国際忍者学会に入りませんか―設立記念大会印象記と入会案内―○吉丸雄哉(三重大学)

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しばらく実験的に、各学会大会等で開催されたシンポジウムのレポートを掲載していきます。
ここに掲載されたテキストは、2018年秋から刊行する雑誌『文学通信』に再掲載いたします。

※改行等はweb用に適宜改変しています。ご了承下さい。

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国際忍者学会に入りませんか
 ―設立記念大会印象記と入会案内―


吉丸雄哉(三重大学)




国際忍者学会
https://intlninja.com/
国際忍者学会・入会案内
https://intlninja.com/enrollment/
「国際忍者学会」設立記念大会「忍者の魅力-クロスオーバーする忍者-」
https://intlninja.com/convention/
国際忍者研究センター
http://ninjacenter.rscn.mie-u.ac.jp/


 国際忍者学会設立記念大会「忍者の魅力―クロスオーバーする忍者―」が二〇一八年二月十七日(土)に伊賀市のサンピア伊賀で開催されました。設立総会に一〇〇人ほど、大会には二二〇人ほど、夜の交流会にも一三〇人ほど参加いただき、たいへん盛況でした。ちょうど平昌五輪で羽生結弦選手が金メダルを獲ったのと同日で、当日のテレビ、翌日の新聞やテレビはそれ一色でしたが、それでも時間や紙面を割いて多くのテレビと新聞が報道してくださいました。

 私自身、五指にあまる学会に入っていますが、学会の設立に携わるのは初めてでした。学会設立は三重大学人文学部が二〇一二年に三重大学伊賀連携フィールドを開設し、忍者研究を開始して以来の目標でした。二〇一七年七月一日に、三重大学伊賀サテライトに国際忍者研究センターが設立されました。学会設立記念大会開催時にはセンターの専任教員一名(高尾善希准教授)と人文学部の兼務教員三名(安食和宏人文学部長、山田雄司教授、吉丸雄哉准教授)、研究員一名(クバーソフ・フョードル)が所属していました。国際忍者研究センターが学会の母体としての役割が果たせるため、学会設立へ大きく前進しました。十一月あたりにはプログラム発表と大会参加申込ができるようにしたかったのですが、段取りをつけるのがたいへんで、実際にはほぼ一ヶ月前の告知と大会参加募集になりました。それでも多くの方々がご参加くださったことにたいへん感謝しています。

 当日のシンポジウムの場でも述べたのですが、この学会は「忍者とは何か」という定義をあえて行っていません。普通ならば、研究対象を定義によって見定め、それにもとづいて体系のある学問、忍者に関してなら忍者学と言うべきものを構築して行くのでしょう。しかし、忍者・忍術の探究を、文理をこえた多分野から学際的・国際的に行うためには、忍者の定義はかえって邪魔になると判断しました。「忍者とは何か」といった謎解きは各人に任せることにいたしました。

 ところで、皆さんは学会にどのような理由で入っていますか。大会に参加するだけなら、会員にならずに毎回の大会費(と懇親会費)だけ払っていれば問題ありません。だとすれば、学会誌が学会の存在意義ではないでしょうか。ここのところ私はアナログとデジタルの両方の忍者ゲームに関心を持っていたので、二〇一六年度に名古屋の星城大学で開かれた日本デジタルゲーム学会に参加したことがあります。セッションが「VR」「ゲームと文化」「サウンド・分析」「教育」「ゲームデザイン」「ゲーミフィケーション」のほかさらに企画テーマが五つあってたいへん盛況でした。その中の「ゲーム研究のトップ会議、国際学術出版への道」というセッションを拝聴したのですが、非常にタメになりました。創価大学の渋谷明子さんが国際学術雑誌への英語論文投稿の経験を話してくださいまして、学会の存在意義は学術雑誌であり、投稿を何度も却下されつつ、原稿につけてもらったコメントが本当に参考になった、という述べてらっしゃったのにはハッとさせられました。なお、英語論文では査読の指摘箇所についてそれぞれ修正を示すのが普通なので再投稿も楽ではなかったでしょう。

 これに従うなら、ある分野の研究の潮流は学術雑誌の採用傾向が作っていると言えましょう。たとえば、日本国内の日本文学研究の特徴である実証的な手法は、一次資料の利用の便がよいからだけではなく、学術雑誌がそういう論文を採録するからこそ根付いたのではないかと思います。

