日本近代文学館 没後十年 小川国夫展―はじめに言葉/光ありき―(2018年10月13日(土)-12月1日(土))

このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr

展覧会情報です。

●公式サイトはこちら
https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/cat-exh_current/11392/

--------------------

開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
観 覧 料 一般300円(団体20名様以上は一人200円)
中学生・高校生100円
休 館 日 日曜日・月曜日・第4木曜日(10/25、11/22)
*11/3金、11/23木 の祝日は開館
編集委員 紅野謙介(日本大学教授 日本近代文学館理事)
勝呂奏(桜美林大学教授)

【没後十年 小川国夫展
―はじめに言葉/光ありき―
小川国夫が亡くなってはやくも十年──、この度、あらためて「文体」の作家・小川国夫の文学を振り返ってみることになりました。
『アポロンの島』から『試みの岸』『ハシッシ・ギャング』にいたるまで、その言葉は明晰にして簡潔、そして透明な明るさに満ちていました。
過剰な描写や物語の誘惑はむしろ退けられ、省略と余白のなかに無限の可能性を見出しました。無力でちっぽけな人間がゆっくり変化を遂げていく自然と歴史のなかを生き、さまざまな傷を負いながら放浪し、やがて斃れていく、そうした世界のありようをじっと見つめ、最終的に肯定しようとする意思がその文学にはあふれています。

小川国夫に一貫していたのはキリスト教への深い関心です。さらに生まれ育った東海地方への愛着は、若き日に放浪したヨーロッパ地中海沿岸の光の記憶とつながり、故郷を普遍的なまなざしのもとにとらえることになりました。
「はじめに言葉ありき」とは『聖書』の一節ですが、言葉を通して世界を出現させる魔術は小川国夫の文学にも共通しています。光のなかに闇を発見し、闇のなかに光を見出したその複眼の想像力こそ、単純な分かりやすさが求められてしまう現代に甦るべきものだと思います。

この展示会の編集・構成にあたっては勝呂奏氏にご協力いただきました。

最後に、多くの資料をご寄贈いただいた小川家ご遺族に感謝申し上げるとともに、ご来場のみなさまに小川国夫の文学を再読する機会が増えることを強く期待しています。

(編集委員 紅野謙介)】

●主な出品資料
第1部 〈青銅時代〉と『アポロンの島』
学生時代の創作、同人誌「青銅時代」の原稿や、「アポロンの島」草稿など、作家として歩み出した小川国夫の姿を伝える資料をご紹介します。

第2部 地中海の世界
フランス留学時の地中海紀行は、創作の上で深い啓示となって、小川国夫の文学世界を特徴づけていきました。「闘牛の日」「マグレブ、誘惑として」原稿はじめ、地中海世界を舞台にした作品群を展観します。

第3部 駿河湾西岸の世界
故郷の風土を卓越した言葉で描いた小川国夫の文学世界を『試みの岸』『弱い神』の原稿ほか関連資料と共にご紹介します。

第4部 キリスト教と聖書
小川国夫は、生涯にわたり聖書を深く読みつづけました。「ユニアの旅」『或る聖書』『ヨレハ記』原稿など、小川国夫が描いた聖書の世界を展観します。

第5部 文学者との交流
無名時代から小川国夫を支えた文学者たちとの交流や、地元静岡での文学活動を紹介、多くの仲間から敬愛された小川国夫の姿を伝えます。