全訳『男色大鑑』予告的あらすじ公開!★巻1の4「玉章は鱸に通はす」

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井原西鶴が1687年に描き出した、詩情あふれる華麗・勇武な男色物語『男色大鑑』を現代に甦えらせるプロジェクトが始動します。
『男色大鑑』の、若衆と念者の「死をも辞さない強い絆」は、作品中、常に焦点となっている三角関係の緊張感とともに、長い間、誠の愛を渇望して止まぬ人々の心を密かに潤し続けてきました。
そんな作品群を、分かりやすい現代語と流麗なイラストによって新たに世に送り出します。

ここでは、そんな『男色大鑑』のあらすじを予告編的に紹介していきます。今回は巻一の四を紹介いたします。

※あらすじの一覧は以下で見ることができます。
http://bungaku-report.com/blog/2018/07/post-235.html

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■巻一の四

玉章は鱸に通はす
煮え切らないなら、愛する兄分だって切り捨てるさ。

 松江藩の増田甚之介(ましだじんのすけ)は、出雲大社に集まる神様たちも日本一との太鼓判を押す美少年。今や匂い立つ青葉の十六歳、まさに若衆盛りである。片や同じ家中に頼もしき若侍、夏木立の繁れる森脇権九郎(もりわきごんくろう)は二十八歳。二人は、世間を忍んで当地の名物、松江の鱸(すずき)の口に手紙を入れて気持ちを確かめ合った中だった。そこへ同じ家中の半沢伊兵衛(はんざわいへえ)が横恋慕をしかけた。甚之介の身を案じた権九郎は伊兵衛を侮ってはならない。相手の心が休まるような返事をいたせと甚之介を諭す。ところが血気盛んな甚之介は、権九郎に裏切られたと思い、伊兵衛を討った後、返す刀で兄分をも切り捨てようと考えた。
 そして果たし合いの日、甚之介は長い手紙を権九郎に残す。この手紙、十三歳の秋から今の十六歳までに胸にしまっておいた全てをぶちまけたもんだから、狂おしいまでに恋情渦巻く檄文(げきぶん)となった。まるで江戸時代版、尾崎豊の『十五の夜』だ! この手紙に頭をガツンとやられた権九郎は、すわ甚之介を追い掛けて果たし合いの場に参上した。甚之介は「腰抜けに助太刀無用!」と権九郎を追いかえそうとするものの、結果共に奮戦し、伊兵衛はじめ相手一味をさんざんに切り伏せた。甚之介と権九郎は、本来なら切腹のところ、神妙なる働きということでおとがめは一切なし。甚之介は若衆の見本とあがめられた。
 この話は、『男色大鑑』の代表作の一つとして評価が高いが、他に実録風の写本があり、ほぼ西鶴と同じ内容。しかし細部にわたって西鶴は表現を吟味・改訂し、より激しく、より美しい甚之介像を作り上げることに成功している。


★染谷智幸(そめや・ともゆき)茨城キリスト教大学教授、執筆。

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■編集部より

2018年11月に、『男色大鑑』八巻中、前半の武家社会の衆道に取材した作品四巻までを収録した〈武士編〉を刊行し、後半の四巻を〈歌舞伎若衆編〉として、2019年6月に刊行します。

イラストに、あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ、といった豪華な漫画家陣が参加。現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。

このプロジェクトが気になった方は、ぜひ以下の特設サイトをご覧下さい。
文学通信

また本書の詳しい紹介はこちらです。ご予約受け付け中です!
●2018.11月刊行予定
文学通信
染谷智幸・畑中千晶編『全訳 男色大鑑〈武士編〉』
ISBN978-4-909658-03-6 C0095
四六判・並製・192頁 定価:本体1,800円(税別)
※ご予約受付中!
amazonはこちら https://www.amazon.co.jp/dp/4909658033/