 三重大学人文学部が忍者研究を開始してから、二冊の忍者論文集の編集に携わっています。吉丸雄哉・山田雄司・尾西康充編『忍者文芸研究読本』(笠間書院、二〇一四)、吉丸雄哉・山田雄司編『忍者の誕生』(勉誠出版、二〇一七)です。『忍者文芸研究読本』で十五人、『忍者の誕生』で十八人の論文を収めています。この二つの刊行には三年空いています。論集として論文を集めて掲載して行くのではなく、学術雑誌に定期的に投稿されるようになれば、速報性が上がると思います。

 また、査読の機能が十分に働けば、最新の研究をいち早く確実に知ることができます。一九八〇年代以降の忍者研究において、『歴史読本』(新人物往来社。二〇一三年よりKADOKAWA)の果たした役割は大きいです。しかし『歴史読本』は二〇一五年に休刊してしまいました。各号に書き手が腐心したよい論考が散見しますが、その他の大部分を占める記事は十分な考察がなされておらず、玉石混交の中で玉が目立たなくなっていたのが原因だと思います。

 国際忍者学会の会誌「忍者研究」が査読誌の役割を果たせば、とりあえずそれを調べることで重要論文が確認できるでしょう。国際的な学術雑誌としては、多くの学術世界の共通語である英語をつかうべきなのかも知れませんが、日本の研究者による発信が圧倒的に多い現状から見て、論文は「日本語」と「英語」を受け付け、日本語論文には英語要旨をつけることにしました。海外の忍者研究をしたい人たちに、日本の研究状況が伝わらない現状があり、英文要旨がつくことで、少しでも改善されることを願っています。

 国際忍者学会は年会費五千円(初回は二〇一七年度と二〇一八年度分)で、その半分は年一回の学術雑誌の発行にかかると見ています。その点でも、学会における学術雑誌の役割は重いです。文学通信の岡田さんからは国内の国文学主要学会の会費と雑誌刊行の割合を教えていただきました。これは文学通信のブログで紹介されたのでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。日本文学協会が会費一万円で年十二冊と大健闘ですが、多くは年会費を冊数で割ると二千五百円ほどで、年会費五千円で年に一冊だと割高なのは否めません。創刊号にむけた投稿論文も多く受け取っていますし、正会員を増やして、できれば年二回刊に早めに移行したいと思っています。

 大会の話に戻りましょう。研究発表のうち、久松眞さん「忍者の知恵を科学的知見から垣間見る」は、歴史・文学だけが忍者研究ではなく、理系からの忍者研究を示した好発表だったと思います。設立記念講演はソウル大学の金時徳さんが「海を渡った忍者たちは生きている―日本の戦記文学の伝統と荒山徹の忍者小説―」の題で行ってくださいました。「東アジアを舞台に忍者を活躍させる荒山徹の小説はさまざまな日本近世小説の伝統を引いている」という講演趣旨でした。これを読売新聞のように「江戸時代に流行した「児雷也」伝説の原点が中国・明代の短編であると指摘「忍者は東アジアを舞台に広く活躍したと見るべきで、活動範囲を日本に限定して考えるのは正しくない」」(二〇一八年二月十八日)と書いてくれればまだともかく、時事通信社が「ソウル大学の金時徳教授らが講演し、「忍者は国際的な活動を展開していた」などと指摘した」(時事ドットコム、二〇一八年二月十七日)と流したため、一部で誤解が生じてしまったようです。金時徳さんは原稿を配布して丁寧に説明してくださったのですが、時事通信社が、発表が歴史ではなく文学について語っていることを理解できなかったのか、それとも字数が足りないためにそうなってしまったのか、残念な出来事でした。また歴史史料と文学作品の区別が伝わるように説明する難しさをあらためて思い知りました。

 大会では「忍者の魅力―歴史・文学そして世界へ」と題したシンポジウムも開催され、国際忍者研究センターの山田雄司さん、作家の多田容子さん、国際忍者研究センターのクバーソフ・フョードルさんの三人がパネリストとして登壇しました。「忍者研究」創刊号には、金時徳さんの講演とシンポジウムの報告が掲載されます。貴重な忍者資料にもとづいた精緻な論考も複数掲載されることも決定しています。お一人でも多くの方が国際忍者学会に加入して、八月末に発刊される「忍者研究」誌ご購読なさること願っております。繰り返しになりますが、忍者・忍術の探究を、文理をこえた多分野から学際的・国際的に行う学会です。大会の内容報告が控えめになってしまったことをお詫びしつつ、筆を擱かせていただきます。