全訳『男色大鑑』予告的あらすじ公開!★巻2の5「雪中の時鳥」

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井原西鶴が1687年に描き出した、詩情あふれる華麗・勇武な男色物語『男色大鑑』を現代に甦えらせるプロジェクトが始動します。
『男色大鑑』の、若衆と念者の「死をも辞さない強い絆」は、作品中、常に焦点となっている三角関係の緊張感とともに、長い間、誠の愛を渇望して止まぬ人々の心を密かに潤し続けてきました。
そんな作品群を、分かりやすい現代語と流麗なイラストによって新たに世に送り出します。

ここでは、そんな『男色大鑑』のあらすじを予告編的に紹介していきます。今回は巻二の五を紹介いたします。

※あらすじの一覧は以下で見ることができます。
https://bungaku-report.com/blog/2018/07/post-235.html

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■巻二の五

雪中の時鳥
ホトトギスのためならば、ボクらの全てを捧げます。

 江戸桜田あたりのある大名に六歳の若君があったが、天然痘を患い富士のような白い肌に薄紫の斑点があちこちにできてしまった。「美少年に傷がついては一大事」と心配するのは親心。あいにく真冬であるにもかかわらず、夏鳥であるホトトギスの羽根でなでると効き目があると聞くやいなや殿は、家臣たちに探索を命じるのであった。
 幸い、下谷通(したやどおり)の浪人・嶋村藤内(とうない)がホトトギスを飼育していると判明するが、困ったことには、この男は大変高潔な武士気質に加えて女嫌いの偏屈者であった。まずは、魚屋の小田原の九蔵(きゅうぞう)が使者として向かうも、とっさについたウソが気にくわなかったのか、出世欲をくすぐられたのが気に障ったのか、ホトトギスを譲るどころか刀を振り上げ大暴れ。次に奥女中が、四、五人の京美人を連れて行ったものの、これがとんだ見当違いで、藤内は女という生き物はもとより姿絵すら近づけたくない筋金入りの女嫌いだったのである。
 ほとほと困り果てたところへ、ホトトギスの羽根ならぬ、白羽の矢が立ったのが、十六、七歳の美少年金沢内記(ないき)、下川団之介の二人。藤内の偏屈ぶりをよくよくくみとって、用意周到に見事、ホトトギスを若君に届けることに成功した。藤内の武士気質と男色好み[ボーイズ・ラブ]を彼らが、どうたくみにくすぐったかは本編を読んでのお楽しみ――。


★浜田泰彦(はまだ・ひすひこ)佛教大学准教授。

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■編集部より

2018年11月に、『男色大鑑』八巻中、前半の武家社会の衆道に取材した作品四巻までを収録した〈武士編〉を刊行し、後半の四巻を〈歌舞伎若衆編〉として、2019年6月に刊行します。

イラストに、あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ、といった豪華な漫画家陣が参加。現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。

このプロジェクトが気になった方は、ぜひ以下の特設サイトをご覧下さい。
文学通信

また本書の詳しい紹介はこちらです。ご予約受け付け中です!
●2018.11月刊行予定
文学通信
染谷智幸・畑中千晶編『全訳 男色大鑑〈武士編〉』
ISBN978-4-909658-03-6 C0095
四六判・並製・192頁 定価:本体1,800円(税別)
※ご予約受付中!
amazonはこちら https://www.amazon.co.jp/dp/4909658033/