる」や「いしり」、香川の「いかなご醤油」は三大魚醤と知られているが、実はここ飛島でも古くから魚醤が作られている。
しかしその「飛島魚醤」は、消滅の危機に瀕している文化である。本書はその面白さを正しく追及した学術ルポだ。

調査過程を追いかけながら、様々なことがわかるように仕掛けた。島の皆さんへの取材を写真付きで掲載し、飛島魚醤の成分分析、飛島や酒田の漁業の状況など様々な角度から調べ、魚醤を使った料理も考えた。「飛島魚醤」を取り巻く人や文化、そして生物化学的視点からの記録といえるが、本書の深淵は実は別のところにある。それは何だったのだろうか。

伝統とは、文化とは一体なにか?
消え去ろうとしている「イカの塩辛」と人との関係は、なにを問いかけるのか。

気候変動が与える生活への影響や、高齢化・過疎化など、いま飛島が直面している諸問題は、より広い規模で顕在化している問題と地続きにあり、私たちにとって他人事ではない。

執筆は、白石哲也、松本 剛、奥野貴士、高木牧子、五十嵐悠、渡部陽子、高橋恵美子。

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【編者紹介】

白石哲也(しろいし てつや)

山形大学学士課程基盤教育院准教授。研究分野は考古学。
主要な著書・論文に「宮ノ台式土器成立期の移動・移住―相模湾沿岸地域を対象として」(『法政考古』49、2023年)、「第6章 土器付着炭化物から見る池子遺跡」(共著、『弥生時代 食の多角的研究 池子遺跡を科学する』六一書房、2018年)、「弥生時代における鳥形土製品の役割」(『古代』139、2016年)など。

松本 剛(まつもと ごう)

山形大学学術研究院教授(人文社会科学部担当)。今から約1000年前に南米ペルーの北海岸北部で栄えた「ランバイェケ」という先史社会に関する考古学研究。
主要な論文に「第14章 北海岸に花開いた多民族国家 ランバイェケ」(山本睦・松本雄一編『アンデス文明ハンドブック』臨川書店、2022年)、G Matsumoto, G De Los Ríos, J Rivera Prince, M Noguchi, G Villegas Julca, Paisaje ritual de la Gran Plaza en el núcleo ceremonial de Huacas de Sicán. In Paisaje y territorio: prácticas sociales e interacciones regionales en los andes centrales, editado por Luisa Díaz, Oscar Arias Espinoza, y Atsushi Yamamoto, Universidad Nacional Mayor de San Marcos y Universidad de Yamagata, 2021. 松本剛、丸子真祥、ガブリエル・ビジェガス、ガブリエラ・デ・ロス・リオス「パレテアダ土器とはなにか―近年の発掘調査および遺物分析の結果から」(『古代アメリカ』24、2021年)など。

奥野貴士(おくの たかし)

山形大学理学部教授。研究分野は生物物理学。
主要な論⽂に、Inchworm-type PNA-PEG conjugate regulates gene expression based on single nucleotide recognition - PubMed nlm.nih.gov, Prediction of Blood-Brain Barrier Penetration (BBBP) Based on Molecular Descriptors of the Free-Form and In-Blood-Form Datasets - PubMed nlm.nih.gov, https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=301266.など。

【執筆】

高木牧子(たかぎ まきこ)

山形県水産研究所資源利用部主任専門研究員。山形県の水産物のさらなる品質向上を目指し、漁船の上から流通、そして私たちが食するところまで、どうすればより美味しく高品質な魚を作れるか研究している。
主要な成果に「庄内浜鮮度保持技術ガイド」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/6287/osakanaguide.pdf、2023年)、「庄内浜おいしいお魚ガイド」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/6287/sendohojiguige3.pdf、2023年)、令和3年度全国水産試験場長会会長賞受賞「庄内おばこサワラのブランド力維持と研究所が果たす役割」(https://www.pref.yamagata.jp/147010/sangyo/nourinsuisangyou/suisan/suisanshikenjou/index.html)など。

五十嵐悠(いがらし ゆう)

山形県水産研究所資源利用部研究員。山形県の水産物の付加価値向上を目指し、これまで活用されてこなかった「未利用魚」をおいしく活用するための研究や、県産水産物の介護食利用への展開へ向けた研究を進めている。
主要な成果に令和4年度新しい技術の試験研究成果「低・未利用魚を原料とした魚醤油の特徴」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/37582/2022seika12gyoshou.pdf)、令和4年度新しい技術の試験研究成果「『えん下調整食』における県産水産物の利用に関する現状と課題」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/37582/2022seika07engeshoku.pdf)など。

渡部陽子(わたなべ・ようこ)

