第26回・西鶴研究会(2008年3月28日(金)午後2時~6時、青山学院大学 総合研究ビルディング 10階 第18会議室)

◇『西鶴諸国はなし』の再検討―巻二の五「夢路の風車」を中心に                        
日本女子大(院)宮本祐規子


 『諸国はなし』巻二の五「夢路の風車」は、既に『太平広記』一二七「蘇娥」が典拠として指摘されており疑問はない。その他、異郷訪問説 話の型を踏まえることや、謡曲「松風」からの影響などの指摘(宗政五十緒氏『新編日本古典文学全集』小学館、一九九六)が既にあり、女二人の関係性につい ても、謡曲「松風」からの援用とする指摘(平林香織氏「抜殻としての「女はらから」」『日本文学』二〇〇五・九)がある。『諸国はなし』の中でもよく知ら れた章といえよう。奉行の造型を見ても、能のワキとしての役割に重なる部分が見受けられ、「松風」からの影 響を確認できる。しかし、未だ説明のない謎も残っている。例えば「くれなゐの風車」。西鶴作品の紅は、全六一例あるが、そのほとんどは下着・血・夕陽の形 容に用いられている。その点ここで風車の色に紅を使うのは『新可笑記』五―五に「くれなゐの雪の洞」とあるように、ありえない状況描写の象徴として利用し ているとも考えられる。今回の発表では、「夢路の風車」におけるいくつかの疑問について検討しつつ、『西鶴諸国はなし』全体の位置づけに敷衍できれば、と考えている。

◇合評、『西鶴と浮世草子研究』1・2号(笠間書院刊)

本会念願の研究誌を、浮世草子研究会と共に発刊してから二年が経ちました。その間、皆様方のご尽力はもとより、笠間書院の経営を度外視したノウハウのご提供にもよりまして、現在のところ概ね好評のまま推移しております。その好評を支えた一つに「何でもありの子供のおもちゃ箱」(長島弘明「笠間リポート・西鶴と浮世草子の研究」)という本誌のコンセプトがあったことは間違いありませんが、逆に言えば様々な問題点を抽出したままの感なきにしもあらずです。
 そこで、1・2号で出された問題を、現時点で再確認・再討議することによって、今後の研究の活性化、3号以下の刊行の弾みへと繋げたく存じます。 なお当日、漠然と討議するのではいたずらに論点が拡散するかと思われますので、以下のようなアンケートを取り、論点を絞った上、資料を当日配布する形で行いたく存じます。(なお、アンケート用紙は別の資料として添付してあります)

1)・興味を持った企画・論文・エッセイ・書評・研究史等は何か。
・その理由
2)・疑問を感じた企画・論文・エッセイ・書評・研究史等は何か。
・その理由
3)・西鶴研究会当日、質問をしてみたい企画・論文・エッセイ・書評・研究史等は何か。
・その内容
4)その他のお考えやお気づきになったことを自由にお書きください。
5)その他のお考えやお気づきになったことを自由にお書きください。(非公開)
*1)~4)は原則公開します(当日プリントして配布する予定です)。

 別紙アンケートにご記入の上、3月15日(土)までに染谷まで添付の上、メールでお送りください。

なお、合評の司会は1号2号の責任編集に当たられた方にお願いする予定です。

(染谷記)

○宮本氏の司会は前回発表者の予定です