第四十四回 西鶴研究会【森田雅也氏・染谷智幸氏】(2017年3月27日(月)午後2時より6時まで、青山学院大学 総合研究ビル、会議室)

日時    3月27日(月) 午後2時より6時まで
場所    青山学院大学 総合研究ビル、会議室
(当日、1Fに掲示を出しますのでお確かめください)
内容    研究発表、並びに質疑応答、討議
※出欠は、染谷智幸氏宛にご連絡下さい。

発表題目および要旨
◆ 西鶴の諸国話の手法と地方談林俳諧 
関西学院大学 森田雅也

 
西鶴浮世草子のほとんどが短編であり、その各話が、いわゆる諸国話の趣向となっていることは今更、言うまでもない。それを諸国話の手法と呼び、その祖型を辿れば日本文学史、世界文学史を遡及して論じなくてはならず、かつ、明確な答えは得られないであろう。
したがってここでは、狭義に西鶴があえて「諸国話」として作品名に掲げた『西鶴諸国ばなし』[貞享二(一六八五)年刊]、『武道伝来記』[貞享四(一六八七)年刊、副題「諸国敵討」]を主たる対象としたい。もちろん、すでに両作品の諸国話としての舞台背景については、多くの詳細な先行研究があり、その成果を基底として、作品の統体としての創作意図についても言及する卓見が多いことは周知のことであるが、ほとんどが典拠論に基づいていることも首肯いただけるであろう。
今回の発表では、諸国話の手法に隠された西鶴と地方談林俳諧文化圏との関係について論じることを目的としている。果たして大風呂敷の発表であり、全貌の解明を結論とするものではないが、あえて西鶴の散文と俳諧研究との狭間の研究課題として提起したい。同時に貞享期西鶴の爛熟ぶりについても言及したい。また、参考として俳人との関係から『西鶴名残の友』も用いる。
なお、発表に際してはPowerPointを中心に行うので、横書の発表となることをお許しいただきたい。

◆西鶴と江戸時代の経済・経営書―『通俗経済文庫』を中心に―
茨城キリスト教大学 
染谷智幸 

 西鶴の『日本永代蔵』は、まま経済小説の始原、または原点(谷脇理史『経済小説の原点「日本永代蔵」』和泉書院、二〇〇四年、等)と言われるが、では、その「経済小説」とは何か、日本や日本文学において「経済小説」はどのような位置を占めるのか、その「経済小説」史を踏まえた上での西鶴の町人物はどう位置付けられるのか、「原点」であるとすれば、それはどのような意味において「原点」なのか、についての考察はほとんどない。
そこで本発表では、そうした問題を考えるために種々考察を試みたい。具体的には、
(1)経済小説とは何か
(2)日本経済小説史は可能か
(3)上記二つの問いを立てることにどんな意義があるのか
(4)江戸時代の経営指南書・教訓書には何が書かれているのか‐西鶴の町人物理解に向けて
という四つの問いを立てるが、この半年間、(1)(2)は他で発表してもいるので簡略化して説明し(ただし文章化はまだしていない)、今回は(3)(4)を中心に述べてみたい。