第32回・西鶴研究会(2011年3月24日(木)午後2時~6時、 青山学院大学 総合研究ビルディング 10階 第18会議室 )

日程 第32回
2011年3月24日(木)
午後2時〜6時
場所
青山学院大学 総合研究ビルディング 10階 第18会議室 

◇『好色五人女』巻二「情を入し樽屋物かたり」における「ぬけ参り」
皇学館大学 速水香織

『好色五人女』(貞享三年二月)は、実際に起こった男女の事件を題材にした作品でありながら、内容の大部分は作者西鶴の創作であるため、その執筆意図や方法について従来様々な評価がなされ、論議が展開されてきた。
その中で、巻二「情を入し樽屋物かたり」は、貞享二年正月に西鶴の地元大坂で起こった事件を題材とし、生活に密着した年中行事等に関する描写が多いため、作中で「もっとも風俗小説的になった」(江本裕氏 講談社学術文庫『好色五人女』解説)とも評される。本発表では、この巻二に見られる趣向の内、物語の中盤におかれる「抜け参り」に着目し、この趣向が作品にもたらす効果について考察する。近世以前から貞享期にかけて、様々な作品に見られる「伊勢参宮」の逸話には、「大神宮の霊験により、それまでの生き方に係わらず、厚い信心を以て参れば必ず利生がある。逆に、よこしまな心で参詣した者には、厳しい神罰が下る」という共通した展開が見られる。本話においてもこの展開は踏襲されており、おせんもまた、「よこしまな心で抜け参りした結果破滅している」ことに注意すべきであろう。そして、「抜け参り」という要素に注目する時、本話の冒頭から物語を動かす役目を負う夫婦池のこさんの重要性があらためて浮かび上がってくる。主人公おせんの抜け参りと破滅は、こさんによって準備され、誘われたと読む事が出来る。

◇合評『西鶴と浮世草子研究』3号・4号

『西鶴と浮世草子研究』の3号(2010年5月)と4号(2010年11月)がほぼ連続して出版されました。すでに1号と2号について合評を行いましたので(第26回、2008年3月)、今回は3号と4号の合評を行います。
3号では、コメンテーターを立てるという形で、4号では責任編集者のお一人である諏訪春雄先生に講演という形で、それぞれの号の提示した、あるいは提示しえなかった問題点について語っていただき、その後討論に入ります。
会員の皆様方には事前に両号の成果・問題点などの抽出・整理をお願いいたします。
なお、ブログで3号4号について言及したものがあります。良質なものを西鶴研究会の掲示板2011/01/06 に載せておきましたので参考にしてください。

「3号」
コメンテーター 大木京子(青山学院大学・非)
        宮澤照江(北星学園大学)
    司会  杉本好伸(安田女子大学)

「4号」
講演 諏訪春雄(学習院大学名誉教授)
     司会 染谷智幸(茨城キリスト教大学)