1984年飛島生まれ。大学卒業後は市内で就職。2012年、しまcafe(現:島のカフェスペースしまかへ)の開店スタッフを担当したことを機にUターン。2014年、合同会社とびしまに入社、しまかへ店長を経て、沢口旅館の女将を務めている。

高橋恵美子(たかはし えみこ)

イタリアンや和食の店などで働いたのち、2011年4月、東京都内にカフェ「Umui」 をオープン。2018年に山形県に移住し、山形県北村山郡大石田町で「調香菜Umui」を営む。

【目次】

はじめに─考古学者、魚醤と出会う(白石哲也)

魚醤とは何か?/日本と東アジアの魚醤の起源/考古学者、魚醤と出会う/どうして飛島へ?/魚醤という文化

飛島の地図

調査スケジュール

●第1章 はじめて飛島に行く─失われていく魚醤(白石哲也)

ハワイよりも遠い「飛島」/漁師文化の息づく島/イカの塩辛は「魚醤油」だった?/はじめて島へ行く/物々交換のために/島全体で魚醤作り

●第2章 失われるものを記録・保存したい(白石哲也)

魚醤研究の二つの課題/発酵人類学もこなす実践者/生物物理学者でフィールドワーカー/飛島魚醤を保存する!

コラム① 発酵、魚醤の化学(奥野貴士)

●第3章 飛鳥行き研究チーム発足(白石哲也・松本剛・奥野貴士・高木牧子・五十嵐悠)

研究チームの結成(白石哲也)

よりよい未来を模索するために─人類学・松本剛
[四つの下位領域からなる人類学/自己を見つめ直し続ける人類学/目指すべきは他者理解ではなく、ともに未来を創ること]

細胞膜と西洋ナシそして魚醤─生物物理学・奥野貴士
[細胞膜を表現する研究/西洋ナシ畑の環境を表現する研究/細胞膜と西洋ナシの研究の共通点]

魚醤の可能性を世界から探す─山形県水産研究所・高木牧子
[資源利用部の初代研究員/タイへの出張/ハラール適合の魚醤づくり]

研究職から見る地元の海─山形県水産研究所・五十嵐悠
[好奇心を満たすために大学進学/海は人によって印象が異なる存在だ/想定外だった研究職]

調査メモ① 長浜さん(第二次調査:2023年7月18・20日)
「イカの塩辛作らねば、魚醤なんかまずいらないわけだけどもよ」

調査メモ② 渡部さん(第二次調査:2023年7月18〜20日)
「実はわたしはあんまり好きじゃないの。息子が好きで、作ってくれって言うから」

調査メモ③ Sさん(第二次調査:2023年7月19日)
今イカは獲れないが、獲れるようになったらまた塩辛をつくるのか?「作んないと思う。船も解体したし。86歳だもんだから」

●第4章 調査で判明! 飛島塩辛の作り方(五十嵐悠・高木牧子)

「つゆ」と「ツユ」と「魚醤油」/聞き取り後に食い違う製法/山形県庁で引き継がれた資料/①製造の流れ/②基本的な製法/③各家庭の仕込み方/④飛島塩辛のあれこれ

コラム② 飛鳥魚醤を担うモノたち(白石哲也)

調査メモ④ 持ち主が島から去った魚醤樽(第二次調査:2023年7月19日)

●第5章 各家庭の味の違いを調べてみた(奥野貴士)

魚醤の成分を調べてみた/比べることで理解が進む/分析する項目(遊離アミノ酸と塩分)/魚醤を比べてみた

●第6章 イカが消えた海─山形県・日本海北部エリアの漁業(高木牧子)

急速に変わりゆく海/山形県初のブランド施策/「おいしい魚加工支援ラボ」の誕生/そして、魚醤の開発へ/日本海に面する山形の漁業事情/山形県の生産1位のスルメイカ/伝統と結びついた魚たち/獲れなくなってしまった

コラム③ 塩辛と家族の風景(渡部陽子)

取材日記 渡部陽子さんインタビュー

第二次調査の最後に/魚醤を守りたいと思っていない?/世代と、変遷する伝統/魚醤は他の人に見せたくないもの?

●第7章 消えゆく伝統的食文化を前にして思うこと(松本 剛)

ともに考えることから/飛島塩辛の正体/担い手たちの「そっけなさ」の裏に/年貢としてのスルメイカ/姿を消した飛島のシンボル/〝アクターたち〟の動的な関係性の網の目/消えゆく伝統を前に私たちがすべきことはなにか/飛島塩辛の可能性と新たな価値付け

コラム④ 世界の発酵、調味料(松本 剛)

付録 魚醤を使った料理にチャレンジ(Umui 高橋恵美子)

あとがき(白石哲也)

参考文献

執筆者プロフィール